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シンガポール発のSaaS企業「智慧芽(PatSnap)」がシリーズEで3億ドル(約330億円)の資金調達を終えたことがわかった。「騰訊投資(Tencent Investment)」と「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2号(SVF2)」がリード・インベスターを、「中信産業基金(CPE)」がコ・インベスターを務めた。「セコイア・キャピタル・チャイナ(紅杉資本中国基金)」、「順為資本(Shunwei Capital)」、「祥峰投資(Vertex Ventures)」などの既存株主もサポートを続ける。財務顧問は「指数資本(Index Capital)」が単独で務める。
PatSnapは創業後、一貫して知的財産権とテクノロジーイノベーションサービスに特化してきた。創業者のJeffrey Tiong(張済徽)氏は、海外の知的財産権情報サービス産業は成熟しており、PatSnapがベンチマークとしている米国の「クラリベイト(Clarivate)」は、現在の評価価格が170億ドル(約1兆9000億円)に上るほどだと指摘する。一方、中国では知的財産権に対する市場の理解が時間の流れとともに変化しており、当初は特許(専利)が重視されなかった。しかし、現在は中国の研究開発費は世界2位となり、企業自体または国家レベルの方針において、中国では「イノベーション」が極めて重要な戦略的内容とされている。現在、世界のイノベーション管理ソフトウエア市場はすでに1000億ドル(約11兆円)規模を超えている。
PatSnapの発展の歩み
▪2007年~13年は、主に教育市場で自社製品と市場のマッチポイントを探り、データの蓄積や製品のブラッシュアップをする段階だった。
▪2013年7月、市場と製品のマッチポイントが見つかり、同社は急成長期に入る。13年~18年は、知的財産権情報化のエンド・ツー・エンドサービスにおいて、販売チームを立ち上げ、市場の拡大を図る段階だった。この期間の成長率は毎年100%以上を維持していた。
▪2018年以降、PatSnapは次の発展段階に進むための模索を開始した。特許情報だけでは企業の研究開発やイノベーションに関する意志決定のニーズを満たせず、企業はテクノロジーイノベーション分野のビジネス情報を求めていることが分かったことが背景となった。自動車メーカーは、競合他社の開発情報だけでなく、アップルや小米(シャオミ)などの業界を超えたイノベーション情報を求めていることに気づいたのだ。
発展の第一段階では、エンド・ツー・エンドの知的財産権情報化サービスソリューションに注力した。この事業が、グローバル事業における総売上の70%を占め、中国事業では総売上の90%を占めている。主な事業内容は、以下の三つだ。
1.グローバル特許データベース。特に特許に関わる語彙は業界ごとに異なるため、関連するナレッジグラフの構築は容易なものではない。PatSnapは自社にNLP研究開発人員を抱える他、社外チームと協働する形も取り入れている。
2.特許およびイノベーションフローに関する管理ツール。発想段階から会社の承認、特許出願、知的財産権保護などに至るすべての管理を行う。同システムは企業内の各業務システムとの接続もサポートしている。例えば、中国家電大手のハイアール(Haier)は世界中の知的財産権を統一管理している。アイデアが生まれると、技術、市場、販売などの各部門で総合的な評価が行われるが、その際にはシステムのサポートが不可欠だ。PatSnapは、さまざまな国と地域向けに、多言語バージョンも用意している。
3.ユーザーが求める付加価値サービス。知的財産権に関する人材育成プラットフォーム「智慧芽学院」や、ユーザーごとにカスタマイズされたコンサルティングサービスなどが含まれる。
第二の発展段階では、テクノロジーイノベーション情報に注力した。第一段階で手掛けていた特許情報だけでなく、第二段階では論文や定期刊行物、科学技術関連ニュース、財務データなどより多くのデータソースを加えた。、さらに、データのスクリーニングと情報処理、リンケージを行い、企業に科学技術関連の最新情報を提供している。共同創業者の関典氏は、データソースを増やすことは簡単そうに見えるが、技術的にはデータのマイニングとリンケージに関する難易度は幾何級数的に高まるとの認識を示した。
現在、PatSnapは世界のテクノロジーイノベーション情報の他に、バイオ医薬分野に特化したデータベースも構築している。2020年、PatSnapの世界での売上高は数億元(数十億元)、世界での提携企業は1万社を超えている。総売上高の90%がSaaSによるものだという。現在の粗利益は90%前後を維持し、大・中規模ユーザーの契約更新率も90%を超えている。
PatSnapが現在のような成長を成し遂げた背後には以下のような強みがある。
一つ目がデータ集積。116の国と地域の特許をカバーし、1億5000万件を超える特許データ、1億7000万件の化学構造データ、400万本の科学技術関連文献を有している。
二つ目が人工知能(AI)による「タグ付け」能力。極めて高いデータスクリーニング能力と情報処理能力を有し、AI&ニューラルネットワークの機械学習能力やAPI、SSOなどのサポートを通じ、企業内外のシステム集積能力を実現している。
三つ目がエコシステムでの提携能力。外部の製品や技術、テクノロジーコンサルティングを手掛ける企業と提携し、ユーザーにサービスを提供している。
(翻訳:lumu)
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