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ショート動画サービスのTikTok(中国国内版は「抖音 Douyin」)は、海外進出を果たした中国のIT関連プロダクトの中では最も成功した例といえる。親会社のバイトダンス(字節跳動)が2018年7月に発表したデータによれば、TikTokは世界約150カ国の市場に投入され39カ国語に翻訳され、世界のMAU(月間アクティブユーザー数)は5億人にも達する。TikTokユーザーは昨年も増加し続けており、現在ではさらなる伸びを記録している可能性が高い。
早熟の覇者TikTok(一) インド・米国・ブラジル市場で新世代SNSのスターに
TikTokの広告効果
TikTokは各国の大市場において収益化の初期段階にあるため、広告収入は依然としてFacebookとの大きな隔たりがある。だが広告主、広告量の増加とアプリ内での付加価値サービスにおいてTikTokは着実な収益を得ており、業界関係者も「TikTokがFacebookの売上にとっての脅威となる日もそう遠くない」とみている。
2019年、TikTokのインドでの売上高は2億3000万~5000万ルピー(約3億2500万~5000万円)に達しただけでなく、2019年2月以降は黒字が続いている。Sensor Towerのデータによれば、TikTokの2019年の総売上高は1億7690ドル(約190億円)で、そのうち米国が3600万ドル(約40億円)の売上高で年間売上高の2割に貢献した。
詳細を見ると、TikTokの主な広告再生形式は中国国内の抖音とほぼ同様であり、起動画面広告、インフィード広告、KOLとのコラボといったものだ。目新しい広告形式としてはハッシュタグチャレンジがあるが、これはブランドや最新製品にちなんだキャンペーンに関する特設ページでコンテンツ投稿への参加を募り、結果的にアプリ内で自然と幅広く拡散されるという広告形式をさす。
メディア報道によれば、新型肺炎で始まったインドでのロックダウン期間中、消毒液などを展開するブランド「Dettol」がTikTok上で手洗いキャンペーンを打ち出し、再生回数が500億回となったほか、ユニリーバ傘下のブランド「Lifebuoy」による同様のキャンペーンでもクリック回数が1週間で延べ200億回に達している。
力強いユーザー増の勢いとこれまでに蓄積してきた膨大のユーザー数のおかげで、TikTokはすでに海外市場で無視できないプラットフォームに成長した。TikTokをライバルと見なす大手SNSでさえ、TikTok上に広告を掲載せざるを得ないほどだ。インドの日刊紙「エコノミック・タイムズ」によると、Facebook傘下のInstagramは昨年12月以降、TikTokのレコメンドの「おすすめ」画面にローカル動画広告を出しており、広告数は年初の16本から5月には一挙に200本まで増加している。
シリコンバレーの秀才を招き海外での規制に対応
TikTokの商業化の順調な立ち上がりと成長は、親会社バイトダンスが全力を挙げて「ヘッドハンティング」した秀才、ブレイク・チャンドリー氏と切り離せない。ブレイク氏はFacebookの元グローバルパートナーシップ事業の責任者であり、同社で約10年の勤務経験をもつ人物だ。過去にはFacebookの海外での商業化チームの立ち上げを一手に引き受け、アジア太平洋地域やラテンアメリカなどの新興市場にも深く精通する。同氏はTikTokに加入後、同社のグローバルビジネスソリューション事業のバイスプレジデントに就任した。
当然ながら、ブレイク氏はTikTokが雇用した唯一のエリート幹部ではないが、バイトダンスはここ数年でFacebook、YouTube、Huluといった複数の大手企業から少なからぬ人材を引き抜いてきた。例えば、
・YouTubeの元クリエイティブインサイト事業のグローバル責任者Vanessa Pappas氏。TikTokでは米国エリアのゼネラルマネジャーを務める。
・YouTubeの元有料メンバーシップ事業プロジェクトの責任者Stefan Heinrich氏。TikTokではCMO(最高マーケティング責任者)を務める。
・Huluの元幹部Nick Tran氏は、TikTokで北米市場のマーケティング責任者を務める。
・ディズニーで長年幹部を務めたケビン・ メイヤー氏がバイトダンスのCOO兼TikTokのCEOに就任したニュースは先日話題となった。
海外企業での重要事業の経験をもつこうした一流人材の加入は、第一にTikTokが強力な海外管理チームを設けることでさらなる事業の発展を推進し、グローバル化を実現することを目的としたものだ。さらには各国市場における規制政策により良く対処する上でも有利となり、TikTokと北京にあるバイトダンスとの関係性もより明確になった。
目下、規制をめぐる問題は、TikTokが海外市場に進出後抱え続ける弱点となっており、特に米国では、TikTokに対する一連の規制や審査は常に実施されてきた。このため、TikTokでは米国の同社幹部からなるチームが管理と運営を担当しており、同時に米国では「トランスパレンシー(透明性)センター」を開設し、米国政府機関の審査要求に応えている。また米ウォールストリートジャーナル紙によれば、TikTokはさらにコンテンツ審査チームも設けており、各国市場におけるコンテンツ審査業務を現地の審査チームに任せている。
TikTokは絶えず問題に追われているものの、成長の勢いは今も衰えていない。当然ながら、ショート動画アプリの世界トップの座をたやすく勝ち取れる者は誰一人としていない。TikTokは今後も、中国国内外の大手ライバルからの「狙い撃ち」に直面することだろう。
作者:深響(Wechat ID:deep-echo)、吕玥
(翻訳・神部明果)
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