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中国最大のネットセール「ダブルイレブン(双11)」に合わせ、EC大手「京東集団(JD.com)」が新事業「小時購」を立ち上げた。小時購という表示のある商品を購入すると、システムが位置情報に基づいて周辺3~5キロにある店舗から発送を手配し、1時間以内に配達する。
小時購は京東が傘下に持つスーパーや即時配送などの事業モデルを統合したもので、生鮮食品、携帯電話、デジタル家電などあらゆるカテゴリーの商品を取り扱う10万軒もの小売店舗と提携している。実際のサービス提供は京東傘下の物流配送プラットフォーム「達達集団(Dada Group)」の都市内配送サービス「達達快送(Dada Now)」が行う。
「小時購」は京東アプリのほか、WeChatのミニプログラムからも利用できるようになっており、ユーザーアカウントも京東の主サイトと連動している。京東が即時配送事業を以前より重視しているのは明らかだ。小時購を立ち上げたのは京東が即時配送事業では自社直営をやめ、他社と協業する方向に転換したことを意味する。
京東は以前にも「物競天択」という即時配送サービスを打ち出している。ビジネスモデルは小時購と大差ない。消費者が京東アプリで注文すると、オフラインに設置した拠点(コンビニ、スーパー、デパートなど)が商品を配送、早ければ30分で配達完了するというサービスだ。
しかしこの物競天択の業績は思わしくなかったようだ。物競天択が利用できる店舗が少なく、自社直営の既存事業と足の引っ張り合いになる面もあったことが原因だろう。京東が物競天択で担当したのは主にプラットフォームとシステムで、事業の中核をなす小売事業者は主に京東到家や「多点(Dmall)」などが握っており、事業を拡大していくのは困難だった。
京東傘下で即時配送事業に最も適しているのは達達集団だろう。京東集団は今年3月、8億ドル(約900億円)で達達集団が新規発行した普通株を取得した。取引完了後、京東集団は達達集団の株式のうち51%を所有する支配株主となった。達達集団のプラットフォームで発生した取引額は今後京東集団の決算報告に記載されることになり、京東が達達集団を即時配送事業の突破口とすることが確実になった。
京東の一歩先を行く美団
生活関連サービス大手「美団(Meituan)」が手掛ける即時配送サービス「美団閃購(Meituan Instashopping)」は2021年第2四半期(7~9月)の総取扱高(GTV)が前年同期比140%超増加し、8月の1日当たりの注文数が300万件を突破している。(ピーク時には1日当たりの注文件数が600万件に上ったが、これには医薬品関連の注文は含まれない)。
運用開始から3年、美団閃購の成長は著しい。関係者によると、現在美団閃購の客単価はフードデリバリーの49元(約880円)よりも高いといい、粗利率も改善し続けているという。
京東が小時購を打ち出しても、京東到家の注文件数が1日当たり100万件前後であることを考えると、美団閃購との注文件数の差は大きく、全力で差を詰める必要があるだろう。
美団も当然、さまざまな手を打っている。このほど行われた美団閃購のデジタル小売大会において同社シニアバイスプレジデントの王莆中氏は「即時配送の市場は、今後5年間で1兆元(約18兆円)、ユーザーは5億人規模に達するだろう。美団はそのうち4000億元(約7兆2000億円)のシェアを獲得したい」と話している。
京東の目標は将来的に50%のユーザーをカバーすることだ。(今年第2四半期、京東のユーザーは5億3000万人を超えている)。アクセス量とサプライチェーンに強みを持つ京東だが、今年のダブルイレブンは小時購が初めて迎える試練となるだろう。
しかし業界外には、生鮮食品や医薬品以外の商品に即時配送のニーズが本当にあるのかという懐疑的な見方もある。高すぎるコストを投じる価値のある事業なのだろうか。これが過去数年間、即時配送事業の成長スピードが鈍かった理由でもあるだろう。美団と京東はこの疑問に答えを出す必要がある。
(翻訳・山口幸子)
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