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米上場目前のネット配車最大手「DiDi(滴滴)」、EV製造に本格参入へ

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中国ネット配車サービス最大手の「滴滴出行(DiDi Chuxing)」(以下、滴滴)が、電気自動車(EV)製造に本格的に乗り出したことが明らかになった。

滴滴は現在、EV完成車の開発・製造部門の立ち上げを進めている。プロジェクトの総責任者には、同社傘下の自動車サービスプラットフォーム「小桔車服(Xiaoju Automobile Solutions)」の元副総経理で、現在は同社副総裁を務める楊峻氏を据えた。楊氏は、同社とEVメーカー「比亜迪(BYD)」が共同開発した配車サービス専用EV「D1」の最高製品責任者(CPO)も務めている。

BYDと共同開発したネット配車専用EV「D1」

同部門へは、すでに滴滴の社員多数が転属したとみられる。また、ある関係者は「すでにほぼ事業を停止した『理想汽車(Li Auto)』との合資会社『北京桔電出行科技(ORANGE-E MOBILITY)』の社員多数も、先ごろ同部門に異動した。同部門の最高技術責任者(CTO)や技術およびプロジェクト関係の管理職は現在募集中だ」と述べている。

程維CEOは「滴滴は今後も完成車の製造を手掛けることはない」との前言を翻したことになる。とはいえ、小米(シャオミ)や百度(バイドゥ)のように突然とも言える形でEV製造に参入したIT大手と違い、今回の滴滴の動きは想定の範囲内だった。

滴滴は2018年、完成車製造や部品製造、新エネルギー、デジタル地図、コネクテッドカーなどを手掛ける企業31社が参加する企業連合「洪流​連盟(Dアライアンス)」を立ち上げた。その際、程CEOは「オープンイノベーションがDアライアンスの中心的な価値観となる。滴滴は今後も完成車の製造を手掛けることはない」と発言し、協業に向けて敵を作ることのない誠実な姿勢を見せていた。滴滴はその後、設備投資を増やすとともに、自動車メーカーとの関係も強化していった。

滴滴は配車プラットフォーム最大手として、大量の車両を自社所有する必要があった。

滴滴は長い間、レンタカー運営会社と提携してきたが、会社の質がまちまちで管理が難しい上、同社が得られるのは手数料だけで、配車による収益の大部分は運営会社に渡っていた。滴滴は2019年下半期から、徐々にレンタカー運営会社の性質を強めるなどの動きを見せていた。振り返れば、現在進めているEVの大規模生産に向けての下準備だったという見方もできる。

滴滴は「自動車資産管理センター」という部署を設けている。責任者はD1のCPO、楊氏だ。滴滴の完成車製造計画が広く知られるようになれば、運転手の抱え込みが進む。車両の利用から整備、給油、配車受注、保険などの手続きが滴滴のプラットフォームだけで済ませられるようになるからだ。

程CEOの計画では、今後10年でDアライアンス参画企業と共にカーシェアリングに関するプラットフォームを構築し、1000万台以上の新エネルギー車(NEV)を利用できるようにするとしている。この規模が達成できれば、滴滴は中国で最も多く自動車を購入する企業の一つにになるだろう。

だが、そのためには高い購入費用を支出し続けなければならない。その上、製造費用についても、技術面についても滴滴に決定権はない。滴滴が潤沢な資金を背景に、完成車を自社製造したほうが合理的だと考えたのも無理はない。

滴滴に投資する王剛氏が以前メディアの前で語ったセリフ「顧客はC2Cにおける規模的強みとB2Cにおける品質保証の双方を求めている。あなたがそれを実行しなくても必ず誰かが実行する」は、現在の業界の状況を言い当てていた。

昨年末、BYDとの共同開発によるD1を発表したことは、完成車製造に向けた突破口となった。D1は世界初の配車サービス専用EVで、滴滴がデータと技術の一部を提供し、BYDが製造を請け負った。

滴滴にとってD1の存在は大きい。昨年11月16日に開かれたD1の発表会には、程CEOと同社総裁の柳青氏が揃って登壇した。2人同時に公開の場に姿を現したのは、2019年7月に開かれた同社のライドシェアサービス再開に関する記者会見以来だった。

配車サービス専用EVの開発を手掛けたのは滴滴が初めてではなく、「曹操出行(Caocao Chuxing)」や「T3出行(T3 Mobility)」など大手自動車メーカーの支援を受けるネット配車サービス企業も専用車種の開発を試みていた。しかし、大量生産には至らず、結果的に滴滴が最初に量産を実現することとなった。

昨年末のD1の発表後、ある情報筋は「実はD1の開発期間中、程CEOはEV開発に関する調査チームを派遣するとともに、EV開発に関する非公開会議を複数回開いていた」と明かし、滴滴がEVの開発と製造に乗り出すのは間違いないとの見方を示していた。

詳細は未確認だが、D1の共同開発に滴滴がかけたコストは少なくなかったにもかかわらず、発言権は極めて小さかったようだ。このことが、滴滴がEVの自社製造を急ぐ直接的な原因の一つになったとみられる。

滴滴は現在進めているEV製造事業において、ソフトウエアとハードウエアの全てを自社で設計・開発し、製造は自動車メーカーに委託する方針のようだ。情報筋によると、BYDも依然として委託先の一つとして検討されているという。

滴滴が交通部門の取り締まりを避け、順調な運営をするためには、新たに開発したEVをネット配車に関する新政策に完全に合致させる必要がある上、運転手にもより高い条件を求めなければならない。

いずれにせよ、米上場を間近に控える滴滴がEV製造に乗り出したのは必然の流れだろう。新タイプの配送サービス「跑腿(使い走り)」や貨物輸送、住宅地向け共同購入サービスなどの新事業を手掛けてきたが、EV製造への参入が資本市場を最も沸かせることになるだろう。

(翻訳・田村広子)

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