中国版ツイッター「微博」、動画サービスへ大転回

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

ビジネス注目記事

中国版ツイッター「微博」、動画サービスへ大転回

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

ショート動画サービスの成長が著しい。2017年、中国ではショート動画サービスの月間アクティブユーザー(MAU)数が2億人以上増加し、4億1400万人となった。IT御三家のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)も参入してきている。

この市場では、バイトダンス(字節跳動)が運営する「抖音(TikTok)」と、「北京快手科技(Beijing Kwai Technology)」が運営する「快手(Kwai)」が人気を二分しており、他の追随を許さない状況だ。ユーザー数や利用時間のほとんどをこの2社が握っている。一方、市場そのものがすでに折り返し地点を迎え、昨年からユーザー増加率も徐々に鈍りはじめている。

そうした中、「中国版ツイッター」の微博(Weibo)は、ショート動画市場に本格参入の意思を固めた。

微博ブームをけん引した「人気アカウント」

微博のブームはこれまで、数多くの人気アカウントがけん引してきた(人気アカウントは中国語では「大V」と称される。数十万人以上のフォロワーを持つ公式アカウントや実名アカウントを指す)。

微博が人気全盛期だった2009年、新たなプラットフォームとして世に出たのが微信(WeChat)だ。多くの大Vが続々と微信に乗り換えた。

そこで微博は大物スターやトップインフルエンサーを全力で招聘して人気を維持しようとしたが、大物の参入によりプラットフォームそのものが変化してしまった。一部の限られた大Vと、それを傍観する一般ユーザーという構図となり、インタラクティブ性を失ったのである。

この状況について、微博のシニアバイスプレジデント曹増輝氏は2016年に「微博で発生するやりとりの8割は、1%の人気アカウントが握っている」と証言。しかし、CEOの王高飛氏は「こうした構造こそが他社との差別化ポイントであり、我々のウリである」と述べていた。

微博ユーザー数の推移(微博決算報告より)

微信に続き、2017~2018年に台頭してきたTikTokは、微博にとってさらなる脅威となった。微博のユーザー増加率は伸び悩んだ。そして、運営元「新浪(SINA)」の曹国偉CEOは、2018年第1四半期決算を発表した際に「今後はショート動画への投資を加速する」とついに宣言したのだ。

2018年11月時点で微博が抱える大Vは前年同期比60%増の4万7000人。大V全体の月間アクセス数は1兆6000万回。月47億人のペース(1大Vにつき10万人のペース)でフォロワーを増やしている。いかに大Vを残留させて、フォロワーのロイヤルティを高めていけるかが、生き残るためのカギとなるだろう。

ショート動画へのシフト

ショート動画サービスをどのように運営するかも、今後の成長を左右する。

2016~2018年の3年間、微博が「V影響力峰会(V INFLUENCE SUMMIT)」で公開してきたデータによると、微博の動画投稿件数は1日当たり32万件から150万件にまで増加した。また、大Vが投稿するコンテンツの3分の1を動画が占めるようになった。月あたりで195万件に上る。ショート動画サービスへのシフトが成功するかどうかは、彼らにかかっていると言える。

2018年微博V影響力峰会で発表されたデータ

現在、微博に投稿される動画の多くは海外から移入された「vlog(動画で綴るブログ)」形式だ。微博は「2019年が中国のvlog元年だ」と宣言している。

微博は「人となりが見える動画」を目指し、vlogのけん引役を大Vに一任している。vlogに求められるのは、非日常的で面白い内容であること、および、従来のブログのように投稿に継続性を持たせることの2点だ。しかし、これを一般人が行うのは難しい。人気vloggerとなるには、映像系クリエイターか大Vのような有名人であることが条件になる。

微博公式vloggerの投稿画面

現在、微博の公式vloggerは3000人。そのうちトップと呼べるのは30人に満たない。今後はプラットフォーム間のスター争奪戦に発展するのは間違いない。また、彼らがvlog運営に興味を示すかどうかも定かではない。そのため、他の小規模プラットフォームを取り込んだり、マルチチャンネルネットワーク(MCN)と提携したりといった施策が必須になるだろう。

動画広告事業も調整

一部の人気アカウントが頂点に君臨するピラミッド構造の微博が動画サービスに重点を移すとなれば、収益も動画広告が中心になるだろう。

TikTokなどの新興勢力が席巻した2018年に、微博が従来のクライアントから得ていた広告費やSEM(検索エンジンマーケティング)費は相当圧迫されたと見られる。微博は同年初めから、これまで制限してきた中小企業をターゲットにして新規クライアント獲得に動きはじめた。同時に、大口クライアントに対しては「ストーリー(投稿後24時間で自動削除されるショート動画)」のレコメンド表示枠とホーム画面の動画広告枠を開放した。

広告収入を含む微博の収益推移

2018年第3四半期、微博の広告収入に占める動画広告の割合は約27%。第1四半期の20%未満から大きく伸びた。また、2016年から2018年の3年間で、大Vに紐づけられた動画広告などは収入が3倍になった。動画広告は今後も伸びていくだろう。

微博V影響力峰会で発表された収益源データ

動画広告のポテンシャルに注目しているのは微博だけではない。テンセントをはじめ、位置情報SNS「陌陌(MOMO)」や、TikTok、快手などのプラットフォームも同様だ。恒大研究院(EVERGRANDE RESEARCH INSTITUTE)は、TikTokの2018年の広告収入を180億元(約2800億円)と見積もっている。同年10月末には、快手も100億元(約1600億円)規模の収益を目指すと宣言した。

(翻訳・愛玉)

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録