テスラの「移り気な態度」にハラハラするパナソニック

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中国・韓国企業の台頭に伴って、車載バッテリー市場での競争が激化している。同時にテスラの「移り気な態度」が浮き彫りとなり、老舗のパナソニックは安穏としていられない状況だ。

日本経済新聞の報道によれば、トヨタとパナソニックは2020年末までに車載バッテリー事業の合弁会社を設立し、共同で技術開発や製造販売を行うという。合弁会社の出資比率はトヨタが51%、パナソニックが49%。両社の従業員3500人(トヨタ500人、パナソニック3000人)が合弁会社に出向する予定となっており、パナソニックはテスラ以外の車載バッテリー事業を新会社に移転するとも報じられた。

テスラが上海のEV工場(ギガファクトリー3)建設計画を発表した後、パナソニックはバッテリー生産の強化に乗り出し、中国の工場に数百万ドル(数百億円)を投入すると発表した。中国にある同社バッテリー工場の2本の生産ラインは、早ければ今夏前に生産を開始する予定だ。しかし、2018年10月、テスラのトップがサムスンSDIとLG化学という韓国の二大バッテリーメーカーと接触を持ったことが報じられ、続く12月にはテスラがサムスンSDIと3300万ドル(約36億円)規模の契約を結んだことが明らかになった。

2018年11月、テスラCEOのイーロン・マスク氏もツイッターで「上海の新工場では、バッテリーはパナソニックを含む数社から供給を受ける可能性が高い」と認めた。

今年1月22日にはロイター通信が「テスラが『天津力神電池(Lishen Battery)』とバッテリー供給で暫定合意に達した。テスラにバッテリーを供給する唯一のパナソニックは、新たなパートナーを模索し始めた」と報じた。後にテスラの広報関係者は天津力神電池から見積もりの提示を受けたことは認めたものの、「合意書には署名していない」と火消しに走った。

しかし、毎年赤字を計上しているテスラからすれば、中国国内のバッテリーサプライヤーと契約する方がコストを節約できる。「乗り換える」可能性は今後も残されており、パナソニックには悩みの種となり続けるだろう。

フォルクスワーゲン、フォード、トヨタなどの大手顧客を有するパナソニックだが、テスラも同社にとって重要な顧客だ。現在、パナソニックは2018年の年間出荷量データを公表していないが、テスラの2017年の出荷台数10万台から計算すると、パナソニックが同年にテスラに納入した総バッテリー容量は約8.8Gwhに上ることになる。パナソニックの2017年の出荷量は約10Gwhと公表されているので、テスラ向け供給が総出荷量の約9割を占めていることになる。パナソニックが車載用リチウムイオン電池市場シェアの4割を握れるのは、テスラがいてこそと言っても過言ではないだろう。

パナソニックにとって、中国における最大のライバルは「寧徳時代新能源(CATL)」だ。同社の2017年の世界出荷量はパナソニックを上回っており、上海汽車集団(SAIC MOTOR)、吉利汽車(GEELY AUTO)、北京汽車集団(BAIC MOTOR)華晨BMW(BMW Brilliance)など数十社の自動車メーカーと提携することで、中国の新エネルギー車シェアの半分を占めるまでに成長した。

パナソニックは、テスラの動きに対処しなければならない一方で、テスラへの過度な依存を断ち切る必要がある。パナソニックがトヨタという巨大企業を頼ることで競争力を高めようとするのは自然のことだ。

トヨタは現在、電気自動車関連のテクノロジーを蓄積しようとしており、2030年までにハイブリッド電気自動車を含む電気自動車の販売台数を総販売台数の50%にまで引き上げる計画だ。しかし、中国国内では「蔚来汽車(NIO)」「小鵬汽車(Xpeng Motors)」などの新興EVメーカーがすでに量産車を販売している。テスラなどの海外メーカーも勢いに乗る一方で、トヨタの純電気自動車(BEV)の販売予定は2020年と、「出遅れ感」は否めない。

トヨタにとって、今回のパナソニックとの協業は、電気自動車の競争力を高める上で欠かせないコア技術を解決することにつながる。リチウムイオン電池市場の急速な拡大、角形バッテリー開発コストの削減、開発スピード向上の面で大きな助けとなるはずだ。

しかし、パナソニックが中国の「バッテリー戦争」で勝利を収められるかどうかについては、次なるステップを待たなければわかならい。
(翻訳・飯塚竜二)

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