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電子機器にとって避けては通れないのが熱問題だ。放熱対策が不十分だと高負荷時にCPU温度は急上昇し、機器の寿命を縮めたり熱暴走を引き起こしたりする。
この分野にフォーカスしたスタートアップ「蘭洋科技(BLUEOCEAN)」は2019年の創業以来、独自開発した熱流束モデリングや冷却液、メッキ技術などを駆使して、コストの面で空冷式にも引けを取らない浸漬液冷システムを開発してきた。主にパソコン、データセンター、5G基地局、スマートフォン、プロジェクターなどのメーカーに向けて、冷却液や放熱モジュールなどを含む浸漬液冷システムのトータルソリューションを提供している。今年に入ってからは中国のPCブランド「雷神(Thunderobot)」とタイアップして浸漬液冷システム搭載の小型デスクトップPCをリリースした。
現在、市場で主流なのは室温を下げるなどして冷却する自然空冷、ファンを用いた強制空冷、冷却液による水冷などの方式だ。浸漬式冷却技術はCPUなどのパーツを冷却液内に直接浸す方法で、前述の冷却方式に比べて高い放熱効率を誇る一方、コストも跳ね上がる。「浸漬式冷却技術の普及が進まない原因はコストにある。当社では放熱効率とコストの最適なバランスを模索しているところだ」と、蘭洋科技創業者の莫景傑氏は語る。同社の浸漬式冷却技術は空冷式の6倍以上という放熱効率を達成しながら、一般消費者にも手の届く価格を実現しているという。
この浸漬式冷却技術で中核をなすのは冷却液の性能と、さまざまなシーンに対応できる放熱設計だ。
蘭洋科技が使用する冷却液は高い熱伝導性や絶縁性、流動性を持ち、化学的安定性に優れた液体のため18~25年は交換の必要がないという。「現在、流通している浸漬液冷方式の多くが採用しているフッ化系の冷媒は毒性があり、動作中には沸騰に伴う騒音が発生する。しかもコストが非常に高い割に放熱能力は安定せず、筐体も大きいため、一般用途には向かない」と莫氏は語る。
同社CTOの林子傑氏の説明によれば、顧客のニーズに応じて熱流束モデルを作り、計算で導き出した熱伝導率をもとに冷却液や放熱モジュールを設計していくのだという。
雷神とタイアップしてリリースしたデスクトップPCの場合、冷却液を注入するだけでなく、内部に小型タービンを設置して放熱性をさらに高めている。さらに外部にも放熱モジュールを追加し、冷却液がパイプを経由して内部に戻るクローズドループを作り上げて、熱交換効率を最大限に引き上げた。室温28度、最高スペックのPCでストレステストを行い極限状態にした場合、室温とCPUおよびGPUの温度差はチップにとって最適な50℃以下に抑えられた。
PCやスマホなどの電子機器以外にも、データセンターや5G基地局、LiDAR、送電基地局など大規模な放熱設計を想定したソリューションの研究開発も進んでいる。まずはIT企業のデータセンターにアプローチする計画で、すでに数社との提携を取り付けたという。
5G時代の幕開けに伴い、電子機器における放熱設計のニーズは大幅に膨れ上がるだろう。5G対応スマホの消費電力は4G端末の3倍以上とも言われる。2016年から2020年にかけて、スマホ用放熱モジュール市場の年平均成長率は26.1%で、2020年の市場規模は36億ドル(約3800億円)に達すると見込まれる。
蘭洋科技は日本で研究を行っていた複数の工学博士が帰国後に立ち上げたもので、創業からわずか3カ月のうちに「洪泰基金(Hongtai Aplus)」「大米創投(Dami Ventures)」「寧波天使引導基金(Ningbo Angel Capital Guiding Fund)」からエンジェルラウンドで1000万元(約1億6000万円)規模の資金を調達した。(翻訳・畠中裕子)
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