中国EV「バイトン」、フォックスコンと提携 新興自動車競争で生き残りを目指す

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中国新興電気自動車(EV)メーカー「バイトン(BYTON、拜騰)」は1月4日、電子機器受託製造大手「フォックスコン(Foxconn Technology Group、富士康科技集団)」および南京経済技術開発区と戦略的提携に関する枠組み協定を締結し、2022年第1四半期にも同社初の電気SUV「M-Byte」の市販モデルを量産する計画だと明らかにした。

これにより、バイトンが新たな投資を獲得してM-Byteの量産を実現し、新興自動車メーカー間競争の最前線に復帰する可能性が出てきた。

バイトンとフォックスコンおよび南京経済技術開発区による戦略的提携に関する枠組み協定

フォックスコンEV事業参入への布石

資金繰りに苦しんでいたバイトンにとって、今回の提携が事業存続の命綱になることは間違いないが、フォックスコンにとってもEV事業参入に向けた重要なステップになる。

フォックスコンの親会社「鴻海精密工業(Hon Hai Precision Industry)」は昨年、欧米自動車大手「フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)」との合弁会社を設立し、中国でEVを開発・製造する計画を明らかにしていた。バイトンとの提携はEV事業における新たな布石となる。

そもそもバイトンの前身「Future Mobility Corporation(FMC)」は2017年、フォックスコンが高級車ディーラー「和諧汽車(China Harmony New Energy Auto)」およびテンセント(騰訊控股)と共に設立した新会社「和諧富騰(Future Mobility Corporation)」からインキュベートされた企業だった。今回の提携は、これまで株主としてバイトンを支えていたフォックスコンが、表舞台に立ってバイトンと協力する姿勢を明らかにしたとみることもできる。

今回の提携で、フォックスコンは先進的な製造技術に関する専門知識と運営・管理の経験を提供すると同時に、バイトンと産業リソースを共有しながらM-Byteの量産を支援する方針を示している。

M-Byte

バイトンの公式発表によると、同社南京工場はすでに竣工し、生産設備の設置や試験調整も完了している。また、昨年上半期には同社初の量産試作車がラインオフし、安全性試験を完了。6月には新エネルギー車(NEV)の生産許可証を取得している。

バイトン南京工場

バイトン復活に向けて

バイトンは中国新興自動車メーカーの中でも比較的早い時期、2017年に設立された。2016年から18年にかけてはプレシリーズA、シリーズA、シリーズBと資金調達を重ね、総調達額は7億4千万ドル(約770億円)に達した。18年1月に米ラスベガスで開催された世界最大のデジタル技術見本市「CES」で発表したM-Byteのコンセプトモデルは、ダッシュボードに搭載した50インチ(市販モデルは48インチ)の大型ディスプレーなどで注目を浴びた。

M-Byte(市販モデル)の内装

しかし、その直後からバイトンの苦難の道は始まっていた。まず、資金繰りに問題が発生した。シリーズCでの資金調達も目論見どおり進まなかった。さらに、昨年7月1日には中国事業の一時停止を余儀なくされた。

だが現在、状況は変わった。今回の戦略的提携発表に先立ち、バイトンとフォックスコンが資金調達について協議を進めており、フォックスコンが2億ドル(約200億円)の投資を計画しているとの報道もある。フォックスコンは、バイトンが2022年第1四半期までにM-Byteの大規模生産を実現することを投資条件に挙げているという。

いずれにせよ、フォックスコンと南京経済技術開発区が差し伸べた救いの手が、苦境に喘ぐバイトンの命綱になるのは間違いない。

加速する新興自動車メーカーの生存競争

2020年は新型コロナ禍により新興自動車メーカーの生存競争が加速した。米テスラ(Tesla)や中国の「上海蔚来汽車(NIO)」「威馬汽車(WM Motor)」「小鵬汽車(Xpeng Motors)」「理想汽車(Li Auto)」などが軒並み業績好調を維持する一方、バイトンをはじめその他のメーカーは死活問題に直面することになった。

中国におけるNEVの創成期には、通常では考えられないほど多くの新興自動車メーカーが誕生したが、現在進行する業界再編で生き残りに成功したメーカーこそが、今後も存続していく可能性が高いと考えてよいだろう。

作者:「車東西」(ID:chedongxi)、六毛
(翻訳・田村広子)


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