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立場が弱いフリーランスや中小企業を守るための法整備が進んでいる。今月1日に「下請法」が改正され「中小受託取引適正化法(通称: 取適法 )」として新たに施行されたほか、2025年11月にはフリーランス保護法(以下フリーランス法)が施行された。
一方で現場の認知は広がっていない。筆者は2024年12月、数年取引を続けてきた中国企業の日本法人に取引を打ち切られた。フリーランス法施行を機に契約書を作成しようとしたところ、就任したばかりの社長の判断で、逆に切られてしまったのだ。その後は会社側と一切連絡がつかなくなった。
法令違反がないのか各所に相談したところ、労働局からフリーランス法でなく下請法違反の疑いがあると助言され、公正取引委員会に申告した。半年後に企業の法令違反が認定され、未払いだった報酬数十万円と遅延利息金の支払いを受けることができた。
フリーランス保護法のニュースが盛んに流れていたので、筆者、取引先ともに同法にフォーカスし、取引先はフリーランス法に抵触しないよう対処していたが、下請法を見落としていたのだ。
フリーランス歴10年、小さなトラブルはいくつもあったが、取引先にバックレられて法律問題に発展したのは初めてだった。誰にとっても他人事ではない。一連の経緯から得られた教訓、労働局や公取委への相談を通じて感じたことを紹介したい。【全5回の第1回】
シャンシャンの輸送も担当
筆者が数年にわたって業務を受託し、突然打ち切られたのは中国最大の物流企業である順豊エクスプレス(SFエクスプレス)。日本人にはジャイアントパンダのシャンシャンの日中間輸送を担当した会社という方が分かりやすいかもしれない。

取引が始まったのは2021年。順豊エクスプレスのマーケティング顧問だった聡子(仮名)氏に、メールマガジン作成の手伝いを依頼されたことがきっかけだった。同社のマーケティング担当が全体を統括し、筆者は企画やコンテンツの取材執筆、編集、校正を請け負った。
最初の数回は見積書を提出したが、契約書や発注書はなかった。顧問の聡子氏とは付き合いが長く信頼関係があったこと、業務負荷が軽く報酬も少なかったため、取引開始時点ではまさに“お手伝い”程度の感覚だったことが理由だ。1年半ほど経った2023年、聡子氏が家庭の事情で退任した。
聡子氏の退任によって、筆者の立場は大きく変わった。その頃には同社や業務に対する理解が深まっていたことから、彼女の役割を引き継ぎ、社員採用にも関わるなど同社業務への関与が増えた。
報酬や業務内容も見直し、新たに入社した日本人社員田中氏(仮名)の助言役のような立場で、マーケティング業務全体を支援することになった。これらのことは同部門の責任者とメールで確認したが、この時点でも契約書を作成しなかった。
田中氏が異業種からの入社であること、それまで中国企業との関わりがなかったことなどから、田中氏の上司も含めた打ち合わせが急増し、社内外向けの情報発信、認知向上に向けた施策など幅広く携わった。
元衆議院議員が新社長に

事態が急変したのは2024年秋だ。順豊エクスプレスの社長が“電撃”退任し、マーケティングを統括していた責任者も別会社に移籍した。責任者からは「こんな急で悪いけど、自分もどうなるか分からないから」と電話が入った。
ほぼ同時に順豊エクスプレスの親会社から数人の中国人幹部が来日し、要職に就いた。
この人事自体に驚きは少なかった。2024年に入って中国企業の日本法人ではトップ交代が相次いでいたからだ。
背景には2つの要因があった。第一にコロナ禍で往来が自由にならず、多くの中国企業が数年にわたって国際部門の人事や戦略を凍結していたが、コロナ禍が一段落したことで止まっていた針が一気に動き出した。
第二の要因は中国の景気低迷。国内での成長が困難になり、中国企業の海外進出が加速した。日本は中国企業にとって攻略が難しい市場とされ、以前は進出しても成果はそれほど求められていなかったが、2023年ごろから日本市場にも高いKPIが課され、目標未達だと幹部やチームが更迭されるようになった。人を入れ替えたくらいで容易く攻略できないのが日本市場なのだが、結果が出なければとりあえず人を替えるのが中国企業である。
とにもかくにも2024年、中国企業の日本法人は激動だった。幹部だけでなく、日本法人のチームごと総入れ替え(それまでの社員はほぼ全員クビ)というケースも複数見聞きした。
中国で働いたことがある筆者は、日本人の労働観では理解しがたいことが普通に起きることは知っており、体制や方針が180度変わることは覚悟していた。
ただ、順豊エクスプレスで起きたことは、想像の斜め上を行っていた。
2024年11月中旬、前月に退任した中国人社長の後任として、元衆議院議員の日本人が社長に就いた。親中で知られる鳩山由紀夫政権時代に政務官を務めていた人物だった。
人事責任者「私も明日は分からない」
ちょうどその頃、2024年11月にフリーランス保護法が施行された。取引先の中には契約書や発注書を整えていない企業もいくつかあったが、法施行の少し前から適正化の動きが起きた。
順豊エクスプレスもそのうちの一社だった。マーケティング担当者の田中氏から「経理に契約書を交わしてほしいと言われている」と連絡を受けた。


筆者も気になっていたことだったので同意した。ところが順豊エクスプレスの体制の混乱の影響で、契約書作成が進むどころか、新しい責任者に前月の業務分の請求書を承認してもらえない状況に陥り、雲行きが怪しくなってきた。

外部から新社長が招聘されたことで、前体制の幹部に業務を以来された筆者の立場が危うくなっていることは容易に理解できた。ただ、契約書がないまま業務を続けてきた状況をまず是正してほしいし、仕掛かっている案件もあるため今後数カ月は業務を確保したい。
事態を把握しきれていないマーケティング担当者の田中氏と話しても進展しないと思い、順豊エクスプレスの人事責任者である林川氏(仮名)と2回にわたって面談を行った。林川氏とも数年にわたる親しい間柄だった。
林川氏から届いたメールには、“嵐”が起きていることが示唆されていた。

「私とて明日は分からない」との言葉に、社内の動揺を感じずにはいられなかった。
第2回に続く。
(文・香香、文中は全て仮名)
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