アリババ、リストラ決行 生鮮スーパーなど不採算事業に集中

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IT大手アリババ・グループは昨年末から一部の事業部門で人員削減を続けている。36Krが複数のアリババ関係者に取材してわかった。

アリババが最大で全従業員の30%をリストラするとの情報が複数のSNSで拡散している。しかし、上記の関係者らは30%という数字は誇張だとする。決算書によると、アリババの従業員数は2021年6月30日時点で25万人を超えており、その30%は8万人近くなる。

アリババ、テンセントが人員削減か 最大3割リストラとの情報も

アリババがこのタイミングで人員削減を実施するのは、同社の会計年度が4月始まりで、通常は2〜3月に業績評価や人事考課を行うからだ。

最も大規模に人員削減を実施する部門は生活関連サービス事業だという。地域密着型サービスに区分されるフードデリバリーサービス「餓了麼(Ele.me)」とO2Oプラットフォーム「口碑(Koubei)」、他にオンライン旅行サービス「Fliggy(飛猪)」などが同部門に含まれるが、地域密着型サービスは21年4〜12月に約240億元(約4500億円)の損失を計上している。

複数の公開データを参照すると、アリババのフードデリバリー餓了麼とライバルの美団(Meituan)の市場シェアは3対7にまで差が開いている。餓了麼では19年から市場シェアを唯一の業績評価基準とはしておらず、この2年は「優勢なエリアを守り、守備を固め、着実に進む」ことを重視してきた。複数の従業員によると、今回15〜20%が削減されるという。

オンライン旅行サービスFliggyでは1月から人員削減がはじまっている。技術、運営、顧客開拓の部門が対象になっているという。従業員は「人員削減の主な理由は、新型コロナの感染拡大が繰り返され、プラットフォームとして事業の運営が困難になり、顧客が少ない一方で運営コストが跳ね上がったことだ」と説明する。

OMOスーパーなどを運営する盒馬(Hema)事業部などのイノベーション部門でも重点的に人員削減が実施される。支出削減が主な目的だ。複数の従業員によると、盒馬では市場運営部門などを中心に20%ほどの人員が削減される。さらにP8(アリババ独自の従業員の等級で、P8は高級専門職に相当)以上の従業員の給与が最大30%減額される。同事業部で最も成長を期待されていた地域コミュニティ向けネット通販サービス「盒馬隣里(NB、Neighbor Business)」も昨年末から人員削減を行っており、店舗数も減らしている。珠江デルタ地区では全店舗を閉鎖したという。

一方、タオバオ(淘宝)など祖業のEコマースでは反対に、運営部門や開発部門で人材を募集中だ。クラウド事業のアリババクラウド、物流事業の菜鳥網絡(Cainiao Network)も人員削減の対象となっていない。ただしアリババクラウドの主要部門では人材採用をストップしている。

アリババの組織図

人員削減の配分からみると、アリババは主力のEコマース事業をより盤石にしながら一部の不採算事業を縮小していく方針のようだ。消費が全体的に低迷し、Eコマース分野ではかつてないほど競争が苛烈になる中、アリババは過去2年、改めて主力事業の成長を重視し、何度も組織再編を実施してきた。

昨年末の組織再編では、長年変化のなかったEコマース事業を徹底して変革した。張勇CEOは社員に充てた書簡で「ガバナンスの多元化」を訴え、新設した「国内デジタルコマース」「海外デジタルコマース」部門の責任者に戴珊氏と蒋凡氏を任命した。

現在のアリババは確かに困難な局面にある。財務面も事業面も不安定で、環境や競争で難しい挑戦を迫られている。2022会計年度第3四半期(2021年10〜12月)の決算によると、国内事業の売上高の伸びは一桁台に落ち、7%だった。売上高を引き続き伸ばし、悪化し続けるマクロ環境に対処するため、アリババは今年は自社運営事業や海外事業を重点的に伸ばしていく。

各事業部門での人員削減の実施状況について、36Krはアリババに問い合わせたが、現時点で回答はなかった。
(翻訳・山下にか)

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