配車アプリ「滴滴」規制で競合に恩恵。美団の利用3割増

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今年7~8月は「滴滴出行(DiDi Chuxing)」を除くオンライン配車プラットフォームにとって夢のような2カ月だった。特に7月は複数のプラットフォームが1日当たり予約件数を大きく伸ばし、うち「高徳地図(AutoNavi)」は100万件、「曹操出行(Caocao Chuxing)」と「T3出行(T3 Mobility)」は十数万件増えた。また、美団(Meituan)の利用者は6月に比べ約3割増となっている。

規制当局が調査に入った滴滴出行は依然として大量の輸送力と利用者を抱え、業界トップのシェアを握る。だが2番手以下に目を向ければ、各社のランキングには若干の変動があるかもしれない。曹操は昨年、進出都市が62カ所、車両が5万台超、ユーザーが5700万人超に達した。

国家インターネット情報弁公室は7月2日、滴滴出行のネットワークセキュリティを調査すると発表。この発表を受けて他社は即座に緊急会議を開いた。

ある配車プラットフォームの社員は「この発表は他社にとって思いがけないチャンスになった」と話し、同日に会社から「今月は無休で待機し、政策や競合他社の動向を見守るように」との指示が出たことを明らかにした。

T3出行では崔大勇CEOから中核スタッフに連絡があったという。年内に48都市への進出を計画していた同社は上半期に24都市へ進出。しかし、当局の発表後に戦略を見直した。経済メディア「界面(Jiemian)」によると、崔大勇CEOは、8月に15都市へ進出し、年内に10万台の車両を導入するという積極的な計画を打ち出した。

一方、曹操出行の姿勢はT3出行に比べ保守的に見える。1時間以上に及ぶ緊急会議で、シェアを伸ばすために投資するのか、現状を維持しながら基盤を固めるのかをさまざまな角度から検討するにとどまった。最終的に経営陣は今回の競争に参戦しないことを決断したようだ。

オンライン配車プラットフォームはB2C、C2C、地図サービスに紐付けた複合型の3種類に分けられる。曹操出行やT3出行などは自動車メーカー系のB2C、滴滴出行と美団はC2C、「百度地図(Baidu Map)」、高徳地図は複合型だ。滴滴出行に対する調査が市場に再び大きな空白地帯を作り、どのプラットフォームにもシェアを大きく伸ばすチャンスが生まれたが、ユーザーを増やすには割引キャンペーンが必要だ。

実際に7月は各プラットフォームが大々的にキャンペーンを展開した。中でも曹操出行と高徳地図は積極的なキャンペーンを実施。関係者によると、ある都市で高徳地図がキャンペーンのために費やした金額は以前に比べ1日当たり100万元(約1700万円)も増えたという。一方、T3出行は資金調達を急ごうとしているが、最近は進展が減速したとも伝わっている。

また、7月にサービスを再開した「美団打車(Meituan Dache)」は、複数の時間帯で利用できる半額チケットや1週間有効の割引カードなどを発行し、新たな都市への参入を進めている。

だが8月に入ると状況は変わった。新型コロナウィルスのデルタ株の流行を理由にいくつかのプラットフォームがキャンペーンを縮小し、予約件数は多かれ少なかれ影響を受けた。関係者は「感染症の状況が少しずつ良くなれば、割引率は7月と同じ水準に戻るだろう」との見方を示している。

オンライン配車サービス市場にはまだ成長の余地があり、割引キャンペーンの原資があるプラットフォームは短期的に業界トップとの差を縮めることができる。しかし、規制の強化が進み、コンプライアンスへの要求も高まる中、業界トップにプレッシャーをかけられる時間はそれほど残されていない。
(翻訳・神戸三四郎)

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