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欧米市場に進出することは中国の自動車メーカーの長年の夢だったが、製品力の不足などで、これまで完成車の輸出先は東南アジア、中東、ロシア、南米、アフリカが中心だった。
しかし、ここ数年の新興EVメーカーの台頭で、風向きが変わり始めた。中国自動車工業協会の集計によると、2020年の中国の自動車総輸出台数は前年比2.9%減の99.5万台だったが、新エネルギー車の輸出台数は前年比89%増の7万台弱となったのである。内訳はEVが4.4万台、プラグインハイブリッド車が2.6万台で、輸出先にはノルウェーのような西欧の国が含まれている。なぜこのような変化が生じたのだろうか。
ノルウェーを突破口として
人口530万人のノルウェーは世界有数の産油国だが、EVの普及に最も注力している国の一つでもあり、同国では2025年までに内燃機関車の新車販売を全面的に禁止する予定だ。現地機関の集計によると、2020年にノルウェーで販売された新車のうち、EVが54.3%を占めており、世界初のEV販売が5割超えの国となった。
EVを支える公共政策も豊富だ。EVは輸入税、取得税などが免除され、道路通行料が無料になる。内燃機関車が走行できないバス専用レーンも走行できるようにしている。また、ノルウェーの人口あたりの充電スタンドの台数も欧州最多であり、EVを使っても不便と感じることがないようになっている。
そんなノルウェーに輸出する中国の新エネルギー車には、「蔚来(NIO)」、「小鵬(Xpeng)」、BYD、「上海汽車(SAIC Motor)」傘下のMGなどがある。彼らにとって、ノルウェーは終着駅ではなく、より広い欧州市場へ進軍するための突破口だ。2020年の欧州市場の新エネルギー車の販売台数は前年比137%増の136.5万台となり、中国の124.6万台を上回り、欧州は世界最大の新エネルギー車市場となった。新エネルギー車は新車販売の11%を占め、うちEVが6.2%、プラグインハイブリッド車が4.8%となっている。
国別で見ると、新エネルギー車の三大市場は独、英、仏で、三カ国合わせて前年比211%増の75.6万台が販売された。中国の新興EVメーカーはこれらの国をターゲットとしている。
様々な課題
これまで、「奇瑞(Chery Automobile)」、上海汽車、「吉利(Geely)」、BYDなどが積極的に海外進出を模索してきたが、欧州で安定した地位を築くには至らなかった。最大の理由は製品力だ。十数年前まで中国車の品質は確かに不十分で、「安かろう悪かろう」というイメージがつきまとっていた。
しかし、今の中国の自動車メーカーの技術、生産体制、品質管理能力は飛躍的に進歩している。自動車産業のコンサルティング会社「J.D. Power」が発表した2020年中国新エネルギー車顧客体験レポートによれば、EVのなかで品質評価トップは蔚来で、テスラが第2位、「長城汽車(Great Wall Motor)」の「ORA」が第3位となった。品質だけで言えば、欧州でも十分に戦えるだろう。
しかし、欧州で売上を伸ばすには、技術以外にも課題が山積する。業界に詳しい関係者によると、中国の自動車メーカーはデザイン、技術開発、スマート化は重要視するが、ブランディングは不十分だという。
そのことはノルウェーでの販売体制にも表れている。小鵬汽車、BYDは現地の代理店に委託しており、アフターサービスも現地任せだ。この手法ならたしかにリスクが低く、迅速に売上を伸ばすことはできるが、ブランドイメージが確立しにくくなる。メーカー自身がすべてを管理することができないため、アフターサービスの質や部品供給体制にも課題が残る。
それに対し、中国国内と同じ直営で販売する蔚来の試みは有意義だと言える。同社の李斌CEOは、すべての市場で同じビジネスモデルを採用し、自社でインフラを建設し、直営にこだわるとしている。
ほかにも、ローカライズという課題がある。欧州各国の税制度、新エネルギー車関連の政策や法令、規格などに不慣れな中国企業は、時間をかけて少しずつ研究、対応していくしかない。
世界的な自動車メーカーを多数擁する欧州は間違いなく重要な市場である。それだけに競争が激しく、一気に脚光を浴びる可能性もあれば、どん底に転落するリスクもある。しかし、中国の自動車メーカーがさらに成長するためには避けて通れない市場でもある。ここで成功して初めて、世界的な企業になれるのである。
原作者:「深響(WeChat ID:deep-echo)」 周永亮
(翻訳・小六)
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