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デジタル人民元は、中国の中央銀行である中国人民銀行が発行するデジタル通貨である。指定された事業者の参加のもと、一般向けに運用、償還されるもので、簡単に言えば紙幣や硬貨をデジタル化させたものである。デジタル人民元は現在流通している紙幣や硬貨と同様、一般的等価物として価値交換媒体の役割を果たす。
EC大手「京東(JD.com)」傘下で、デジタル人民元の試験運用に複数回参加してきた「京東科技(JDT)」の担当者によると、現時点でデジタル人民元の発行は人民銀が一元的に管理しており、流通にはいずれも国有銀行の「中国銀行(Bank of China)」、「中国農業銀行(Agricultural Bank of China)」、「中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of China)」、「中国建設銀行(China Construction Bank)」、「中国郵政儲蓄銀行(Postal Savings Bank of China)」、「交通銀行(Bank of Communications)」が指定事業者として参画している。
なぜ今デジタル人民元か
従来の現金には、印刷、製造、発行にコストがかかり、持ち運びが不便だという課題があった。それに対し、デジタル人民元は電子台帳によって管理され、実物が不要となり、コストを削減することができる。さらに、暗号化技術やブロックチェーン技術により、取引の匿名性と情報の改ざん耐性を高めることができるため、公正な取引を実現し、金融詐欺や不法取引を防ぐことが可能だ。
デジタル人民元の普及のための外部環境も整っている。アリペイ、WeChatペイは中国で広く使われており、特に大都市で暮らす若者はほとんど現金を使わなくなっている。近い将来、キャッシュレス社会が実現されるだろう。
海外を見ても、デジタル通貨の動きが顕著になってきていることがわかる。政府レベルでは米国、日本、カナダ、スウェーデンなどが政府主導の形でデジタル通貨の実証実験を行っている。民間企業ではFacebookのデジタル通貨「Libra」が注目され、各国政府がそれを脅威として捉えているほどだ。
そのため、金融アナリストの王蓬勃氏は、「中国が政府主導のデジタル人民元を発行することは、世界的なトレンドに順応し、自国の通貨主権を守るためのイノベーションだ」と評価する。
デジタル人民元と各種電子マネーの違い
デジタル人民元とアリペイ、WeChatペイなどの電子マネーの間には本質的な違いがある。デジタル人民元は法的に現金通貨と同等の位置付けとなり、いかなる電子マネーよりも高い地位にある。デジタル人民元を決済する手段さえ確保していれば、その使用を拒否することはできない。
両者の決済のプロセスも異なる。アリペイやWeChatペイは銀行口座と紐付けられ、取引情報は電子マネーを運営する事業者から銀行へと送信され、銀行間の決済システムで処理される。それに対し、デジタル人民元の情報は国の金融システムのなかに保存されているため、外部の事業者を経由する必要がなくなる。
さらに、デジタル人民元は営利を目的としないため、決済手数料を徴収しない。当然ながら、デジタル人民元はアリペイやWeChatペイに取って代わることを目標としておらず、両者が様々な形で協力することも考えられる。
試験運用の現状
中国は2020年4月からデジタル人民元の試験運用を深圳、蘇州、北京、成都の4都市で始めた。その後、同年10月に上海、海南、長沙、西安、青島、大連の6都市が追加された。
これらの都市では計8回のデジタル人民元試験運用が行われており、120万人以上の一般市民がそれに参加し、デジタル人民元での公共料金支払い、外食、公共交通、買い物などを体験したという。
(36Kr Japan編集部、翻訳・小六)
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