中国EVの新型車発表が凄い。シェア奪われる日独車が追いつけない理由とは?

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第22回目となる広州モーターショー(2024年広州国際汽車博覧会)が10日間の日程を終え、11月24日に閉幕した。

広州モーターショーは中国が世界に誇る国際モーターショーのひとつで、規模こそ毎年4月の上海/北京モーターショー(毎年交互に開催)よりやや小さいが、一年を締めくくる時期に開催されることもあってか、各社ともにその翌年にリリースする新車や販売計画が明らかにされることが多い印象だ。

広州モーターショーは広州市の琶洲にある「広交会展館」で、名前の通り、1957年から始まった「広州交易会(Canton Fair)」が現在開催されている会場でもある。展示館の総建築面積は110万㎡、室内展示室の総面積は33.8万㎡でこれは世界でも10位内に入る広さだ。歩くのも嫌になるほど凄まじく広い会場にはこのたび約200以上の企業が出展したが、出展者は自動車メーカーだけでなく、国を挙げて力を入れる自動車輸出に関連する海運企業や、中国メーカーの間で採用が進むバッテリーメーカーなど種別はさまざまだ。これまでは自動車関連企業が独占していた場へ自動車業界外からの参入が目立っているあたりに中国経済全体の団結力を感じた。

BYD 夏(筆者撮影)

出展メーカーの国籍では圧倒的に中国メーカーが多く、その次に日系、アメリカ系が続く。広州モーターショーに今回顔を出したのはトヨタ(一汽トヨタ/広汽トヨタ)やレクサス、日産(東風日産)、インフィニティ(東風インフィニティ)、ホンダ(広汽ホンダ/東風ホンダ)、そしてマツダ(長安マツダ)だ。個人的にはインフィニティが中国市場で健在だというイメージがなかったので、日産ブースではなくインフィニティ単独でブースを出展していたのには少々驚きを覚えた。ちなみにこれ以外の日本メーカーで言うとスバルや三菱が挙げられるが、スバルは元々中国で生産していないために輸入車メーカーであり、中国のモーターショーへの出展は元々あまり力を入れていない。また、三菱は2023年をもって中国市場から撤退した。

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シェア拡大続く中国勢、「自動化運転」がカギに

中国の地場メーカーが見せる急成長により、日本やドイツといった従来のトップメーカーたちはシェアを奪われ続けている状況にある。ある意味、未来は安泰とは言えないだろう。

レクサス ES マイナーチェンジ(筆者撮影)

シェアをなかなか取り返せないのにはいくつかの要因が挙げられるが、その中でも中国の消費者が新車に対して何を求めているのかを理解していないのもひとつ。単にグローバル市場で販売するモデルの装備を少し豪華にするだけでは焼け石に水という次第だ。もう少し具体的な話をすると、昨今の中国メーカーは移動中や駐車中に関わらず、車内で過ごす時間をいかに有意義に過ごすかを念頭にクルマを開発している。もちろん、それが消費者の求める要素なのか、はたまた企業がそのような風潮を形成しようとしているのかはハッキリとしないが、少なくともパッと見で日本車よりも中国車の方が車内空間・移動時間の演出は上手いと言える。

たとえば、センターディスプレイだけでなく助手席用にもタッチディスプレイを搭載したり、車内・車外の写真を撮影したり、オプション装備のカラオケ用マイクで車内カラオケを楽しんだり、中国メーカー車種の提供するインフォテインメントシステムは数々のおもしろ機能によって構成されている。中国車と言えば電気自動車(BEV)の選択肢が豊富だが、純電動であるかどうかはそこまで重要でなく、いかにクルマを「自分と乗員だけの移動できるパーソナルスペース」として最大限楽しめるかが焦点となってきているのだ。

ZEEKR 009の車内(筆者撮影)
小鵬汽車の新型EVセダン「P7+」(公式発表会)

そして、中国では依然として極めて高度なレベル2「L2++」(が一般的だが、自動化運転技術も中国新興EVメーカーにおける目玉機能のひとつだ。中国新興EVメーカー御三家のひとつに数えられる「シャオペン(小鵬汽車)」の最新車種「P7+」を例に取ろう。P7+では自動化運転機能を支えるコアとしてNVIDIAのOrin-Xチップセットを2基搭載、計算能力は508 TOPSを誇る。これに800万画素のフロントカメラを2基、車内カメラを1基、超音波レーダー12基、ミリ波レーダー3基を加えた構成だ。市街地や高速道路で目的地を設定することで左折や車線変更・流出入、その他基本操作をクルマが勝手に行なう「NOA(Navigate on Autopilot)」だけでなく、自動駐車や車外からの駐車操作、自動召喚機能などにも対応する。駐車場の構造をまずは人の手で運転して記憶させたのち、それ以降は自動で記憶した駐車スペースへ自動で動いて駐車するという便利機能も、シャオペン以外のハイエンドEVでは当たり前のように搭載されている。ちなみにシャオペンはこれらの機能にカメラを用いる方式が、他メーカーで一般的なのはレーザー光を照射するLiDAR方式となる。

小鵬汽車の新型EVセダン「P7+」(36KrAuto撮影)

日本メーカーも取り組み強化

こういった先進運転支援機能は今まで中国メーカーのみに目立っていたが、ここ最近は日本メーカーでも自動化運転に対する取り組みを強化させている。トヨタの広州汽車との合弁会社「広汽トヨタ」が2025年春に発売する中国専売BEV「bZ3X」では、中国の自動運転ベンチャーMomenta(モメンタ)」と共同で開発した自動運転システムを搭載する。ルーフ前端にはLiDARユニットを1基搭載しており、先述のNOA機能にもしっかりと対応するとアピールしている。bZ3Xは同時に発表された「一汽トヨタ(第一汽車との合弁会社)」の「bZ3C」よりもファミリー向けで保守的な設計思想だが、インフォテインメントシステムはファーウェイと共同で仕上げたものと言う。広州モーターショー2024のステージでは、中国市場で重視される「運転支援機能」「インフォテインメント」の両方に加えてトヨタならではの「安全性」も欠かさずに強調していたのが印象的だった。

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今回出展した日本メーカーの中で新たな市販車を唯一発表した日産も、純電動セダン「N7」でMomentaと開発したNOAなどの機能を搭載するとしている。だが、N7ではbZ3XのようなLiDARユニットが確認されておらず、シャオペンのようにコスト削減でカメラ方式を採用する可能性が高い。

競争激化で低価格EVへも搭載進む中国メーカーは数多くの新車種を発表したが、中でも広州汽車の電動ブランド「アイオン」から登場した純電動セダン「RT」は大きな話題を呼んだ。全長4865 mm x 全幅1875 mm x 全高1520 mm、ホイールベース2775 mmと比較的小柄ながら、同ブランドで今までラインナップされてきたセダン「S」よりも若干大きいモデルとなる。アイオン RTは15.58万元(約323万円)から販売する上級グレードに高精細フロントカメラを2基、LiDARユニットを1基搭載しており、シャオペンの部分で紹介した数々の機能にも対応する。

LiDARはこれまでコストのかかる装備品なため、低価格帯のEVで採用される例は稀だった。だが、アイオン RT、さらにはbZ3Xも15万元前後のモデルに採用するということで、今後はアンダー15万元クラスの自動化運転における競争が激化しそうな予感だ。これからの中国市場は「EV(含BEV・PHEV)かガソリンか」というフェーズではなく、ここ最近停滞気味だった自動化運転をいかに広めるかがポイントになってくるのかもしれない。そう感じた、今回の広州モーターショーであった。

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(文:中国車研究家 加藤ヒロト)

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