放映回数引き延ばしで倍速再生する視聴者も。粗製乱造はびこる中国映像コンテンツ業界
中国の大手動画共有サイト優酷(Youku)の楊偉東総裁が記者発表会で、収益モデル転換の必要性について語った。楊総裁は、優酷が属するアリババ文化娯楽集団の輪番総裁も務めている。
映画やTVドラマなど映像コンテンツ制作に携わる上場企業の不振が続き、株価下落、資金難などを招いている状況について、楊総裁は、スターの起用や巨額資金投入といった従来の方法では根本的な解決には至らないとの見方を示した。中国きっての映画スタジオ「横店影視城」で現在制作が進行しているのは15本ほどで、前年の60本から大幅に減少しているという。
こうした不振の原因として、楊総裁は、優酷を含む動画共有サイト3大大手(アリババ系の優酷、テンセント系の騰訊視頻、バイドゥ系の愛奇芸)と衛星テレビ局数局による過当競争があると指摘する。プロデューサー、監督、脚本家などの人材不足、旧態依然とした制作体制、作品内容への過大な要求など複数の要素が折り重なり、佳作を数多く生み出すにはほど遠い状況だ。
結果、連続ドラマなどは1作品で70~80話というストーリー度外視の「引き延ばし」が横行している。単純に放映回数を増やせば、収益も増えるからだ。各社による粗製乱造がさらなる悪循環を生んでいる。
しかし、視聴者としては冗長なストーリー展開には長々とつきあっていられない。そこで最近、動画サイトが編み出したサービスが「倍速再生」だ。視聴者は0.5倍から2倍まで、自由に再生速度を設定できる。楊総裁は「こんなものはサービスでも何でもない。視聴者がこんな機能を喜んで使っているなら、それは作品に対する反感の表れだ」と見解を述べた。
ただし、作品の質に回帰すれば全ての問題が解決するわけではない。楊総裁は36Krの取材に、「優酷はコンテンツの品質向上に努めるが、大手3社間の競争はそれでも当面は続く。将来的には3社は異なる方向性へ進むのではないか」としている。
動画サイト3大手は現在も赤字続きだが、楊総裁は「問題はビジネススキームにある」と指摘した。従来のようにコンテンツ制作側から版権を買い付け、会費と広告収入でこれを賄うには、キラーコンテンツの版権料は高騰しすぎているからだ。
3社が共通して重視する打開策として楊総裁が挙げたのは「エコシステム」だ。エコシステムの整理やシナジー強化によってコンテンツ活用の掘り起こしやプラットフォームの運営改善を図ることは資金投入よりも重要で、「将来的に勝敗の分岐点になるだろう」と述べている。
「テクノロジーがエンターテイメントを変える」と強調する通り、優酷は自社で研究開発した人工知能(AI)「魚脳」によって脚本選定からキャスティング、宣伝戦略までを決定するほか、ユーザー個人の興味やTPOに沿ったコンテンツ提供を行っていく。
楊総裁はさらに、「映像コンテンツ公開後の派生展開が鍵になる」と強調する。海外マーケットでは、コンテンツに付随する関連商品が収益の3分の1を占める。そもそも独自の人気コンテンツに乏しい中国だが、コンテンツの派生展開についてはなおさら、成功モデルが存在しない。人気コンテンツのシリーズ化、異業種間でのクロスボーダー展開、イベントなどのオフライン展開、オンライン・オフライン一体のキャラクタービジネスまでを見据えたビジネススキームへの転換が望まれるものの、「ディズニーのような多角化コンテンツを展開したい」と表明している愛奇芸(iQiyi)でも、会費、広告以外の収入が2割に満たないのが現状だ。
(翻訳・愛玉)