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中医学(中国の伝統医学。以下「中医」)というと、独特な薬の処方・調剤を想像する人が多いだろう。しかし治療の要となる漢方薬には、中医的治療アプローチをめぐるさまざまな問題が存在し、「中医は薬に破壊される」とさえ言われる。農業副産物である漢方薬は品質を一定に保つのが難しく、流通プロセスにおける品質偽装や、着色・増量加工が行われるなど無秩序な状況が絶えず発生している。2017年に国家薬品監督管理局(NMPA)が発表した通告では、46種類の煎じ薬用漢方薬が規定違反となっており、煎じ薬用漢方薬の違反率は65.98%にも上る。中には漢方薬や漢方製剤を扱う有名企業も少なからず含まれているという。
このほか、漢方薬はほとんどの場合、一人一人に合わせた処方がされ、それぞれの症状を見て投薬される。患者は実際の煎出や調剤のプロセスを見られず、処方箋の有効性を確かめる方法も不足しており、実際の調剤・生産現場では処方通りの処理がされていないことがある。小規模薬局の分散化や、就業状態の薬剤師が40万人しかいないことも、薬局経営のコスト高や薬剤師資格の名義貸しなどの問題を引き起こす要因となっている。
「薬良心(YAOLIANGXIN.COM)」は上述の医薬品業界のペインポイントをもとに、IoTビッグデータやAIに基づき開発された中医薬追跡プラットフォームだ。
薬良心のビジネスモデルは以下のようなものである。ユーザーは病院もしくは薬良心が提携するオンラインプラットフォームでの問診後、取得した処方箋を薬良心のシステムに入力すると薬良心が提携する薬局の間で共有され、ワンストップのフルフィルメントサービスが提供される。そのサービスは一元的で、法令遵守がなされ、追跡可能なものだ。AIによる処方内容の審査、人による再審査、処方評価、薬品サプライチェーン管理、漢方薬煎出、自宅への配送までが含まれ、支払われた処方代金のうち一定の割合を薬良心が手数料として徴収する。
創業者の徐麗雅氏は中医薬業界は保守的で、情報化能力が不足していると指摘する。そこで薬良心はサプライチェーンの川上から川下までをつなぐ過程で、病院・薬局・オンラインプラットフォームが診療受付・問診・決済をオンライン化させるシステム構築を支援した。
プラットフォームについては、中医サービスプラットフォーム「易中医」と契約し、登録医師が処方の実施状況を確認し、提携薬局の在庫を処理するサポートを行う。サプライチェーンについては、山西省にある「鵝屋郷漢方薬産業イノベーションベース(中薬産業孵化基地)」と契約し、年内には特定の生薬で独自のサプライチェーンを完成させる計画だ。
徐麗雅氏によると、薬良心は中医オンライン診療や薬の宅配など既存の競合サービスと比べると、漢方薬材の栽培からユーザーによる薬の服用まで産業の全過程を網羅し、プロセスの情報化とトレーサビリティを活用して投薬や処方箋の質を保証できる点に主な特徴がある。また、プラットフォームのデータは監督機関に開放されており、オンラインでの医療保険精算や行政機関による監督・管理を実現している。
市場調査分析機関「智研諮詢(Intelligence Research Group)」が発表したレポートによると、過去7年間、中医薬を含む中国の総合保健産業の市場は2桁の高速成長を維持しており、2017年には前年比21.1%増の1兆7500億元(約27兆1400億円)規模に達している。さらに中国国務院の発表では、2020年にも同産業は3兆元(約46兆5300億円)規模を突破し、年平均成長率は20%を維持する見込みだ。
煎じ薬用漢方薬業界単独で見ても、リサーチ機関「前瞻産業研究院(Qianzhan Industry Research Institute)」の統計データでは、2018年の同業界の売上高が2700億元(約4兆1900億円)に達し、市場規模も年々拡大傾向を示している。
支援政策については、ここ数年来で複数の行政機関が一連の関連政策を相次いで実施しており、中医薬の品質向上と同産業の健全な発展を加速・推進し、情報化によるサービス体系の構築を支援していく方向だ。
2019年、薬良心を運営する「北京一薬良心信息科技(Beijing Pharma Conscience Information Technology)」は「阿米巴資本(Ameba Capital)」から資金を調達した。同社は現在、プラットフォームの技術開発、市場開拓、技術チームの構築・管理などのために、シリーズAでの数千万元(数億円)の調達を計画している。(翻訳:浅田雅美)
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