インドスマホ市場5年戦記 シャオミの君臨、アップルの転落、OVの台頭、勝ち残るのは?(下)

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アップルのつまずき、OnePlusの逆転

アップルのつまずき、OnePlusの逆転OPPOはローエンド機市場の新勢力になっただけではない。ハイエンド機市場でもOPPO傘下の「OnePlus(一加)」とアップル、サムスンの激戦が始まっていた。

インドのハイエンド機市場は、これまでながらくアップルとサムスンの天下だった。カウンターポイントのデータによると、アップルは2017年第4四半期に、30000ルピー(約45000円)以上の価格帯で47%のシェアを占めていた。

インドの人口13億人のうち、年収11000ドル(約120万円)以上のミドルクラスは2700万人で、全体のわずか2%。2018年時点で、価格帯500ドル(約54000円)以上の携帯電話市場は、いまだに全体の3%に過ぎない。

だがインド市場も徐々にレベルを上げている。2019年第2四半期、成長率が最も高かったのは200〜300ドル(約21000〜32000円)の市場で、出荷台数は2倍となった。次に成長率が高かったのは400〜600ドル(約43000〜65000円)の市場だった。

ハイエンド機市場の存在感は大きくはない。だが、各メーカーは大きな収益を見込めるこの市場を虎視眈々と狙っていた。

チャンスはすぐに訪れた。アップルは2018年から苦境に入っており、前出のカウンターポイントによると、今年第1四半期における同社のインドでの販売台数は、前年同期比42%減の22万台だった。

アップル凋落の主な原因は、インドのモディ首相が「メイド・イン・インディア」を提唱して以降、携帯電話の完成品に対する輸入関税が徐々に引き上げられたことだった。中国メーカーは関税回避のため、次々とインドに工場を開設した。

だが、アップルの体制では、こうした機敏な対応は不可能だった。インドで販売されるアップル製品は、大人気のiPhone7シリーズも含め、88%が中国からの輸入品で、インドで委託製造しているのはXシリーズおよびローエンドモデルのSEのみとなっている。

インド政府は2018年、携帯電話の輸入関税を一気に20%まで引き上げ、iPhoneの価格は平均3.5%上昇し、XSシリーズの販売価格は米国よりも約300ドル(約32000円)も高くなった。

さらにまずかったのは、iPhone全体の価格が上昇し、Xシリーズの価格は1000ドル(約11万円)を超え、インドのミドルクラスには手が届かなくなってしまったことだった。

その間隙を、OPPO傘下の「OnePlus」が突いた。同社は2018年、インドのハイエンド機市場でのシェアを前年より85%伸ばし、3万ルピー(約45000円)以上の市場で3四半期連続シェアトップに輝いた。

OnePlusは「OnePlus7/7pro」をインド・バンガロール州で世界先行発売した(IC photoより)

OnePlusはコストパフォーマンスで勝利を収めた。商品イメージは高級で、スペックも高い。にもかかわらず、アップルよりも圧倒的に安い。今年発売した7proは過去最高価格の49999ルピー(約76000円)だが、iPhoneXRと比べれば半額程度だ。同機種は400〜600ドルの市場でシェア63.6%となった。

アップルをさらに苦しめたのは、スマホメーカーがインドに店舗を開設する場合、部品の30%以上をインドで調達しなければならないことだった。アップルのサプライヤーにインド地元企業はない。一方で、OnePlusは2017年、OPPOのサプライチェーンを背景にオフライン店舗を開設している。

とはいえアップルも現在、徐々に生気を取り戻し始めている。とくに、低価格のiPhone11はインドと中国で同時にブームを巻き起こした。

一方でアップルよりも高級志向で、アップル同様にハイエンド機を製造するサムスンはプライドを捨てて攻勢に出た。同社はライバルの中国メーカーに学び、インド人俳優をPRに起用し、クリケット大会のタイトルスポンサーになった。これらはOPPO、vivoの典型的なマーケティング手法だ。また、オンライン販売専用の入門機Mシリーズを約7000ルピー(約10000円)の低価格で売り出し、シャオミに打撃を与えた。

これら一連の動きの結果、サムスンは復調し、今年第2四半期には出荷台数でシャオミに迫っている。しかも、サムスンはシャオミが狙うハイエンド機市場を依然として握っているのだ。

4G対応スマホ市場は、中国国内ではすでに斜陽の時代を迎えているが、インドではまだ夜明けを迎えたばかりだ。中国メーカーが、インド市場において既に全面戦の段階に入っているのは間違いない。都市部の市場が次第に飽和する中、現在ではインド地方部へいかに進出するかが各メーカーの課題となっている。そこには、文化や地域のギャップ、政治とビジネスの関係など避けがたい難題もある。そんな中、最後に勝ち残るのは誰か。結果は時間だけが教えてくれる。
(翻訳・田村広子)

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