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中国のゲーム会社「miHOYO(米哈游)」によるオープンワールドアクションRPG『原神(Genshin)』が大ヒットしている。
米アプリ調査会社Sensor Towerによると、原神は9月末にローンチしてわずか10日後にアプリストアのAppStoreおよびGoogle Playにおける収入が約9000万ドル(約94億円)に達し、全世界でのダウンロード回数が1300万回を突破したという。ローンチ初週の収入がすでに6000万ドル(約63億円)に達しており、今年第1四半期の収入トップだった「PUBG Mobile」を上回っている。
原神は決して中国のプレーヤーに限定して受けたわけではない。中国のアプリ調査会社・七麦数拠(Qimai Data)の調べでは、先月21日時点で原神は中国以外にも米国、韓国、カナダ、シンガポールなど9カ国で人気ランキング首位を獲得している。Sensor Tower のデータによると、10月の海外市場における売上高の上位3位は、日本(35.6%)、米国(27.4%)、韓国(11%)が占めている。国別ダウンロード回数をみるとさらに多国籍化の様相をみせており、中国はわずか24%、米国が11%、ブラジルと日本が6.5%だった。
グローバル市場をみれば、評価の高い中国発タイトルは原神に限らない。香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの5月の報道では、今年第1四半期における米国ゲーム市場の売上高ランキングで上位100位にランクインしたタイトルのうち、中国のモバイルゲームは19タイトルを占め、総売上高は4億8700万ドル(約510億円)に上った。上位100タイトルによる売上高の16.3%を占める数字だ。
このランキング集計当時、原神はまだリリースされておらず、ランクインしたのはテンセントゲームズ(騰訊游戯)やネットイースゲームズ(網易游戯)などのビッグネームのほか、「莉莉絲游戯(Lilith Games)」「FunPlus(趣加)」「游族(YOOZOO Games)」などだ。
ターゲット市場への理解が第一
中国最大手のインターネット調査会社・易観(Analysys)が中国のモバイルゲーム市場について分析したレポートによると、今年上半期、テンセントゲームズ、ネットイースゲームズ、「三七互娯(37 Interactive Entertainment))」の三社が占めた市場シェアはそれぞれ54.46%、15.29%、10.51%で、絶対的御三家としての存在感を見せた。中国市場において、この3社で占められる80%のシェアを他企業が覆すのはどうにも難しい状況といえる。
グローバル市場に視点を移しても状況は同様だ。ゲーム関連の市場調査会社Newzooが発表した2019年のゲーム企業番付では、トップ25のうち5社が先の御三家を含む中国企業だが、残り20社は北米と日韓の独占状態だ。
小規模なゲーム会社は、企業そのものよりも製品単体で勝負をかけた方が大手と渡り合えるチャンスがある。Sensor Towerが発表した今年上半期のヒットタイトルの売上高ランキングでは中国発ゲームが6タイトルランクインしているが、いずれも上記に挙げたような大手企業による製品ではない。
総売上高ランキングで7位につけた「AFKアリーナ(剣与遠征)」の開発元であるLilith Gamesは、激しい市場競争で生き残るために最も重要な要素はローカリゼーションだとしている。このローカリゼーションとは単純にテキストを現地語に翻訳するだけではなく、UX(ユーザー体験)から市場における売り出し方までを含む全体的な戦略を指す。
「深い」ローカリゼーションとは
原神が爆発的ヒットを収めた背後には、褒貶入り乱れる周囲の評価もあるだろう。
多くのネットユーザーからは「パクリ」「炎上商法」との酷評も飛ぶ。原神のプレイ画面や一部システムは任天堂の人気タイトル「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」に似ているとの指摘があり、ファンの不満を買っている。開発元のmiHOYOがベータテスト実施前に同作への“オマージュ”ともみてとれるティザーを発表したことも火に油を注ぐ結果となり、「炎上マーケティングだ」と争議を醸した。
しかし、パクリであろうと炎上商法であろうと、原神が中国国内でブームの第一波を巻き起こしたのは確かだ。無料でダウンロードでき、スマートフォンやNintendo Switchなどのゲーム機をはじめ多くのプラットフォームに対応していることもあり、誰でも気軽にプレイできることがヒットの鍵となった。つまり、原神は「ローカル化」よりは「グローバル化」を志向しているといっていい。
同作の神話的な架空の世界観は現実離れしていて理解しがたいものとして忌避されることはなく、むしろ特定の地域の美的感覚や嗜好に片寄っていないがために、一種の“統一感”を貫くことで世界中のゲーマーの需要に寄り添うことを意図したようにみえる。
反対に、現在出回るほとんどのゲームは依然として明確にローカル戦略を敷いている。画風やマーケティングにおいてはこれが最も顕著だ。
昨年に中国、香港、マカオ、東南アジア、欧米、韓国などで相次いでローンチされたRPG「聖闘士星矢:覚醒」も同様だ。配信元のYOOZOO Gamesで海外配信事業部門のバイスプレジデントを務める劉万芹氏によると、「香港、マカオ、台湾、東南アジアなどのアジア市場では、同タイトルにユーザーが抱くイメージは『仲間と共にアテナを守り、共に戦い成長していく』というもので、原作のテーマに沿った展開をした。一方で欧米市場では、『個人にスポットを当てたヒロイズム』といったコンセプトのほうがより受け入れられやすい。地域によってユーザーの価値観が異なるので、地域ごとのユーザーが抱くイメージに則した調整を加えている」と説明した。
さらに、アジアのプレーヤーは繊細でソフトな画風を好むが、欧米のプレーヤーは情熱的でワイルドな感覚を好む。主人公の星矢はアジア版では柔和な表情、欧米版では凛々しい表情と描き分けているという。
Lilith Gamesが自主開発したいくつかの海外向けタイトルでも、ターゲット市場ごとに細かな線引きがされている。AFKアリーナが日本でリリースされる際には、日本のユーザーがストーリー性を重視することを鑑み、ストーリー展開を日本仕様に調整しなおした。また「Rise of kingdoms 万国覚醒」を韓国でPRする際には、韓国人ユーザーの民族としての自尊心を考慮し、韓国の統率者キャラクターと共にゲームをパッケージ化した。
海外進出は長い道のりだ。YOOZOO Gamesは2013年に海外でもゲームの配信を始めた。Lilith Gamesは自主開発タイトルの2作目からグローバル市場の開拓を始め、miHOYOは2015年からグローバル化を本格化させ、海外にも拠点を置くようになった。
テキスト、アート、音楽、ストーリーなどのマルチコンテンツとして、各配信元はゲームを単純なプロダクトという位置づけにはせず、ゲームを通じて中国の文化を海外に広め、海外文化との交流を深めようとしているのだ。
今年3月時点で海外進出を果たしている中国企業は7415社。うち48%にあたる3575社はゲーム関連の事業を手がけているという。世界四大監査法人KPMGによる「Leading Chinese cross-border brands: The Top 50, 2019(国境を越えた中国のリーディングブランドTOP50)」では、中国ブランドで世界的信用が最も高いカテゴリーはゲームだと指摘されている。(翻訳・愛玉)
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