バイドゥCOOからYコンビネータへ 中国のプロ経営者、陸奇氏のミッション(上)

マイクロソフト幹部を経て、百度(バイドゥ)のCOOも務めた中国の著名なプロ経営者陸奇氏が8月、米ベンチャーキャピタルのYコンビネータ(以下YC)中国拠点のCEOに就任した。

36Krは陸奇氏がなぜYCを新天地に選んだのかや今後のミッションについて、同氏にインタビューした。

熟考した結果、YCが唯一の選択肢だった

陸奇:私は「天の時、地の利、人の和」に沿って物事を決めます。古代の人の知恵は本当に役立ちます。全ての要素を考慮した結果、YCが、唯一の選択肢でした。

一つ目の「天の時」は、自分がもうすぐ57歳になることです。

これからの5年、10年で何ができるかを考えたとき、大企業で大規模なハードワークは、もう自分には合わないと感じました。

二つ目の「天の時」は、今まさに大規模な技術革新の前夜にいるということです、興奮しますね。

中国と米国が共同で育む新たなラウンドの技術革新が、グローバルな工業や社会に革命をもたらそうとしています。だから、新たなシステムと環境を作り出して、この挑戦を受け止めなければなりません。イノベーションの揺りかごは初期のエコシステムであり、資本投資、人材開発、科学研究、機会の創造という4つの面において、全面的な改革が急務だと考えています。

新たな制度や新たなマッチングが試され、生み出される必要があります。とりわけ太平洋を超えた協力関係です。

三つ目の「天の時」は、中国が新たなエコシステムを今まさに必要としていることです。
過去の十数年、中国はビジネスモデルやユーザーエクスペリエンスにおけるイノベーションを非常にうまくやってきました、でも真に大きな変革をもたらせるかどうかは、やはり技術のイノベーションにかかっています。前者二つのイノベーションの余地がより狭まる中、中国は新たな社会の進歩をもたらす、大規模な技術革新を極めて必要としています。

「天の時」に加え「地の利」があり、家庭という要素もあるため、中国と米国を行き来できる仕事が必要でした、両方の土地にいる家族とより多くの時間を過ごすためです。

「人の和」という点では、1998年にヤフーにいた時、後のYCファウンダーPaul Graham(ポール・グレアム) と共に働きました。

2005年、彼が第1期YCサマーキャンプを開催したとき、わたしはヤフー代表として参加し、現YC CEOのSam Altman(サム・アルトマン)に出会いました。

あの頃、私はYCのやり方をとても気に入っていたので、後にマイクロソフトでYCのモデルに倣ったBing Fund を設立し、それがその後マイクロソフトベンチャーズ(後にM12に改称)に発展しました。そのときSamと沢山沢山話して、互いの理念や心情がぴったり合っていることに気づきました。

私は、筋道立てて決定するのが好きですので、何か一つの要素だけが最終決定に影響するということはありません。

全ての要素、価値観、理想で大きなフィルターをつくり、そこから出てきたものこそ最も後悔しない選択です。フィルターの条件が厳しければ厳しいほど、出てくる選択も少なくなります。

「天の時、地の利、人の和」に加えて、自分のこれまでの経験を生かせる以上の仕事がしたいと思います、つまり毎日新たな学びがある仕事です。何も学べなければ、面白くないですね。そして、社会に貢献できること、できれば永遠に貢献できることを望んでいます。

データは新時代の生産資本

36Kr:あなたがおっしゃる「技術革新が育てる世界」とはどんなものですか?

陸奇:人工知能(AI)技術がもたらす新たな基盤とプラットフォームです。まず、自働化システム、つまり自ら目標を定め働く自動システムが全ての業界に変革をもたらします;無人自動運転はその最初の応用にすぎません。この技術は、新たな生産力の核心基盤となり、グローバルに応用できるものです。

次に、ナチュラルランゲージ・インタラクション技術が新たなアルゴリズム・プラットフォームを生みます。人にとって、最も自然なインタラクションは言葉と視覚によるものですから、成熟したナチュラルランゲージ・インタラクション技術は、「どこでもアシスタント」を生み出すでしょう。この事も社会をいっそう平等にします。以前はお金のある人しかアシスタントを雇えませんでしたが、これからは誰でも「アシスタント」に助けてもらえます。
この「アシスタント」は読み、書き、「どこでもいる」ものとなり、このプラットフォームが拡張すれば、衣食住だけでなく、教育さえ「アシスタント」してくれます。もちろん、実現にはまだ時間がかかりますが。

最後に、AI技術は、科学研究の分野でも大きな影響力を及ぼします。間もなく「科学のルネサンス」を迎えると考えています。AI技術によって、いっそう多くのクロスボーダーな研究、応用が可能になるからです。

YCでやりたいのは、こういうビジョンをできるだけ早く、特に中国で実現させることです。中国は人口も工業も多く、人が多いことはデータが多いことを意味します。これがAI技術革命と、これまでの技術革命の大きく異なる点です。

今回の革命は、人間の知識をコードに落とし込めばいいというものではありません。例えば、人間の対話を聴き取れるシステムを開発したいという場合、あなたに全世界で最もスマートな人を、または100万人のエンジニアを委ねたとしても開発できません。なぜなら、まず2万時間以上のタギングに加え、方言のタギングにさらに何千時間も要するからです。

データは新時代の生産資本です、それは農業時代の土地こそが重要資本であったのと同じです。人がいくらスマートであったとしても、土地がなければダメです。中国は人口が多いだけでなく、言語が統一された市場であるため、実験の機会が多く、フィードバックの速度もいっそう速くなります。それで、中国はAI技術の発展において構造的優位にあると思います。

インタビュー(中)に続く。

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