ロート製薬の高級スキンケア「エピステーム」、中国市場で快進撃。巨大トラフィック「Douyin EC Global」が立役者

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ロート製薬が展開する最高級アンチエイジングスキンケアブランド「エピステーム(episteme)」が、中国市場において着実に存在感を高めている。

同社は2018年に越境EC事業を開始し、中国市場での認知度向上を目指して積極的に施策を展開してきた。2021年には中国最大のショートムービー・プラットフォーム・抖音(Douyin)が手掛ける越境ECサービス「抖音電商全球購(Douyin EC Global)」にいち早く参入。インフルエンサーを活用した動画コンテンツ戦略などが奏功し、大きな成果を挙げている。

しかし、ただ抖音(Douyin)で動画を出せば何でも売れるのかといえば、中国はすでにそのような市場ではない。新しいチャネルの構造を理解し、中国ユーザーのニーズに寄り添いながら、精緻に練られた販売戦略やプランを策定することが不可欠であり、そのうえで地道な努力を重ねた結果として、ようやく勝ち取ることができる。そして、その成果は決して自社の努力のみで達成できるものではなく、現地のパートナーとの協力の賜物でもあるという。

日本の新しいブランドが中国で成功を掴むには、どのような行動を取るべきかを探るため、エピステームの中国市場での快進撃を支える一人、ロート製薬プレステージスキンケア事業部の福田崇副部長に詳しく話を伺ってみた。

ロート製薬プレステージスキンケア事業部の福田部長(左から2人目)

中国で定番化する「興味EC」が新ブランドの味方に

DAU6億人を超える抖音(Douyin)は、中国人の生活に欠かせない国民的なプラットフォームとしての地位を確立しており、特にZ世代(1990年代半ば以降に生まれた世代)への影響力が大きい。この世代は購買意欲が高く、「みんなが欲しいもの」より「自分に合う商品」を重視する傾向が強いため、新興ブランドがリーチを狙うべきターゲットとして最適だ。そうした背景から、抖音電商(Douyin EC)は、新ブランドのエピステームにとって外せないプラットフォームとなっている。

抖音電商(Douyin EC)は買い物体験を大きく変革したことで、中国ECの圧倒的な主役に躍り出ている。抖音(Douyin)の巨大なトラフィックを強みに、従来型ECの「人が商品を探す」スタイルに対し、抖音電商(Douyin EC)は「商品が人を探す」という独自コンセプト「興味EC(インタレストEC)」という仕組みを確立した。具体的にはショート動画とECを融合する「コンテンツEC」や「ライブコマースEC」などが挙げられる。

ユーザーが時間つぶしや娯楽として抖音(Douyin)で動画コンテンツを視聴していると、合間でECに繋がるショート動画やライブコマース動画も自然にAIによってオススメされる。しかも、単なる広告としてではなく、魅力的なコンテンツとして流れてくるのでつい見てしまい、自然と購買意欲が刺激される。数秒前まで買い物しようと思っていなくても、商品やブランドとの新しい出会いが生まれる。ここには抖音(Douyin)の強みでもある高度なレコメンドアルゴリズムが活用され、ユーザーの嗜好にぴったり合うようなコンテンツを表示させる仕組みだ。さらに、便利なショッピングカート機能など購買機能もシームレスに進化、 ユーザーはストレスなく購入まで完結できてしまう。

抖音電商(Douyin EC)は、これまでにない新しい購買体験を提供するとともに、新興ブランドにもチャンスを生み出している。まさにエピステームもこの点に期待をして早期の参入を決断した。既存のECプラットフォームで直面する大手ブランドとの競争を避け、新興ブランドにフレンドリーなDouyin ECで「先行者利益」を享受することは非常に魅力的だという。

再生医療スキンケア×ブルーオーシャン市場

エピステームは再生医療研究を応用し、「年を重ねながらも、老化に挑むことはできる」という独自のコンセプトを掲げるスキンケアブランド。これは中国市場ではまだ競争の少ないブルーオーシャンとされる分野であり、適切なターゲット層に対してブランドの魅力を効果的に伝えることができれば、チャンスは大きい。

日本国内では高級ラインとして専属の美容スタッフが常駐する高級百貨店で販売しており、コンセプトや効能を消費者にいかに伝えるかがカギとなる。福田氏によると、「日本と中国とでは、顧客とのコミュニケーション手法や、自社の魅力を伝えるツールが全く異なることを十分に研究した。オンラインだったとしても、Douyin ECの動画コンテンツや、インフルエンサーによるライブ配信という形式を通じて、消費者に直接情報を届けたいというニーズを十分満たすことができた」という。

エピステームはインフルエンサーを単なる販売促進の手段としてではなく、ブランド理念や商品の品質を的確に伝える存在として位置づけている。だからこそインフルエンサーらを日本に招き、会社や研究所などの視察を通じてブランドへの深い理解と信頼関係構築に取り組んだ。商品に対する思いや特徴をしっかり体感してもらうのが第一歩だ。

そして、どのように訴求・発信するかは、各インフルエンサーや現地のパートナーと一緒になって考えることが必要だ。

エピステームの中国における顧客層は日本市場と異なる。購買力の高い一、二線都市に住む20〜30の若年層女性から支持を集めており、若年層を中心とした抖音電商(Douyin EC)のユーザー属性の強さに始めは驚いたという。そして日本での成功法をそのまま活かすことができないことも同時に分かった。

数十人のインフルエンサーと何度も交流を重ね、相互に理解しあえた信頼関係のもと、インフルエンサーたちは定期的にライブ配信を実施。エピステームのブランド理念をよく理解した「仲間」として、ユーザー視点で商品の魅力を発信してくれていることが、成功のカギの一つとなった。

例えば主力商品の一つである美容ドリンクは、中国消費者が好む「インナーケア」や「食養生」の漢方思想と相性が良い。さらにロート製薬=日本ブランドという「安全で信頼できる」といった点も強く訴求していった。結果的に、商品への信頼が高まったことでリピーターが増え、家族や友人への口コミによる拡散効果も大きく、一度に大量購入する顧客も現れているという。

これらの経験もあり、競争が激しい中国市場で成功を収めるには、市場特有の商慣行や消費者行動を徹底的に理解することが重要だとエピステームチームは考えるに至った。抖音電商全球購(Douyin EC Global)は日本の顧客をよりよくサポートするため、東京に現地チームを配置した。現地チームとの定期的なコミュニケーションを通じて中国市場のトレンドを常に把握したり、また現地に精通する運営パートナーや専門スタッフと緊密に連携したりして、「日本流に固執しない」柔軟な姿勢を取るべきだという。

エピステームは大半の社内リソースを抖音電商全球購(Douyin EC Global)に集中投入した結果、2023年には売上1億元(約21億円)を突破しており、また2024年も順調に伸びている。今後、さらなる成長に向けた新たなチャレンジとして、自社ライバーの育成にも着手する計画だという。外部インフルエンサーへの依存度を低減し、コスト削減とブランド価値の一層の向上を目指す。

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36Kr Japan編集部)

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