21年の世界CVC投資、1.5倍増の12兆円。中南米、アジアへ投資拡大

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CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル)はよく知られているベンチャーキャピタルとは異なり、企業がベンチャー投資部門を設立し、自社の自由な資金を使って投資する。投資対象は企業の事業戦略に沿う企業や産業チェーンの川上・川下の中小企業だ。

米調査会社「CB Insights」のデータによると、世界のCVC投資額は2021年に前年比142%増の1693億ドル(約21兆5000億円)に達した。投資規模も大きく拡大し、21年は1億ドル(約130億円)以上の投資案件が470件と前年より291件増加した。

表:CB Insightsより

米国のほか中南米、欧州、アジアへのCVC投資も同様に増加傾向にあり、うち中南米への投資は21年に前年比647%増、中国、インド、イスラエルを含むアジアのCVC投資額は同154%増加した。

積極的な投資姿勢の米国CVC

新型コロナウイルスの蔓延で世界の不確実性が高まり実体経済は影響を受けているが、CVCは急成長している。米国で21年に設立されたCVCは221社に上り、前年比55%増加した。いまや規模の大小に関わらずどの企業もCVCを設立している。特にメタ(Facebook)、グーグル、アップル、マイクロソフトのような大手各社は20年から現在にかけて10回以上CVCによる買収を行っている。メタはゲームやメタバースと関係がある企業を20年に7社、21年に5社買収した。アップルは20年に9社、21年に2回の買収を実施している。

画像:TradingViewより

マイクロソフトは20〜21年に5G、IoT、サイバーセキュリティ、メディア、ゲーム、コンテンツなどに関連する23社を買収した。マイクロソフトは今年1月、687億ドル(約8兆7000億円)で米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードを買収すると発表している。

画像:Know Your Nameより

CB Insightsのリポートによると、米国CVC投資の最も大きな変化は投資規模の拡大で、1億ドル以上の巨額投資の案件数は20年の179件から163%増加して470件になった。投資先で米国CVCに最も人気がある分野はフィンテックで、投資規模は202%拡大し、金額は332億ドル(約4兆2000億円)に達した。次にリテールテック、デジタルヘルスと続く。

米国以外でもCVCの動きは活発だ。CB Insightsが発表した「2021年世界CVCリポート」によると、世界のCVC が21年上半期に投資した金額は790億ドル(約10兆円)で20年の740億ドル(約9兆4000億円)の記録を塗り替えた。年間では、中南米へのCVC投資が647%増と最も拡大が速く、欧州のCVC投資は170%増、アジアでは154%増の498億ドル(約6兆3000億円)に達した。

中国インターネット企業のCVC、対外投資の50%以上を占める

中国のCVC設立は海外に後れを取ったがこの10年ほどで急成長し、特にベンチャーキャピタルの恩恵を受けたインターネット企業が相次いで設立した。ベンチャー投資情報サービス企業「IT桔子(itjuzi.com)」のデータによると、中国のCVCのうち21%はインターネット企業が母体となっており、その投資件数は中国のCVC投資件数全体の58%を占める。投資の活発度でもインターネット企業は大きく先行する。最も活発なのはテンセント(騰訊控股)の投資子会社「騰訊投資(Tencent Investment)」で投資件数は1175件、続いてシャオミ(Xiaomi、小米科技)の408件、アリババの387件、検索大手の百度(バイドゥ)とそのCVCである「百度風投(Baidu Ventures)」が324件、 ITセキュリティ大手「奇虎360(Qihoo 360)」が360件だ。

しかし、独占禁止の取り締まりが厳しくなり、この2年間中国のインターネット企業のCVCはやや慎重になっている。テンセントは昨年末、特別配当として配分する形でEC大手「京東集団(JDドットコム)」の持ち株を減らし、1月にはアリババグループ傘下の「阿里巴巴文化娯楽(Alibaba Digital Media and Entertainment Group)」が動画配信サービス「優酷(Youku)」の株式を売却。TikTok中国版「抖音」を運営するバイトダンス(字節跳動)の戦略投資部門も解散した。インターネット企業のCVCが縮小する一方で産業資本は活発になり、ファーウェイ、電気自動車用リチウムイオン電池メーカー「寧徳時代(CATL)」のような企業が投資を加速させている。

企業データベース「天眼查査(Tianyancha)」の資料によると、CATLは今年に入ってから鉱業、電力設備、電池材料、ロボット分野などの5社に投資した。ファーウェイの完全出資子会社「哈勃科技創業投資(Hubble Technology Venture Capital)」は、プライベートファンド運営管理業者の届出・登録手続きを完了。プライベートエクイティおよびベンチャーキャピタルを手掛け、登記資本と払込資本はともに30億元(約600億円)だ。同社は間もなくファンドを設立して資金募集を開始する。

中国のCVCは新しい段階に入った。

作者:WeChat公式アカウント「硅兎賽跑(ID:sv_race)」夏添 編集:蔓蔓周

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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