Facebookが中国へ再進出?その狙いと見通し – 東雲匡志

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Facebookが中国へ再進出?その狙いと見通し – 東雲匡志

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Googleが中国へ再進出するかもしれない、というニュースが話題である。あまり日本では話題にならなかったが、もう1つ再進出を狙うアメリカ企業がある。Facebookである。

中国の特殊なネット環境について

まず簡単に中国の特殊なネット事情について触れておきたい。中国からはGoogle系、Facebook系のサービスは一切アクセスができない。検索エンジンとしてのGoogle、動画サイトYouTube、SNSとしてのGoogle+、Facebook、Instagram、chatとしてのWhatsAppは使えない。またTwitterもアクセスができない。

その代替として中国国産のサービスが数多く存在する。検索エンジンなら百度(バイドゥ)や360捜索(360サーチ)、神馬(シェンマ)。動画サイトであれば優酷(ヨウク)、土豆(トゥードウ)、愛奇芸(アイチーイー)、騰訊視頻(テンセントビデオ)。SNSではFacebook、WhatsAppやInstagramの代替として微信(ウィーチャット)。Twitterの代替として微博(ウェイボー)が存在する。

※微信は厳密には色々な機能を内包しているので、一概に代替サービスとは言えない。

整理すると以下のようなイメージだ。

中国は人口も経済規模も大きいため、中国人だけに向けたサービスでもスケールし、上場できるWebサービスになりうる。

Facebookと中国のこれまで

さて、Facebookが中国へ進出するニュースが出るのはこれが初めてではない。

・2005年3月
.cnのドメインを取得

※中国版Whois検索結果画面。2005年3月4日に取得している。

・2008年6月
簡体字版のページをローンチ

・2011年4月
DCCIインターネットデータセンターの胡延平(フー・イエンピン)総経理がFacebookが正式に中国へ進出協議書にサインをしたと発表。

*この時も「進出までにはまだまだ壁がある」と記述されている。

※2011年4月11日の網易新聞のニュース記事

・2016年1月
国家インターネットインフォーメーションオフィス副主任がFacebookのVaughan Smith(経歴は副総裁と記載されている)と面会。

*具体的な協議内容は明かされていない。

といった内容が中国版Wikipedia「百度百科」に記載されていた。

また他にも清華大学(北京にある大学。北京大学を東京大学とすると、清華大学は一橋大学のようなもの)の経営学院が主催するビジネスコンテストにおいて、Facebookがサポーターしている記事を清華大学のドメイン内で見つけた。

※清華大学のHPより

Facebookと中国は一定の距離はおきつつも歩み寄りを試みていたというのが、これまでの流れだと考える。

そして

・2018年7月
中国杭州にFacebookがイノベーションセンターの会社を設立、というニュースが流れる。記事によると、2018年7月18日、浙江省杭州市に香港Facebookの100%出資で、”脸书科技(杭州)有限公司”を設立。資本金は300万元(約4850万円)だそうだ。ちなみに脸は顔でFace、书は書でbook、なのでFacebookをそのまま漢字にしている。

しかし、一度登記されたこの会社は7月25日には登記自体が削除されてしまっている。どこかでコミュニケーション行き違いがあり一旦登記されてしまったが、即刻、削除されてしまったのかもしれない。

Facebookの狙い

Facebookは上場会社であり、マーケットから急成長を期待されている。実際、FacebookのIR資料を見てみると、15年Q4の月間アクティブユーザーが約16億人から17年Q4には21億人と33%も伸ばしており、まさに急成長をしている。

※Facebook社のIR資料から抜粋

ここで各エリアにおけるFacebookの普及率を見てみたい。若干の時間のズレはあるが、総務省統計局によると世界の人口は2001年時点で約61億人。ヨーロッパエリアの総人口7.3億人。上のIR情報と見比べるとヨーロッパエリアのFacebookユーザーは3.7億人なので、普及率はほぼ50%。同じく北アメリカの総人口は3.2億人で、Facebookユーザーは2.4億人なので普及率は75%にも達している。

最後にアジアを見てみると、総人口は37.2億人。同地域のFacebookユーザーは8.3億人なので、普及率はたった22%。この数字だけを見ても迷わずアジアに成長の伸びしろがあることがわかるし、世界1位の人口規模で世界2位の経済規模をほこる中国へ積極的に展開を考えるのは至極当然だと思われる。

出典:統計局ホームページ/国勢調査トピックス No.7

Facebookの見通し

Facebookは最終的には中国の顧客を取り込みたいと考えているはずだが、SNSサービスを中国で展開し、成功を勝ち取るのはかなり難しいと考える。

理由は2つで、1つは規制、もう1つは競合環境だ。

まず規制についてだが、Facebook側も積極的にアプローチをしているにも関わらず、未だ会社設立もできていない。多分、この規制はこの2,3年で変わるようなことは無い。Facebookは本丸であるSNSサービスをこれからもローンチさせることはできないと思う。

もう1つの競合についてだが、万が一SNSサービスを中国においてローンチできたとしても、成功できる可能性はゼロだと考える。

もう一度、代替サービスのまとめを見ていただきたい。

・友人どうしでつながる(Facebook)

・イケてる写真をアップする(Instagram)

・チャットする(WhatsApp)

は全てWechatの中で完結する。

更にWechatではコンビニでの買い物代金や電気代を支払いできたり、クレジットカードの返済ができたり、地下鉄に乗れたり、Facebookには無い機能が満載で、既に中国人の生活の中に深く深く入り込んでいる。もしかするとマーク・ザッカーバーグには別のアイデアがあるのかもしれないが、個人的には中国の個人に提供するSNSサービスにおいて、今からどうあがいてもFacebookがWechatに追いつく可能性はゼロだと考える。

あえて「個人に提供するSNSサービスにおいて」と書いたのには、意味がある。Facebookの収入は広告から成り立っている。これから中国企業は世界中の市場にどんどん進出していくだろう。そんな時、自社の製品を知ってもらうためにはデジタルを使った施策は外せない。中国企業がマーケティングのためにFacebookを広告主として活用するケースは、すでにあるだろうし、これから増えてくると思う。

だからFacebookは中国の個人ユーザーを取るチャンスは一生無いけれど、中国企業のマネーは獲得できると思う。

東雲匡志 Author
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東雲匡志(しののめまさし) 1983年大阪生まれ。2010年8月~17年4月、上海で広告の仕事に従事。同年5月に日本へ帰国。中国×金融×マーケティングを通じて、自己研鑽を重ねる。 ブログ「中国と日本ではたらき自由を目指すビジネスマン」(http://www.china-b-japan.org/)を運営。
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東雲匡志(しののめまさし) 1983年大阪生まれ。2010年8月~17年4月、上海で広告の仕事に従事。同年5月に日本へ帰国。中国×金融×マーケティングを通じて、自己研鑽を重ねる。 ブログ「中国と日本ではたらき自由を目指すビジネスマン」(http://www.china-b-japan.org/)を運営。
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