AIと軍事で膨らむ光ファイバー需要、価格6倍に。中国が供給の主導権握る
中国製の光ファイバーに対する需要が異例のペースで拡大している。
中国中央テレビ(CCTV)の報道によると、今年1~3月期に中国の光ファイバー業界は約35%の成長を記録し、江蘇省のある企業では生産・販売量が前年比で約5倍に伸びたという。G.657.A2光ファイバーの価格は、昨年の1芯キロメートル当たり32元(約740円)から240元(約5500円)へと、実に650%もの急騰となった。一部の企業では生産スケジュールが来年1~3月期まで埋まっており、価格が6倍に高騰してもなお、供給が追いついていない状況だ。
AIインフラと軍用ドローンが需要をけん引
需要が急増した背景には2つの要因がある。
1つは、AI向け計算インフラが急拡大していること。AIモデルのトレーニングに必要な計算クラスターの規模は以前の数十倍に膨らんでおり、AIデータセンターで使用される光ファイバーの量は、従来型のサーバールームの5~10倍に上る。10万枚規模のGPUクラスターでは、数万芯キロもの配線が必要になるという。調査会社CRUの予測では、2025年には世界の光ファイバー需要が初めて6億5000万芯キロを突破し、26年には8億芯キロ以上に急増する見通しだ。不足率は約16.7%に達すると推計される。
もう1つは、軍用ドローンによる大量消費だ。ロシアのウクライナ侵攻では、光ファイバーを使った有線ドローンが広く使われるようになった。各ドローンは長さ数キロもの光ファイバーを通じて操縦士との通信を保ちながら飛行し、任務終了後には回収されることなく戦場に残置される。その結果、光ファイバーはインフラ資材から消耗品へと変わってしまった。統計によると、ロシアが2025年に調達した光ファイバーは約6000万キロメートルに達する。国内唯一の光ファイバー工場がドローン攻撃で破壊されたため、中国からの輸入に依存する状況となり、中国サプライヤーからの購入価格は2~4倍に上昇したという。現在、世界におけるドローン用途の光ファイバー需要は年間8000万芯キロを突破し、総需要の1割以上を占めている。
生産能力で独走する中国
供給のボトルネックは、光ファイバーの元となるプリフォーム(母材)にある。プリフォームは、光ファイバーのコストの60~70%を占める中核材料だが、増産には18~24カ月を要し、年産1万トン規模の供給体制を構築するには20億元(約460億円)以上の投資が必要になるなど、技術的ハードルが極めて高い。海外大手のフジクラや米コーニングはすでにフル稼働の状態にあり、2028年までは生産能力を拡張する予定はないと明言しているほか、中国製光ファイバープリフォームの調達にシフトする動きも見せ始めている。米国のメタやマイクロソフトなどテック大手は、主要サプライヤーと100億ドル(約1兆6000億円)規模の長期契約を前倒しで締結し、生産能力の囲い込みを進めている。このため、市場に出回る供給量はますます少なくなっている。
この局面で、中国は圧倒的な優位に立っている。10年前には、光ファイバープリフォームの90%を輸入に頼っていたが、現在ではPCVD、OVD、VADという主流プロセスを全て確立して量産を実現、世界のプリフォーム生産能力の60%を占めるまでになった。多年にわたる価格競争により企業の淘汰が進み、業界上位5社のシェアが45%を超えるなど市場の集中度は高まったほか、コストは海外のわずか5分の1から6分の1を実現した。現在では、プリフォームから光ファイバー、光ケーブルまでを一貫して国内で手がける産業体制が出来上がっている。
好況は続くが、リスクにも警戒
生産能力が高度に集中し、供給不足も続いていることから、この好況は少なくとも1~2年は続くと予想される。新たな生産能力が稼働し始めるのは2027年下半期ごろとみられ、それ以降は中空コア光ファイバー(HCF)や800G/1.6T光モジュールなどの次世代技術が競争のポイントになる見込みだ。
ただ警戒すべき点もある。目下、中国の光ファイバー企業はインドネシア、ブラジル、ポーランド、ドイツなどの海外で生産拠点の建設を加速しているが、今後、米国本土の生産能力が拡大するか、別の供給源が確保された場合、中国製光ファイバーへの規制措置が講じられるリスクも排除できない。業界関係者は、中国企業が海外投資を進める際には、コア技術の管理を徹底して、技術の流出を防ぐ必要があると指摘している。
*1ドル=約159円、1元=約23円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)