中国「小巨人企業」、世界初のRISC-VベースDSPで米TIに挑む 国産化ニーズ追い風に

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オープンソースのCPUコア「RISC-V」を採用した世界初のデジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を開発した中国テック企業「中科昊芯科技(Haawking Technology)」がこのほど、追加のプレシリーズBで華金資本(Huajin Capital)や麦格米特(Megmeet)などから資金を調達した。資金は主に、新製品の販売促進や顧客開拓に活用される。

2019年1月に設立された中科昊芯は、中国科学院の研究成果をベースに事業を展開しており、中国政府が推進する「専精特新(専業化・精密化・特色化・革新化)」政策政策のもと、「小巨人企業」に認定されている。社員100人ほどのうち6割以上が研究開発担当だ。これまでに投資機関の紅杉中国(HongShan、旧セコイア・チャイナ)や新エネルギー車大手の比亜迪(BYD)などから累計で数億元(数十億円超)を調達している。

近年、米国がハイエンドチップの対中輸出規制を強化するなか、中国は国産チップの開発を加速し、企業や個人が誰でも自由に利用・改変できるオープンソースのRISC-Vアーキテクチャを活用することで、Armやx86といった既存勢力に挑む動きが広がっている。この分野には、アリババグループ傘下の「玄鉄(XuanTie) 」やスタートアップの「芯来科技(Nuclei)」なども参入しており、RISC-VベースのチップはすでにIoTやウェアラブルデバイス、エッジAIなどで広く使われ始めている。

3月に発売された玄鉄のRISC-Vベースのサーバー向けCPU「C930」

現在のDSP市場は、テキサス・インスツルメンツ(TI)やアナログ・デバイセズ(ADI)などの米国メーカーが主導権を握っており、中国メーカーは依然として存在感が薄い。中科昊芯の創業者・李任偉CEOは「RISC-Vの命令セットを活用すれば、独自のIP(知的財産)やエコシステムを構築するという大きな課題を解決でき、プロセッサの開発を中国国内で完結するための一助になる」と考えた。

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中科昊芯は、DSPのコアからアルゴリズムまでを独自に開発している。RISC-Vの命令セットをベースとする世界初のDSP製品「Haawking-HX2000」シリーズを展開。車載用や高性能型、コストパフォーマンス型などをそろえており、産業用装置制御やモーター駆動、太陽光発電・蓄電システム、新エネルギー車、家電の分野で活用されている。特にセキュリティなどに高い信頼性が求められる車載用途は、厳格なサプライチェーン管理のもと、中国の大手自動車メーカーに供給されている。

HX2000シリーズは10種類以上のモデルで構成され、すでに複数モデルが量産段階に入っており、年間供給枚数は1000万枚近くに達する見通しだ。また、開発環境を統合し最適化するためのソフトウエア「Haawking IDE」やプログラミングツール「Haawking-Downloader」、エミュレータ「HXLink」シリーズも、大規模な活用が進んでいる。

同社は新エネルギー車(NEV)や人型ロボット、太陽光発電・蓄電システムなどのさまざまなシーンで求められるアルゴリズムの特性を分析し、それに対応するDSPの命令セットにベースとなるRISC-Vの命令セットを組み合わせることで独自の命令セットを構築し、迅速な製品開発を実現している。

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李CEOは、米国が今年に入り関税政策などを変えたことに触れ、チップ国産化の加速が自社にとって成長の追い風になると指摘。DSPの国産化でカギを握るのは、RISC-Vのエコシステム構築と市場の理解度であり、より高い安全性と信頼性が求められる分野で受け入れられるには、まだ時間がかかるとの見方を示した。将来的には、RISC-Vやハードウエア・ソフトウエアのエコシステムを整え、独自IPを基盤としたオープンソースDSPのエコシステム構築を目指す方針だ。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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