新消費時代にはブランドのストーリーやシーンを創出できる企業が伸びる―華映資本

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2018年の中国市場を一言で表現するとしたら「新消費時代」という言葉が当てはまるだろう。ヒト、モノ、場が再構築され、オンラインとオフラインの融合が深まり、消費者のライフスタイルも変わった。こうした変化をどう解釈するか、新消費時代におけるチャンスはどこにあるのか、「華映資本(Meridian Capital China)」のパートナー孫瑋氏、投資ディレクター姜志峰氏に聞いた。

消費者の変化がすべての起点

新消費時代の最大の特徴は消費者の変化だ。華映資本の調査によれば、中国総人口の17%を占める20~30歳が総消費の30%以上を握っている。彼らが最大の影響力を持つ新消費者となったのだ。

消費者が変わることによって、ブランド、商品、販路が変化したと考えられる。

具体的には、Eコマースやソーシャルメディアが発展したことでサプライチェーンがより柔軟になった。少量販売やカスタマイズ生産が脚光を浴びはじめ、大規模な生産力を持たない新興ブランドにもチャンスが巡ってくるようになったのだ。反対に、大手でも何かのきっかけで競争力を失うということもあり得る。ここに、華映資本が新興ブランドに注目する理由がある。

カギはブランド

第一に「商品」が大切だ。魅力的な商品がなければ、どれほど戦略が優れていても話は始まらない。次に大切なのが「人材」だ。現在は、学歴やキャリアに関係なく、「ブランドを構築できる人」が求められる。審美眼や学習能力を備えている人が勝つ。最後に大切なのが「マーケティング能力」だ。ブランドの背景にあるカルチャーやライフスタイルをターゲットに刺さるように伝えられる能力が必要だ。

「中国には『ニッチ市場』は存在しない」。孫瑋氏はそう語る。中国の消費をけん引する20~30歳はおよそ2億人。彼らを細分化しても、10億元(約160億円)規模のブランドが展開できるという。

コカ・コーラのように、たったひとつの商品で勝ち組になれる時代ではない。ブランドをある程度拡張した後、どれだけ商品構成を多彩にできるかが大切だ。この点を考慮できる創業者が勝ち組になれるのだ。

オンラインでスタートしても、結果的にオフラインにつなげることも重要だ。顧客が3000万~3億規模に留まるならオンラインのみの展開でもいいが、それ以上を狙うならオフラインへ展開しなければならない。オンラインの顧客獲得コストは非常に高い。今後はオフライン以上に高くなっていくだろう。

華映資本が出資した食品ブランド「関茶(Matchall)」を例にとると、同ブランドは「抹茶」というニッチな切り口から食品市場に参入した。ソーシャルメディアで拡散しながら、販路や量産体制を整え、2017年には初の実店舗を開いた。

関茶の店舗

姜志峰氏は、消費財で起業するには「商品、ブランド、販路」が最も重要な三要素になると考えるが、中でも新消費時代においては「ブランド」が最も難しく、また最も成長につながる要素だと指摘する。現在は販路で差別化を図るのは難しく、サプライチェーンも標準化が進み、メーカー独自の路線は開拓しにくいからだ。

関茶は多くのメーカーが手を出したがる飲食店はあえて避け、包装食品だけに絞って勝負をかけた。まずはソーシャルメディアで話題を拡散して、「ヘルシーでおいしい」というブランドイメージを確立させたのだ。当初は抹茶ドリンクだけだったが、チョコレートやシリアル、プロテインバーと広げるにつれ、「抹茶と言えば関茶」という印象を消費者に植えつけることに成功した。

孫瑋氏によると、衣食関連は消費者の口コミが拡散しやすく、特にブランドを確立しやすい分野だという。

オフライン客の獲得は多様

新消費時代に販路や集客で大規模なチャネルを確保するのは難しい。小さなチャネルを獲得し、これを数多く積み上げていくしか方法はない。

華映資本が出資したポップアップストア向けの短期賃貸プラットフォーム「舗天地(PUTIANDI)」は、毎年、全国約3000の商業施設で1000以上のイベントを開催している。こうしたモデルが顧客獲得のひとつの成功例になるだろう。

「舗天地」公式サイトより

グルメ・音楽・エンターテイメントなどを一体化させたイベントを各地で主催する「伍徳吃託克(WOODSTOCK OF EATING)」は、舗天地ほどのスピード感はないが、各業界から集めた出店企業と長期的に安定した提携関係を築ける点が強みだ。将来的には自社ブランドを生み出すことも可能だろう。魅力的な消費シーンを作り出すことに徹底的にこだわり、ターゲットユーザーを巻き込み、購買につなげることに成功している。

もちろん、オフラインの顧客は多様で複雑だ。集客はブランド運営における最大の難関となるだろう。

新消費を支える技術

新消費時代のロジックが把握できたとしても、これを支える技術も重視しなければならない。企業の革新的競争力はやはり運営効率の向上と、これを実現する技術にかかってくる。

華映資本が出資したテック企業「深蘭科技(Deep Blue Technology)」は、設立から4年目にしてAIラボを10カ所以上、開発を担当する子会社を20社以上、さらに海外子会社や開発人材なども多数抱える。小売の産業構造改革に尽力し、AIによる個人認証技術を活用した無人販売店やスマート自販機などを開発してきた。華映資本はこうした技術も核心的価値だと考えている。

孫瑋氏は、セキュリティ分野などではすでにAI技術の需要は飽和状態に近づいており、小売りや教育分野に戦場を移すべきだと考えている。ひとつの技術があれば、多様な分野で応用が利くのもテック企業の強みだ。
(翻訳・愛玉)

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