年間〇冊、速読、多読…読書の目標設定が無意味な理由
「本を読む」という行為は、テクノロジーが発達した現代においても、極めて重要なものだと認識されている。どんなに時代が移ろっても読書の価値が薄れることはない。
しかし、多忙な生活で読書時間を捻出するのは至難の業だ。世の中には「速読」「飛ばし読み」のノウハウが多く出回っている。読書量が多いほど得るものが多いと大半の人が信じ、世の多くの成功者が多読を成功の秘訣としているからだ。
しかし、本当にそうだろうか?フォーム作成サービス「JotForm」の創業者Aytekin Tank氏は、多読を是とする説に異論を唱えている。以下に彼の持論を紹介する。
速読の真実
速読スキルを身に着けたいと願う人には残念な事実だが、人には速読は不可能だ。
視標追跡学を専門とするキース・レイナー教授によると、人の網膜には機能の限界があり、速読をすることはできない。ページ全体をひとつの文章の塊として一度に捉える、あるいは視線をZ型に素早く動かして文章を捉えるといった速読法は、生理的に不可能だと分かっている。また、RSVP法といって、一度に1単語だけを視界に入れ、それを高速で繰り返して読み進める方法がある。文字を追う眼の動きを止めることで、内容の理解力を高めるという理論だが、実際、我々は視線を動かしている最中に思考が停止するわけではない。
読む速度を上げること自体は不可能ではない。しかし速度を上げれば上げるほど、理解力は落ちていく。スピードに集中すると、推理、分析、批判、共感に割く大脳のリソースが減少する。複雑な情報を多面的にとらえ、理解することが不可能になるのだ。商品カタログを眺めるように読書したいというなら話は別だが、気づきや学びを得て、自分なりの観点に昇華したいと願うなら、速読は意味をなさない。
「年間100冊」の無意味
読むスピードや理解力には個人差がある。だから「年間100冊」といった無意味な数字に踊らされる必要はない。無理なく100冊読めるならそれもよいだろうが、速読術を身に着けてまで数字を達成することに意味はない。
なぜなら、世の中には読む価値のない本も山ほど存在する。数多く読めばいいというものではない。また、「価値ある本」の定義は人によってまったく異なる。乱読を重ねるより、自分にとって「刺さる」1冊を吟味したほうがいい。さらに、「必読の名作」と称される本なら、速読で読み飛ばしてしまうのはもったいない。身に沁みるまでじっくり、繰り返し読むべきだろう。
読書に数字や期限や目標を設定するのはつまらない。ましてそれが、社会共通のものである必要などまったくない。多くの成功者は多読家だと言われるが、彼らの成功の秘密は「数」にはない。彼らの豊かな好奇心や学習能力、実践力こそが成功の鍵なのだ。
なぜ読むのか?
読書は大別して3種類に分かれる。
1) 気ままな読書
フェイスブックやツイッターをチェックする、病院の待合室で雑誌をめくるといった行為と同じ類の、時間つぶしの読書。
2) 学びの読書
特定の何かを知りたい、学びたい場合の読書。あらかじめ目的があって本を選び、読むということだ。
3) 楽しむ読書
「楽しむ」と言っても、小説や雑誌に限定しない。日常から逃避する行為とも限らない。コラムや伝記などジャンルは問わず、ただ読みたいから読む読書だ。
最後に挙げた「楽しむ読書」をすると、時には寝食を忘れるほど夢中になることもあるだろう。それは義務感からする読書とは一線を画する世界だ。こうした読書を通じて、我々は多くの語彙や情報を獲得し、自身の価値観や内面を高め、視野を広げるのだ。そこにはスキル云々は存在しない。爆発的な吸収力は、我を忘れて純粋に没頭することでしか得られない。試験勉強のような読書は、読み終わった瞬間に内容を全て忘れてしまう。
実のある読書をするには?
もし読書の量ではなく、質を重視するなら、以下のようなことを心がけるとよいだろう。
1) 時代を超えた名作を読む
自己啓発書の類は一旦横に置いて、長い年月を経てもなお名作とされるものを読んでみよう。そこには根源的な知恵が眠っているはずだ。自分が興味を持てる分野でいい。その中から名作とされるものを選んでみるといい。
2) 無理をしない
「学びのない読書は意味がない」と思いこんで、退屈な本を無理に読む必要はない。余暇にめくるような「くだらない本」から得る、何とも言えない楽しみだって存在する。決して読書を苦行にしないように。読みたいものを読もう。
3) 取捨選択をする
自分の生活や仕事、そして自分自身にとって有意義な本を選ぼう。有名人のオススメや、売れ筋ランキングに左右される必要はない。自分好みのブックリストを作ることに集中しよう。
4) 再読する
何度も読み返したくなる本に出会うことがある。何度でも読み返そう。読むたびに新しい発見がある。心から共鳴できる本、無限にインスピレーションを刺激される1冊に出会ったら、無理やり手に取った未読の本よりも大きな収穫をもたらしてくれるだろう。
5) 書き留める
心に残ったフレーズなどを書き留める行為は、より理解を深める。本に直接書きこんでもいい。
6) 読書クラブに参加する
複数のメンバーで同じ本を読み、それぞれの感想や意見を共有する場を持つといい。自分を表現し、また他者の考えを知るよい機会だ。自分とは異なる趣味や考えを持つ人の世界を知ることは、思いもしなかった景色との出会いにつながる。
最後に
読書とは美しい気晴らしであるべきで、娯楽であるべきだ。じっくり読み、心ゆくまで味わってほしい。利を得るために読むのではなく、ただ自分を楽しませるために読むのだ。
(翻訳・愛玉)
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