3Dバイオプリンティング技術で培養肉生産、人工肉企業「CellX」が数千万円調達

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3Dバイオプリンティング技術で培養肉生産、人工肉企業「CellX」が数千万円調達

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中国のクリーンミート(培養肉)企業「CellX」がこのほど、シードラウンドで数百万元(数千万円)を調達した。リードインベスターは「Lever China Alternative Protein Fund(力矩中国替代蛋白基金)」。コ・インベスターは英「Agronomics」、独「Purple Orange Ventures」、チリ「Humboldt Fund」など。資金は主に製品開発と開発チームの立ち上げに充てられる。

2020年に創設されたCellXはクリーンミートに特化したバイオ関連企業で、組織工学技術と3Dバイオプリンティング技術を活用し、クリーンミートを直接生産することで、食の安全、生態環境の保全、動物愛護に取り組んでいる。

同社は昨年「2020国際未来農業食品百強・白馬峰会(IFA2020)」の代替タンパク質部門トップ20社と英フードテック専門誌「Forward Fooding」選出のフードテック500強企業「2020 FoodTech 500」に選ばれた。現在、浙江大学と提携し、同大学のすぐれたプラットフォームと研究力をよりどころに、独自の技術と製品開発を加速している。

創業者の楊梓梁CEOは、2021年第2四半期には同社初のクリーンミートのプロトタイプを発表する予定で、その際にはエンジェルラウンドで300万ドル(約3億1000万円)を調達して研究開発をさらに進める計画だと明かした。

人工肉は植物由来の代替肉と動物由来のクリーンミートに分けられる。代替肉は植物を原料に肉の食感や形状をうまく模倣している。一方、クリーンミートは動物の細胞を原料として作られる。クリーンミートは植物由来の代替肉とは違い、動物の筋肉や脂肪細胞から肉類が本来持っている三次元構造を作りだすことができるため、肉本来の味や食感、味を忠実に再現できる。

また、クリーンミートは無菌環境と厳格な品質管理下で培養されるため、従来の畜肉に含まれるホルモン物質や抗生物質、病原体が引き起こす問題を防止できる。動物の成長サイクルに関係なく食用肉を生産することができるため、食糧危機問題を解決する糸口ともなる。生きた動物に頼る必要がないため、動物への危害はゼロとなり、豚コレラなど動物を媒体とする感染症による食料供給への影響も抑えられる。

楊CEOは「1万年前、人類は最初の農業革命で野生動物を家畜に変えた。牧畜業によって十分な食物を確保できたおかげで、今日の文明が作りだされた。しかし従来の牧畜業には多くの問題もあった。土地や水資源、エネルギーへの過度な依存、温室効果ガスの排出、抗生物質やホルモン剤の乱用、そして動物愛護の問題などだ。CellXは新たな農業革命を目指している。動物の細胞を利用したクリーンミートを生産し、伝統的な牧畜業の問題を改善する。細胞農業を実現することで人類、動物、環境に貢献していく」と語っている。

クリーンミートの生産は細胞の培養と組織工学の二段階にわかれる。中核技術には細胞の増殖と分化、食用可能な足場の3Dプリンティング、バイオリアクターなどの総合的な活用を含まれるため、技術障壁が比較的高い。現在、この分野の主な課題となっているのは、培養基中のウシ胎児血清の置き換えや培養基コストの削減、量産化などだ。クリーンミート製造の米スタートアップ企業「メンフィス・ミーツ(Memphis Meats)」は昨年、1億6000万ドル(約165億円)を調達し、クリーンミートを量産できる生産ラインの建設に充てている。

人工肉分野では世界的に植物由来の代替肉が主流となっている。36Krも以前、中国の代替肉製造企業として「Starfield(星期零)」や「無錫谷肉食品科技」を紹介している。クリーンミートについては、オランダ・マーストリヒト大学のマーク・ポスト教授が25万ドル(約2600万円)を投じて世界初となるクリーンミートをが誕生させて以降、2015年からは業界全体が急速に発展している。現時点で世界にはクリーンミート製造のスタートアップ企業60社余りがあり、累計4億ドル(約412億円)の資金調達を行っている。中国国外では昨年末、米新興企業の「イート・ジャスト(Eat Just)」がシンガポールでの販売承認を受け、イスラエルのネタニヤフ首相がイスラエルに本拠を置く「アレフ・ファーム(Aleph Farms)」社のクリーンミートステーキを試食し、政府支援の方針を明らかにした。

中国国内では現時点で、クリーンミート関連企業は少ない上、その大部分が創成期にある。CellXなどのスタートアップにとって市場の可能性は大きく、チャンスも多く、戦略性も高い。南京農業大学の研究チームは2019年、中国初のクリーンミートを開発した。孫宝国院士は昨年の「両会(全国人民代表大会と全国政治協商会議)」で「人工肉の研究開発への取り組み強化と健全な法体系の構築」を提案し、クリーンミート業界には巨大な発展潜在力があるとの認識を示した。

創業チームの経歴について触れると、楊CEOは米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)で管理コンサルティング顧問の経験を持つ。CTOのZi Ying Tan氏は幹細胞生物学と再生医学の研究に従事してきた人物で、現在はクリーンミートの中核技術の開発などを担当している。企業戦略と市場開拓の担当責任者である劉然氏は農業関連を含むシリアルアントレプレナーで、国際機関や政治部門と協力してソーシャルイノベーション関連の研究などにも携わっている。

投資家の視点

Lever China Alternative Protein FundのパートナーであるNick Cooney氏は、世界に先駆けて植物由来の代替肉を開発した企業「ビヨンド・ミート(Beyond Meat)」およびクリーンミート企業のメンフィス・ミーツと「モサ・ミート(Mosa Meat)」のアーリー・インベスターである。同氏は「中国は今後、クリーンミートを現実のものとしてくれる重要な国だ。巨大な食肉消費市場があるだけではなく、中国には層の厚い科学研究力、イノベーションを果敢に行う資本市場、代替タンパク質を支援する政策があるからだ」と述べている。

Agronomicsは、クリーンミートの父と呼ばれるマーク・ポスト氏が創設したモサ・ミートやエビ培養肉を開発するシンガポールのスタートアップ「シオック・ミーツ(Shiok Meat)」、米国の培養魚肉製造スタートアップ「ブルー・ナル(BlueNalu)」など多くのクリーンミート関連企業への投資に参入している。同社会長ののRicard Reed氏は「シンガポールが世界で初めてクリーンミート製品を承認したことを大変うれしく思う。CellXも最前線に立ち、中国のクリーンミート業界のイノベーションを推し進めていくと信じている」と述べた。
(翻訳:lumu)

 

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