BYD日本向け第4弾「シーライオン7」試乗記 装備も走行も“想像以上” 

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BYD日本向け第4弾「シーライオン7」試乗記 装備も走行も“想像以上” 

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中国の電気自動車(EV)大手・比亜迪(BYD)が2025年4月15日に日本で発売した最新モデル「シーライオン7(海獅07)」を試乗した。

BYDは、PHEV(プラグインハイブリッド車)とBEV(電気自動車)を両軸に展開を加速している。2024年には427万2145台の新エネルギー車を販売し、世界トップの地位を確立した。日本市場では、2015年に電気バス事業からスタートし、これまでに全国で約350台を納入した。2022年7月に乗用車市場への参入を表明し、SUV「アット3(中国名:元PLUS)」、ハッチバック「ドルフィン(海豚)」 、そしてセダン「シール(海豹)」の3車種をそれぞれ2023年1月、同年9月、2024年6月に発売した。

今回試乗した「シーライオン7」は、BYDが新たに投入する中型SUVであり、2024年夏頃より日本で公道テストを行なう様子が目撃されており、2025年1月の「東京オートサロン2025」で正式に日本発売が発表された。

外観:スポーティでクーペ・チックな印象

まずはエクステリアを見ていこう。BYDの車種ラインナップは大きく分けて、中国歴代王朝から名付ける「王朝シリーズ」と、海洋生物から名付ける「海洋シリーズ」が存在する。シーライオン7は後者に属しており、流れるようなラインを描くボディが特徴的だ。

フロントマスクは「OCEAN X」コンセプトに基づき、X字を描くようにヘッドライトやガーニッシュなどが配置されている。そして後部では水平基調に左右を繋ぐテールライトがテールを飾っており、両端は水滴を描く「ウォータードロップシェイプ」形状となっている。ミドルセダン「シール」はまさにアザラシのように愛嬌があって丸々したシルエットだったが、それに対しシーライオン7ではアシカのようなシュッとした存在感を醸し出しているわけだ。

ボディサイズはは全長4830 mm x 全幅1925 mm x 全高1620 mm、ホイールベース2930 mmを誇るミドルサイズSUVで、「アット3」より一回り大きく、車内空間と走行性能の両立が図られている。BEV専用の新プラットフォーム「e-プラットフォーム3.0 Evo」を初採用し、BYDの世界戦略モデルとしてふさわしい性能を持つフラッグシップSUVとなる。

実際に対面すると縦横の大きさは感じるのだが、意外にもその全高は低く抑えられているのがわかる。後ろに流れるにつれて上昇するショルダーライン、そして屈折するようにリアスポイラーと繋がるルーフライン、こういったデザイン要素が合わさることでSUVながらも、スポーティでクーペ・チックな印象を与える。

内装:洗練された質感と操作性の大幅向上

内装も進化を遂げた。最新車種の「シール」よりも質感はかなり向上している。丸型だったハンドルは、グリップ性を重視した角ばったデザインに刷新。速度やドライブモード、再生中の音楽、そしてナビ情報などを表示するインストルメントパネルも、「シール」ではダッシュボードより突出した形状だったが、シーライオン7ではダッシュボードに立てかけられた一枚のパネルに埋め込まれているスタイルに。こうすることで内装設計の一貫性を保ち、高級感が演出されるのだ。

15.6インチのセンターディスプレイは従来同様の回転式だが、決定的違うのは内蔵しているチップセットで、こちらは今の中国市場では主流となるクアルコム製スナップドラゴン8155を新たに採用した。これに合わせてUIも全面的に見直し、スマートフォンを触る際の感覚により近い操作感を実現している。

筆者はたまたま試乗会の数日前まで「シール」を借りていたため、その操作感が記憶に新しかったのだが、それを踏まえてシーライオン7のディスプレイを操作すると、まるでまったく異なる世代の電子デバイスを触っているようだ。また、インストルメントパネルでは接続しているスマートフォン経由で地図アプリの案内を表示できるようになっており、より前方視界に集中した運転が可能となるのが良い。

そのほかにも、サンバイザー内蔵ミラーの蓋がマグネット開閉式へ刷新や、ハザードボタンが「P(パーキング)レンジ」ボタンより離れて配置、パノラミック・ガラスルーフに電動シェードを実装など、多くの点で利便性と質感が向上していることがわかる。もっとも感動したのはエアコンの送風口で、これが物理的なツマミで上下左右の向き調整ができるスタイルに回帰したのには思わず拍手をしてしまいそうだった。

性能:スムーズで快適、扱いやすいEV

実際に運転席に座ってハンドルを握ると、やはりBYDの良さは既存の内燃機関車と同じ感覚で運転できることにあると感じた。ブレーキを踏んで始動する感覚、運転に必要な手順をレバーや物理ボタンで操作できる安心感。それでいてBYDが誇る最新技術を内外ともに搭載しているので、新たに何かを学び直す必要なくそれを体感できる「おトク」なクルマなのだ。

足回りには標準で減衰力を速度や路面に合わせて可変するショックアブソーバーを採用、路面の凹凸や段差をしっかりと吸収してくれるので不快感は覚えない。ちょっとしたワインディングロードで意地悪にアクセルを踏んでも車体の姿勢は崩れることがなかったので、ビークルダイナミクス設計にも尽力していると見た。

確かに2.2トンのSUVなので、連続するコーナーでは特にリアが重く付いてまわる感覚は否めない。だが、AWDモデルでは「iTAC(インテリジェンス・トルク・アダプション・コントロール)」がフロントとリアのモーターに最適なトルク制御を行なってくれるので、重量級SUVながら爽快なドライビングフィールをもたらしてくれて楽しいのだ。

駆動用モーターはRWD(後輪駆動)モデルで最高出力308 hp・最大トルク380 Nm、AWD(四輪駆動)モデルで523 hp・690 Nmを誇る。こうして比較するとAWDの方が絶対に良いと思われるかもしれないが、正直に言ってRWDの性能も日常的に運用するには十分すぎる性能だ。AWDに対する絶対的なこだわりが無い以上はRWDを選択してもまったく問題ない。なお、駆動用バッテリーは両モデル共通で容量82.56 kWhのリン酸鉄リチウムイオン電池の一択、航続距離はRWDが590 km、AWDが540 km(WLTCモード)。

価格:性能を考えれば“割安”な設定

メーカー希望小売価格は、RWDが495万円から、AWDが572万円からとなる。筆者は事前に「シールと同等、もしくは少し高め」と予想していたので、シールよりも33万円安いという価格設定にはただただ脱帽させられた。さらに、政府による35万円の購入補助金(CEV補助金)の対象でもあるので、乗り出し価格は400万円台半ばからとなるわけだ。

BYD、日本市場で勝負の値下げ “最後の一押し”狙う新価格と新モデル

BYDは2025年を「創業期から成長期」へ転換する重要な一年とし、「バリュー・フォー・マネー」を全面に出した「親しみやすさ」と「話題作り」でさらなる躍進を歩む魂胆だ。ショールームと整備拠点を併設した正規ディーラーも年内に100か所まで増やすことを目指しており、2025年4月中旬時点でその数は40店舗、仮拠点の「開業準備室」も含めると61店舗になる。

同じく年内には日本向けのPHEV車種も発表する予定であり、依然としてハードルの高いBEVとは異なる方面からも市場へアプローチしていく計画だ。

(文:中国車研究家 加藤ヒロト)

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