ミード・ジョンソン、中華圏事業を22億ドルで売却。現地企業に

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「春華資本(Primavera Capital)」は5日、英大手健康・衛生用品メーカー「Reckitt Benckiser(レキットベンキーザー、以下レキット)」と、同社傘下の乳幼児向け食品メーカー「Mead Johnson Nutrition(ミード・ジョンソン・ニュートリション、以下ミード・ジョンソン)」大中華圏事業の買収に向け、最終契約を締結した。ミード・ジョンソンの公式サイトによると、取引額は22億ドル(約2400億円)。レキット側は株式の8%を保有し、残りの92%を春華資本が取得する。また、春華資本はミード・ジョンソンの大中華圏におけるブランドライセンスを永久的に保有することになる。

ミード・ジョンソンの大中華圏事業取得を計画していたのは中国乳製品大手「伊利集団(Yili Group)」をはじめ、中信資本(CITIC CAPITAL)、セコイア・キャピタル・チャイナ、ベインキャピタル、コールバーグ・クラビス・ロバーツと報じられていた。春華資本がミード・ジョンソンと交渉を開始したのは4月ごろで、入札書提出日の6日前となる今月5日に「勝利宣言」となった。

消費者向け小売り分野は春華資本が得意としてきた分野だ。レキットのLaxman NarasimhanCEOは、「中国の乳幼児向け栄養食品事業を充分に見直した結果、春華資本の傘下に入ることが最良の着地点と考えた」と述べている。

ミード・ジョンソンが買収されるのは過去4年で2回目だ。2017年にレキットから197億ドル(約2兆1600億円)で買収され、アジア太平洋地区での事業拡大が進んだ。しかし2018年にオランダ工場で粉ミルク製品の製造が止まり、供給が滞ったことを機に、業績は停滞が続いていた。

レキットの決算書から推算すると、ミード・ジョンソンの昨年の売上高は約7億5000万ポンド(約1200億円)。中国事業も横ばいで推移しているとみられる。レキットのCFOは2019年、「中国の粉ミルク市場は競争が厳しく、出生率が下がってきていることもあり、ミード・ジョンソンの成長は減速していくだろう」との見通しを語っている。

中国の粉ミルク市場では、2017年ごろから「飛鶴(FIRMUS)」「伊利(Yili)」「君楽宝(JUNLEBAO)」などローカルブランドの勢いが急速に増している。国産ブランドは販路で強みを持ち、三級・四級都市といった大きな地方市場を握っている。一方の海外ブランドは高度な開発力に優位性を持ち、一級・二級都市の大都市圏を主な市場としている。しかし、近年は国産ブランドの間でも成分配合、特許、高級化が共通テーマとなっており、製品開発に力を入れている。結果、一級・二級都市でもローカルブランドの人気が高まってきているのだ。

春華資本は外資企業の現地化支援に長けている。最も注目されたバイアウト案件は、ケンタッキー・フライド・チキンやピザハットなどを運営する大手外食企業「ヤム・チャイナ(百勝中国)」の案件だろう。ヤム・チャイナはその後ニューヨークで上場し、春華資本が経営管理や販路拡大、デジタルマーケティングなどを支援した。

春華資本からみたミード・ジョンソンは、世界最先端のイノベーション力や開発力を有し、厳格な安全・品質管理ができ、粉ミルクなどの主力ブランドが中国市場で持つ影響力も依然として強い。1000億元(約1兆7100億円)規模の中国粉ミルク市場において同社の成分開発力や品質は貴重な資産である。「国際的ブランドの運営に精通し、中国の消費市場や粉ミルク産業に深い知見を持つ機関が、ミード・ジョンソンの急速な現地化を支援する必要がある」。春華資本はこのような見解を示している。

ミドルステージからレイターステージに特化したPE(プライベート・エクイティ)ファンドとして、春華資本はこれまでにもアリババグループやTikTokのバイトダンス(字節跳動)、オンライン配車サービスのDiDi(滴滴出行)などスター企業に投資してきた。そしてPEファンドの実力が最も問われるのがバイアウト案件だ。春華資本は今年に入り、ミード・ジョンソン以外にもオンライン求人プラットフォーム「智聯招聘(Zhaopin)」の筆頭株主になっている。

近年は毎年のようにM&Aブームが期待されているが、仮に案件が続出するならば二種類のケースに集中するだろう。一つは、テック企業がM&Aを通じて事業ポートフォリオを補完し、研究・開発段階をショートカットするケース。もう一つはミード・ジョンソンのように大手PEが老舗企業のIT化やインテリジェント化を引き受け、価値の再発掘を行うケースだ。
(翻訳・愛玉)

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