AIとブロックチェーンは世界をより良いものにできる…中国のプロ経営者、陸奇氏のミッション(中)
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マイクロソフト幹部を経て、百度(バイドゥ)のCOOも務めた中国の著名なプロ経営者陸奇氏が8月、米ベンチャーキャピタルのYコンビネータ(以下YC)中国拠点のCEOに就任した。
36Krは陸奇氏がなぜYCを新天地に選んだのかや今後のミッションについて、同氏にインタビューした。
ユーザーがサポートしたい企業にデータを提供
36Kr:AI技術の核心駆動力はデータだとおっしゃいました。大企業が膨大なデータを掌握し、ベンチャーにとっては参入の敷居は高くなるばかりです、どうしたらよいでしょうか?
陸奇:実際のところ、どうすれば安全な、保護を受けた状態でのデータをシェアできるか、ずっと考えてきました。起業家を助ける、よりオープンなデータプラットフォームを構築することが必要です。十数年前に登場したクラウド・コンピューティングのように、起業の敷居を下げるものとなるでしょう。
個人のデータが個人に属し、本人がどの状況で、どんな目的で、どの企業にデータの使用を許すかを決められるデータエコシステムができることを希望しています。例えば、ユーザーが教育熱心で教育関係のベンチャーをサポートしたいなら、自分のデータをその企業に提供できる、というような使い方が考えられます。YCでこの点も探っていきたいです。

36Kr:ブロックチェーンについての考えもお聞きしたいです。一部のブロックチェーン理想主義者は、ユーザーが個人データから収益を得られるよう、IDを基盤とするエコシステムの構築の可能性を探っています。
陸奇:ブロックチェーン技術は長期的な利益があると見ています。その特性は多くの利益をもたらします。具体的には以下のような恩恵です。
1.プライバシーとデータの保護
2.イノベーションに新たなモチベーション・メカニズムをもたらします。既存のモチベーション・メカニズムは、例えばストックオプションのように財務面のものが多いですが、ブロックチェーン技術はモチベーション・メカニズムに多様なイノベーションをもたらすでしょう。
3.より長期的にみると、デジタルな形で、ユーザーが相互に信用度を評価できるようになるでしょう。
研究開発を組織的に支援する体制をつくりたい
36Kr:技術革新を速めたいという切実な願いを感じます。グーグルやアマゾンといった企業であっても、研究開発への投資は全く足りていないと思われますか?
陸奇:足りていませんね。まず、例えばですが、現在のAI技術で新たな形態の病院をつくれます。その病院でAIは医師、看護士、患者をさまざまな面でサポートします。
次に、今、社会の発展に益している技術の多くは20―30年前にアメリカの大学でされた研究の成果です。社会発展に貢献する技術革新の初期には長期的な科学研究の投資が必要であり、現在は全く追いついていません。
また、最も重要な点として、研究開発投資から誰が恩恵を受けるか?という問いを考えなければなりません。それは、起業に成功した人、次に、投資した人であるべきです。でも今のところ、研究開発投資は体系化されておらず、アメリカ政府の税収からの支出に頼っています。でもわたしはYCでもっと多くの受益者が関わるようにしたいと思っています。
多くの投資家との交流の中で、彼らが科学研究への投資をしたいと思っていることに気づきましたが、今のところ、それを効果的に組織している人はいません。このような環境の中で、同じ考えを持つ人と共に、利益を投資と結び合わせることができると思っています。

36Kr:つまり、政府の税収に頼った科学研究投資では足りない、ということですね?
陸奇:税収に関する政策についてはあまり理解していないのですが、より多くの資金を科学研究投資に当てられたら、それこそより良い世界になります。なぜかというと、真に世界を変えるイノベーティブな発明の多くは、好奇心や想像力が起点になったものです。大企業の研究開発はあくまで仕事です。それがダメというのではなく、好奇心や想像力が原動力の科学研究が多くなればもっといい、ということです。
AI用いて格差を縮めるイノベーション
36Kr:技術が平等をもたらすとおっしゃいましたが、この点も議論があると思います、実際のところ、過去100年の技術発展は貧富の格差を広げました。AI技術がもたらす平等について、どうお考えですか?
陸奇:平等の促進はYC革新理念の一つです。YCは技術がイノベーションを加速させると信じてきましたが、それと同時に、イノベーションのもたらす成果が、全人類に、より広く、より公平にシェアされることを望んでいます。AI技術は利用できる一つのパワーにすぎず、それがどんな成果をもたらすかは社会の各方面でのイノベーションにかかっています。実際、YCアカデミーで研究していくのは全国民ベーシックインカムや全国民医療保険制度で、新技術と結びついたより良い制度を生み出せることを望んでいます。
インタビュー(下)に続く。