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アップルのティム・クックCEOにとっては、純電気自動車(BEV)さえ大型電子機器に過ぎない。 2013年にディスプレイモジュールとiPhoneを連携させる機能「iOS in the Car」(後に「CarPlay」と改名してリリース)を発表して間もなく、自動運転EVを開発する「プロジェクト・タイタン」を発表、EV開発へ名乗りを上げると共に自動車業界に革命を起こす車を創出するとした。
自動車でもソフトとハードの開発を同時進行
2017年以来、アップルは自動車関係の特許を100件以上取得している。
アップルは自動車製造でもソフトウェアとハードウェアの開発を同時進行で行う。2007年に初代iPhoneをリリースした際、 アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は、パソコンの父アラン・ケイ(Alan Kay)氏の「ソフトウェアに真剣に取り組む人は、ハードウェアも自分で作るべき」という言葉を引用している。
近年、アップルの特許数はシステムと車両設計の両面で増加し続けている。 中国の大手証券会社「安信証券(ESSENCE SECURITIES)」によると、アップルのシステムに関する特許の割合は2016年の22%から2019年には41%へと上昇、車両設計の特許の割合は2016年の11%から2019年の37%へと増加したという。
システム関連の特許は比較的充実しており、AR(拡張現実)機能搭載フロントガラスの特許などは興味深い。
上記のコンセプト画像によると、車のフロントガラスが透明ディスプレイになり、ドライバーはこのスクリーンを操作して、フロントガラス上に建物名や周囲の車両の速度を表示させ、リアルタイムで翻訳された道路標識を見、フェイスタイムでのビデオ通話などもできるらしい。
車両設計では、車体シャーシの改良デザインや既存部品のインテリジェント化など、ドア、サスペンション、ウィンドウでの特許申請が多い。
ヒューマンマシンインターフェース(HMI)もアップルの得意分野だ。アップルはCarPlayと膨大なiPhoneユーザーを動員して、車両とモバイルデバイスの緊密な統合を実現している。
自動車業界でも革命児となりうるか
ほとんどの新興自動車メーカーは起業時に自身を「自動車産業のアップル」と宣伝する。アップルも再び革命を起こす意欲で自動車業界に参入しているが、かつての成功を繰り返すことは果たしてできるのだろうか。
この点についてはアップル自身でさえ確信が持てていないようだ。 プロジェクト・タイタンは何度も事業再編の犠牲になっている。 2019年1月には200人以上、今年3月にも190人が同プロジェクトから外された。
また、アップルはADAS(先進運転支援システム)の走行試験も削減している。 米カリフォルニア州車両管理局(DMV)に登録されているアップル車両69台のうち、2019年に走行試験を行ったのは23台のみで、走行距離も7544マイル(約1万2140km)と前年の10%止まりだ。
他メーカーはもっと走行試験に力を入れている。2019年、米グーグル系の自動運転開発企業「Waymo(ウェイモ)」は145万マイル以上、ゼネラル・モーターズ傘下の自動運転開発会社「Cruise(クルーズ)」も、83万1000マイルの試験を行っている。
自動運転技術ではセンサー性能が重要だ。走行試験を積み重ねることは自動運転の安全性を確保するために欠かせない。どの企業も走行試験を強化している中で、アップルのペースは鈍化しており、自動運転は重点プロジェクトから外れたのではないかとの懸念も出始めていた。
さらに、アップルにとって、自動車製造はまったく新しい分野である。自動車のサプライチェーンはスマートフォンよりもはるかに複雑で、車載システムだけでスマートフォンと同じだけの部品が必要なほどだ。そのサプライチェーンも構築しなければならない。
時代も移り変わっている。 iPhone発売当初とは異なり、テスラのような革新技術を持つライバルも多い。テスラなどは既に技術面ではEVの主導権を握っており、コロナ禍の2020年でも売上を伸ばしている。
アップルの自動車業界参入は遅きに失したようだ。しかし、アップルには別の切り札、すなわちiOSエコシステムがある。自動車メーカーや大手IT企業がエコシステム構築を急ぐ中、アップルは既にこのステップを終えている。次世代EVでも再びアップルが革命を起こすのだろうか。
(翻訳:永野倫子)
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