スマホと連携、血圧を24時間モニタリング可能なウエアラブル端末 疾病リスク低減に期待

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連続血圧測定の技術を開発する「心永科技(Heart-Forever)」がこのほど、エンジェルランドで数千万元(数億円)を調達した。出資したのは「峰瑞資本(Frees Fund)」。

心永科技は2020年に設立された。共同創業者の李毅彬博士は、清華大学マイクロエレクトロニクス学部で学位を取得しており、血圧モニタリングの研究に10年近く携わってきた。もう1人の共同創業者、魏耀広博士は米国ミネソタ大学で電子工学を専攻。過去にIBMやマイクロソフトでシニアエンジニアを務めるなど、AIやアルゴリズムの分野で経験を積んできた。

心永科技の連続血圧計のイメージ図

連続血圧測定が注目される理由

中国で高血圧を患う人は目下、3億人に迫る。従来の血圧測定方法は、病院なら1日に3~5回、家庭なら2~3回という具合に単発的な測定がほとんどで、連続したモニタリングを行うのは難しかった。

血圧は環境や当人の精神状態に左右されるため、毎回の測定値が10~20mmHgほど変動する。連続血圧測定ならば、血圧の変動を反映し、血圧のベースラインからの変化を把握できる。医師は高血圧患者に対し、いっそう的確な投薬を行えるようになる。

患者自身も血圧の周期的な変動を把握することで、動脈硬化や内分泌疾患など見過ごされがちな慢性疾患を含む健康上のリスクを認識できるようになる。脳心血管疾患の中には、連続血圧測定が重要な意味を持つケースもある。血圧が高すぎると脳出血の再発率も目に見えて高まる。血圧を常時モニタリングし、測定値が高い場合に警告を出せれば、再発率を大幅に減らすことができる。

連続血圧計と投薬前後の血圧データは、降圧薬を手掛ける製薬会社が新薬開発の臨床試験を進める上でも大いに役立つ。ある程度のデータが蓄積できた段階で、心永科技は製薬会社や慢性疾患管理サービス、保険会社、病院などとの連携を検討していくという。

確かな技術力と今後の展開

ファーウェイやサムスン、Aktiia、Valencellなど国内外の企業も連続血圧測定の持つ大きな意義に注目し、医療グレードのポータブル血圧モニターの開発に乗り出している。ファーウェイがこのほど発表した血圧測定可能なスマートウォッチ「Huawei Watch D」は、カフ(圧迫帯)で加圧して測定するタイプで、第二種医療機器として登録されている。一方、心永科技の連続血圧計はカフレスで、光電式容積脈波記録法(PPG)と圧力感知を組み合わせた技術を採用している。

心永科技の連続血圧計は複数の脈波信号を取得し、血流量や動脈径の変化に基づく血行力学モデルを構築することで血圧を算出する。

補助アルゴリズムとして機械学習モデルも構築されている。血行力学計算を行う上で、完全なパラメータやアルゴリズムに必要な全データ(物理的環境、個人差、装着の位置や角度など)を収集することは困難だ。同社は、機械学習によるモデルトレーニングの結果と血行力学モデルの結果とを照合して裏付けを取る方法を採用した。

李博士によると、同社の連続血圧計は7万5000セットの計測データを基盤とし、測定誤差をプラスマイナス8mmHgに抑えたという。

同社の連続血圧測定には測定デバイス、スマートフォンアプリ、クラウド上のバックグラウンド管理が含まれる。ブレスレット型の測定デバイスで脈波信号を取得し、アプリ上に血圧や波形をリアルタイムで表示する。データの保存や計算などはクラウド上で実行される。

事業計画として、同社はまず第二種医療機器の認証を取得し、中国で最高ランクに位置づけられる「三甲医院」5カ所との提携を目指す。医師に連続血圧計を提供しつつ、臨床現場でさらなる活用の道を探る考えだ。

個人ユーザー向けサービスとしては、まず国内のスマホ・ウエアラブル端末メーカーと提携して連続血圧測定ソリューションを打ち出し、より多くのユーザーに利用してもらうことを目指す。次に蓄積したデータを脳出血リスクに対する警告などに活用し、慢性疾患管理や遠隔医療、高齢者介護施設などとの連携サービスにつなげていく方針だという。
(翻訳・畠中裕子)

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