米国でAI関連職種の年収ダウン 中国では安定して増加傾向に

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米国でAI関連職種の年収ダウン 中国では安定して増加傾向に

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世界で最も注目され、急成長を遂げているAI分野だが、昨年は平均給与が下がったようだ。

IEEE(米電気電子学会)の学会誌「IEEE Spectrum」によると、昨年全米の技術者の平均年収は9万7859ドル(約1125万円)から6.9%増の10万4566ドル(約1200万円)となり10万ドルの大台に乗った。

しかし機械学習、自然言語処理(NLP)、AI(人工知能)の3分野の平均年収はそれぞれ前年比で2.1%、7.8%、8.9%減少しており、AI分野では1万1739ドル(約135万円)も減っている。

図表:IEEE

平均給与が減少したのはAI業界が急成長したここ数年で初めてのことだ。以下ではテクノロジー系求人サイト「Dice」のリポートを見ていく。

AI関連では給与減少の傾向

まず上述のAI関連の3分野(AI、自然言語処理、機械学習)を見てみよう。

3分野とも2018~20年の3年間は平均年収が右肩上がりに伸びているが、21年には下がっていることがわかる。

2021年のAI分野の平均年収は前年比8.9%減の12万168ドル(約1381万円)で、18年の12万709ドル(約1388万円)よりも少なかった。自然言語処理は同7.8%減少、機械学習でも同2.1%減少しており、ともに下落傾向にあることがわかる。

ディープラーニング分野の平均年収は一足早く2020年から大幅に下落し(18年の回答人数は100人未満のため統計に入れず)、19年に比べると12.8%減少している。21年にはやや持ち直しているが、それでも19年に比べると9.3%の減少だ。

このような傾向は自然言語処理や機械学習だけにとどまらない。AIに関連するビッグデータやデータサイエンスの分野でも2021年には同様の傾向が見られた。

データサイエンス分野の平均年収は2018~20年の3年間は安定して増加しているものの、21年には前年比で3.1%減少。ビッグデータも同1.3%減少している。

テクノロジー業界の勢いに陰りが見え始めたのだろうか。しかしこれはAI分野に限ったことで、業界全体では2021年も給与が上がる傾向にあった。

テクノロジー業界全体では給与増加の傾向

Diceによると、2021年はテクノロジー業界全体で平均年収が増加。伸び幅は前年比6.9%増の平均6707ドル(約77万円)だった。

職種別に見て行くと、平均年収が15万1983ドル(約1748万円)のCEO、CTO、CIOなどの管理職以外に、システムアーキテクト(SA)とクラウドエンジニアの平均年収の伸びが顕著だ。

全体的に見ると大部分の職種で給与が増加していることがわかる。

図表:Dice

システムアドミニストレータの平均年収は6.2%、システムアーキテクトが5.1%と大幅に増加、このほかサイトを制作するソフトウェア開発者が8%、UI/UXデザイナーが10.1%と年収の増加が顕著だ。

中でも平均年収の増加率が最も高かったのはWeb開発エンジニアだ。21.3%という伸び率は他を大きく引き離している。このほか、DBA(データベース管理者)、データアナリスト、テクニカルサポートなども伸びが期待できそうだ。

AI分野の平均年収が下がったことに関してDiceのCMO(最高マーケティング責任者)であるMichelle Marian氏は「AI技術を使える人材が増えたため」だと考えている。

メタバース分野では給与増加

AR、VRなどメタバースに関係する分野では給与が増えている。

AR分野の平均年収はここ数年安定して増えており、2021年は19年に比べ5.9%増加している。VR分野では2019年には一時的に減少したものの、21年には持ち直して19年に比べ2.1%の増加となった。

リポートの中には興味深いデータがある。収入アップに最も寄与したスキルはApacheプロジェクトが開発・公開しているオープンソースの全文検索ソフトウェア「Solr」であることがわかったのだ。

図表:Dice

コンピューター分野では、使えるスキルによって年収が変わる。高収入をもたらすスキルは上位からSolr、Mokito、SOAで、平均年収は14万ドル(約1600万円)以上に達している。

Diceの調べでは企業向けインフラ、特にデータストレージやクラウドに関連する技術には高額報酬を惜しまない企業が多いという。

これまでは主に米国のデータを見てきたが、次は中国国内を見てみよう。

中国では安定して増加傾向に

中国国内の大手企業ではAIに関連する職種の月収は基本的に安定しており、一部では増加している。例えば、TikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)では機械学習関連の職種は修士課程修了者で月収3万~6万元(約54万~108万円)、学部卒業では2万元(約36万円)スタートとなっている。

顔認証技術で知られる「センスタイム(商湯科技)」では、在職者によると2021年の平均月収は3万1355元(約56万円)で20年の2万7846元(約50万円)に比べると13%増だ。

AI関連の平均月収は3万5000~5万6000元(約63万~100万円)前後で、全体の平均月収よりも高い。

大手求人サイトの「拉勾網(Lagou.com)」によると、中国のAI業界では依然として給与が増加傾向にあるという。また、AI分野の求人も拡大傾向にある。拉勾網の調査では2021年のAI関連の求人は前年比95%増だった。

図表:拉勾数据研究院

作者:量子位(WeChat ID:QbitAI)

(翻訳・山口幸子)

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