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中国電気自動車(EV)大手の小鵬汽車(Xpeng)が2025年11月に発表した最新の人型ロボット(ヒューマノイド)「IRON」は、大きな話題を呼んだ。そのあまりに自然な歩き方を見て、「中に人が入っているのでは?」と疑問の声が上がるほどだった。
この疑惑を晴らすため、小鵬はすぐに説明動画を公開。ソフトスキンの一部を切り裂き、脚部の機械構造を見せた状態で歩行させたほか、背面のファスナーを開けて、ロボット本体のメッシュ構造を露出させた。
多くのロボットが硬くぎこちない動きをするのに対し、IRONはなぜこれほど滑らかで人間らしい歩行を実現できるのか。この点が人々の強い関心を集めた。
IRONには、人間の脊椎を模した構造、82の自由度、AIモデルによる歩行学習など高度な技術が数多く集約されている。だが滑らかさを生む点で最も重要な働きをしているのは、ロボットの「筋肉」に用いられた新素材、弾力性のあるエラストマーだ。
人間らしい動きを実現する核心材料
エラストマーは、硬質プラスチックとシリコンの中間に位置する高性能材料で、曲げ伸ばしを繰り返しても破損しにくい特性を持つ。もともとは航空宇宙分野で用いられていたが、近年は靴の中敷きやVRゴーグル用フェイスパッド、マウスピースなどにも用途が広がっている。ロボット分野では、人間らしい自然な動きを可能にする重要な素材として注目が集まっている。
3Dプリント用材料を開発する「博理新材料(Polly Polymer)」の肖博文CMOによると、エラストマーは人間の筋肉のように、指令に対して連続的かつ柔軟に反応するため、より自然な動作が可能になるという。しかも、同じ体積の金属やプラスチック材料に比べて60~70%軽いため、ロボット本体を大幅に軽量化できる。これにより、モーターの負荷や消費電力を低減できるほか、人と協働して作業する際の安全性向上にもつながる。
また、格子状のラティス構造は通気性に優れ、内部の熱を逃がしやすい特性も備えている。長時間稼働する人型ロボットにとっては極めて重要な要素だ。
現在、このエラストマーは小鵬のIRONのほか、優必選(UBTECH)の「Walker S2」の脚部、智元機器人(AgiBot)の「霊犀X2」の手足と胸部、米Figureの「Figure 02」の関節緩衝モジュールなどにも「人工筋肉」として採用されている。
しかし、従来の射出成形や金型加工では、エラストマーの複雑なラティス構造を精密に作り上げることは難しい。博理新材料は高速光造形3Dプリント技術により、感光性樹脂を1層ずつ編み上げ、人間の筋肉に近い力学特性を持つパーツを成形することに成功。さらに従来方式の20~100倍という高速造形を実現した。
日常に違和感なく溶け込むロボットへ
ロボットに「人間らしさ」を持たせることが重要なのはなぜか。小鵬の何小鵬CEOは、ビジネス的な側面が大きいと説明する。人に近いロボットほど親近感がわき、家庭や介護、サービスなどの場面でも心理的な抵抗が少なく、大規模な普及につながるからだ。
IRONはすでに小鵬の工場で、荷物の運搬などの作業を担っている。産業用ロボットアームに比べ、人型ロボットは人の作業環境にそのまま適応できるため、実際の作業データを効率的に収集できる。それをAIのトレーニングに活用することで、継続的な改良を重ねていく好循環が形成されている。
何CEOは、人型ロボットはまだ検証段階にあるものの、技術やコスト面の課題が解消された時、自動車分野を上回るスピードで成長を遂げるはずだと指摘。「10年後に何台の人型ロボットが売れるかは分からないが、自動車より多くなることは間違いない」と述べた。
(翻訳・畠中裕子)
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