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食品の安全性を憂慮し、田園生活に憧れる都市住民が増える中、都市と農村をつなぐビジネスが盛り上がりを見せつつある。産直サービス、レンタル農園といった業態だ。こうしたサービスを一括提供する便利なオンラインプラットフォームは長らく存在していなかったものの、2015年末までに北京市民が借りた農地面積の合計はおよそ900万平方メートルに達している。
ブームの始まりは、郊外の農場が始めた「レンタル農園」。農場が年間賃料を受け取る契約だ。例えば、北京郊外の三元農場の場合、レンタル農園の広さは1区画50平方メートルで、当初7区画で始められたサービスは8年間で1200区画まで増えた。年間賃料は6000〜8000元(約9万8000~13万円)だ。
しかし、農地を借りたものの、借り手が積極的に農作業に勤しむとは限らない。借りたまま放置状態の畑も多く見られるようになったが、当然と言えば当然のことだろう。
ここにアグリプラットフォーム企業の「万畝良田」はビジネスチャンスを見出した。同社は農場と提携し、農地の管理、農産物の栽培、各家庭への農産物の配送、メッセンジャーアプリ微信(WeChat)を通じた農産物の発育状況シェアなど、きめ細かなサービスを提供している。農作業への関わり具合は、個々の利用者が自由に決めてよい。
万畝良田は2017年、WeChat で個人向けサービスの提供を開始した。サービス内容は、1人あたり30平方メートルの農地を貸し、16人を1グループとして運営するもの。グループで4~5種類の農産物を栽培し、収穫後は毎年28回に分けて会員に配送される。年会費は4980元だ。
同社は北京市通州区に約9000平方メートルの試験農地を構えている。試験農地は200区画に分割され、すでにすべて貸し出されている。1グループあたりの年間収入は8万元で、これは同じ農地で単に野菜を栽培して販売するよりも大きい金額だ。同社は農地を運営し、会員費収入で利益をあげている。将来的には提携農場を募集し、5〜10%のサポート管理費を徴収する考えだ。
万畝良田の創業者である車暁穎氏は「本質的に解決しなければならないのは、消費者と農業事業体との間の信頼問題だ。消費者がある農産物を買い続けるかどうかは、その農産物の質や栽培方法を信頼できるか否かにかかっている。我々はこうした信頼を得るため、露地栽培を採用し、土壌検査やカメラによる監視を常に行っている。会員には全ての情報がオープンだ」と述べる。
現在、同社の顧客の大半は都市部の中流家庭。彼らに積極的に農作業に関わってもらうため、同社は5カ所の農場と提携し、親子農業体験プログラム「シェア農場」を推進している。
親子会員は年会費365元を支払うだけで、年12回の農業体験に参加できる。また、北京に100カ所程度ある農業関連施設を見学、利用できるだけでなく、2.5kg の農産物を無料で持ち帰ることもできる。
シェア農場の登録者数は5000人を超え、うち2000人が有料会員だ。1世帯平均で年3、4回の活動に参加しており、シェア農場の体験後、同社の主要サービスを利用する流れも生まれている。
コストを考えると、今のところシェア農場の会費収入は十分ではないが、前出の車氏は「シェア農場は収益を目的としていない」と説明する。利益以上に会員数が重要だとし、会員の増加はプラットフォームとしての存在感を高める上で欠かせないという見方だ。
将来への布石として、シェア農場は同社の重要なサービスとなっており、今後は幼稚園への提供も強化していくとのこと。すでに50の幼稚園と提携しており、同社の予測では、来年の有料会員数は5〜10万人に達するとのことだ。
創業者の車氏はもともとメディア業界の出身で、2014年に農業事業に関わるようになった。共同創業者の張建国氏は農家出身で、大規模農場の運営管理に携わってきた。北京の農業テーマパーク「瑞正園農荘」の創始者でもある。
現在、万畝良田は2000万元の調達を計画中で、調達した資金は新たな会員獲得、提携農場の拡大に充てられるという。
(翻訳・飯塚竜二)
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