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3Dスキャン・モデリング技術を開発する「KIRI Innovation(麒砺創新)」がこのほど、エンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達した。「青松基金(Qingsong Fund)」が出資を主導し、既存株主の「英諾天使基金(Innoangel Fund)」「普渡資本(Purdue Capital)」が追加出資を行った。
これまでの3Dスキャン技術は自動車、映画、工業などの専門分野で使用されることが多く、高いスキャン精度や専門性が求められたため、3Dスキャナーのコストは高止まりしていた。一般的な工業用3Dスキャナーは1台数万元(数十万円)から数百万元(数千万円)とさまざまだ。
2018年に設立されたKIRI Innovationは、低コストの3Dスキャン・モデリング技術の研究に注力しており、コンシューマー向け3Dスキャンアプリの開発も行っている。KIRI創業者の王正男CEOによると、すでにアンドロイドとiOSに対応したスマートフォン向け3Dスキャンアプリ「KIRI Engine」を発表したという。KIRI Engineアプリを使えば、対象物を撮影してクラウドにアップロードするだけで3Dモデルを作成できる。
対象物の周囲をぐるりと囲むように30~70枚の画像を撮影してアップロードすると、まず端末で画像データの前処理が施され、その後クラウド上のアルゴリズムを活用して3Dモデルを表示するという仕組みだ。高解像度と低解像度の2種類でエクスポートでき、3Dプリントや一般的なレンダリングなど異なるニーズに合わせて選択できる。ユーザーは1回の利用ごとの支払いかサブスクリプション方式を選べる。
注目できるのは、スキャンプロセスを簡略化しながらも、リアルな3Dモデルを作成できることだ。これを可能にしているのがKIRIのクラウドベースのアルゴリズムであり、作成した3Dモデルに4K品質のテクスチャマッピングを施すことで、より鮮明かつリアルに仕上げることができる。
「実際のところ、あらゆる分野で産業レベルの精度が求められているわけではない。レンダリング能力の低いゲームやVR(仮想現実)では、3Dモデルの解像度があまりに高いと、かえって読み込みや動作が重くなってしまう。この場合、より重要なのはリアルな質感を出すテクスチャマッピングであり、解像度の高さではない」
KIRIは主に2つの分野で事業展開を進めている。一つは海外のUGC(ユーザー生成コンテンツ)。「海外のゲームクリエイターやコミュニティーでは活発な開発が行われており、3Dモデルに対するニーズが非常に大きい。しかも近年AR(拡張現実)やVRが急成長しており、3Dモデルのクイック作成ツールが素材面の課題を解決すると期待されている」
もう一つは国内のEC分野だ。販売事業者はKIRIの3Dスキャンを使用して、AR表示やオンライン試着などに活用できる3Dモデルをスピーディーに作成することができる。「プロセスそのものは、スタジオでの商品撮影とほぼ同じだが、3Dスキャン技術のおかげでコストダウンと効率化が望める」という。2021年の「ダブルイレブン」ショッピングセールの際には、P&Gや京東(JDドットコム)などと提携した。
今後の展開としては、まず技術面で改良を進め、動画による撮影、撮影枚数の削減、AI生成などを取り入れて、3Dスキャンのさらなる簡素化を目指す考えだ。加えて3Dモデルの素材コミュニティー構築にも力を注ぐ。今後、3Dモデルの活用場面が増えるのに伴い、UGCを作成する上で3D素材ライブラリは欠かせないものになるとの予想からだ。現在、KIRI Engineを使って作成した3Dモデルは1万点に達しており、2022年末までには3Dモデルの蓄積を完了し、3D素材ライブラリとして世界に公開する予定だ。
KIRIの創業者3人はいずれもカナダ・マックマスター大学出身。そのうち王CEOはホンダでの勤務経験があり、2020年にフォーブスの世界を変える30歳未満の30人「30 Under 30 カナダ」に選出された。
(翻訳・畠中裕子)
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