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毎年6月18日前後に行われる中国のECセール「618」で、女性用インナーのブランド各社が激しい戦いを繰り広げている。アリババ系ECモール「天猫(Tmall)」の集計によると、快適な付け心地が売りの新鋭ブランド「Ubras」がセール開始1日目で販売額1億元(約17億円)を突破してトップに立ったほか、「Bananain(蕉内)」や「Candy La Vie(奶糖派)」、「素肌良品(Sujiin)」など比較的新しいブランドが上位10位以内にランクインしている。
ベテラン勢の「愛慕(Aimer)」や「曼妮芬(Maniform)」なども健闘しているとはいえ、若手の猛烈なスタートダッシュに圧倒されるばかりだ。大手ブランドがにらみをきかせているように見えるインナーウエア市場で、新鋭ブランドがこれほど勢いに乗れたのはなぜなのか。
業界の構図を変えた「ノンワイヤーブラ」
2019年の「ダブルイレブン(独身の日)」セールでは、天猫のインナーウエア部門の売上高上位3社はユニクロなど中国人なら誰もが知っている大手ブランドが占めた。一方、Ubrasは2年前のこの時点で知名度はほとんどなかったが、現在では「ノンワイヤーブラ」「フリーサイズインナー」の代名詞となるほど広く周知されている。
ノンワイヤーブラ流行の兆しは少なくとも5~6年前から見え始めていたが、大手ブランドはいずれも真剣に受け止めてこなかった。愛慕は2015年に傘下のノンワイヤーブラのブランドを手放したほか、「都市麗人(Cosmo Lady)」はサプライチェーンの対応が追いつかず、2016年の売上高減少を招いた。
わずか一歩の遅れだが、後にその差は大きく開いていく。2018年に愛慕はノンワイヤーブラのブランド「乎兮(Huxi)」を打ち出すものの、大きな話題となることはなかった。
「ノンワイヤー革命」は数年続いたが、2020年のコロナ禍で「おうち時間」が増えたことにより、締め付けの少ないノンワイヤーブラが空前のブームを迎える。これを機に業界の再編が一気に進んだ。すでに上場している中国大手4社の2020年の業績を見ると、愛慕が売上高1.33%の微増となったほかは、曼妮芬、都市麗人、「安莉芳(Embryform)」いずれも売上高が減少しており、都市麗人と安莉芳は赤字となった。
大手が軒並み失速する中、新鋭ブランドはますます勢いを増していった。2020年のダブルイレブンに、設立4年のUbrasが天猫で数億元(数十億円)を売り上げ、見事インナーウエア部門のトップに輝いた。同じ時期に、Candy La Vieは年間売上高が前年比4倍以上に増加し、1億元(約17億円)の大台に乗った。2017年の製品発売から3年連続で100%の増加を実現しているBananainは、2020年のGMV(流通取引総額)が10億元(約170億円)を超えたと言われており、昨年11月の資金調達後は評価額が25億元(約430億円)に達した。
資本市場がこの勢いを見逃すはずがない。2019~2020年にかけて、2014年以降に設立されたインナーウエアのブランドのうち少なくとも8社が資金調達に成功している。
女性経済の台頭
日本のワコールが創業70年を超えているのに対し、中国の女性が現在のようなインナーウエアを身に着けるようになったのは、ここ40年足らずのことだ。
市場調査会社ユーロモニターの統計によると、2019年に中国のレディースインナー市場における上位5社の集中度はわずか9%だったという。同時期に他国市場での上位5社集中度は日本が66%、米国が58%、英国が19%だった。
つまりUbrasなどの新鋭ブランドが急速に勢力を拡大しているものの、レディースインナー市場の構図はいまだ固まっておらず、誰にとってもチャンスに満ちた状態と言える。
中国では女性の地位が向上し、購買力もますます高まっている。2017年には中国女性の労働参加率が米国と日本をわずかに上回る68.8%に達した。2008年以降、中国では女性のほうが高等教育や大学院教育を積極的に受けていることを示すデータもある。
これに伴いインナーウエアに対する女性の価値観も大きく変化する。男性目線で魅力的に見せることから、自分目線の快適性や自然体を重視するようになり、ブランドの多くもグラマラスなスタイルを強調するのではなく、それぞれの個性を前面に打ち出すようになった。
ニーズも多様化している。ホールド力の高いスポーツブラ、夏用の薄くて涼しいブラ、寄せ上げ機能、大きなバストをスリムに見せる機能など、ニーズの細分化が進むということは、それだけ市場全体も拡大しているということだ。恐らく今後も新たなブランドが続々と姿を現してくるに違いない。
作者:天下網商(WeChat ID:txws_txws)、王詩琪、編集:徐芸婷
(翻訳・畠中裕子)
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