インテリアアプリ「一兜糖」 消費者意識の変化がビジネスチャンス

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2016年、中国のEコマースにおけるインテリア市場の規模は2103億7千万元(約3兆5千億円)だったが、2019年には5941億2千万元(9兆8千億円)に達すると予測されている(モバイルインターネット調査機関「艾媒咨詢(iiMedia Research)」調べ)。市場は巨大だが、まだ明確な戦略を描けていない企業が多いという。消費者のニーズをいかにつかむか、より正確なマーケティング活動を行うためにオンラインとオフラインのデータをいかに活用していくかなど、課題は多い。

インテリア関連のプラットフォーム「一兜糖家居(yidoutang.com)」を運営する「広州壹糖網絡科技有限公司(Guangzhou Yitang Internet Technology)」の創設者・徐紅虎氏は、新しい消費者層の出現によって、消費者心理や購買ルート及び需要が変化したことが問題の背景にあるという。

一兜糖が最近発表した「2019年家庭生活と消費動向レポート」によれば、主に80~90年代以降に生まれた若年層において、インテリアに関する消費意識の変化がみられる。

若い消費者は、居住空間の雰囲気をより重視し多くの費用をかける傾向にある。レポートによると、60%の家庭で内装予算は20万元(約330万円)を超え、若年層の8割近くが自身でデザインや設計に主体的に関わっている。

自宅のインテリアデザインが自己表現の一つとなり、それぞれの生活空間の位置付けが変化している。リビングルームは来客を迎えるというより、家族のコミュニケーションのためのスペースとなり、ベランダは洗濯物を干すだけでなくレジャー性や娯楽性が求められるようになってきた。また、バスルームは洗練された一人の空間ととらえられている。

リビングルームが書斎のように

インテリアのスタイルも、北欧風、アメリカ風、ミックス&マッチ、さらにはニュートラルなど多様化し、オーナーの個性を反映するようになっている。

新しい消費者層の増加とインターネットにおける消費習慣の確立に伴い、インテリア購入における「意思決定のルート」も大きく変化した。従来は「店舗でスタイルを決める→複数の店舗で価格を調べる→店舗で交渉→発注」という流れだったが、最近は「ネットで好みのスタイルを探す→口コミを確認→ブランドを決定→商品の実物を見る」となっている。意思決定においては、友人、デザイナー、KOL(中国版インフルエンサー)が主要な情報源だ。

従来は、インテリアブランドはディーラーや店舗を通じて販売を行っていたため、購入後のユーザーデータを集めにくく、ブランドロイヤリティやリピート率を高められなかった。大規模店や有名ブランドはEコマースに進出したが、家具やインテリア用品は実物を確かめてから買いたいとの要望があり、カスタマイズや輸送などのコストが高いことから、単純にオンラインショップにするだけではコンバージョンレート(転換率)を上げられなかった。こうした理由で、一兜糖は初期のショッピングガイドやEコマースの形態から、現在のコミュニティコンテンツへと移行したのだという。

一兜糖に代表されるような、インテリアを主軸としたライフスタイル系コミュニティというプラットフォームは、消費者、KOLとブランドをつなぐ役割を担い、コンテンツによって購買意思の決定を支援する。現在、一兜糖は自社ECやコンテンツの運営は行っていないが、インテリア系コミュニティとして、同分野に特化した影響力のあるKOLを育成している。徐紅虎氏によると、一兜糖ではあるKOLが投稿した記事1本の影響で、3000万元(約5億円)分の商品を売り上げた事例があるという。

徐氏によれば、一兜糖が大型の家具等でなくインテリア雑貨をメインにしたのは、ネット向きの商品だと考えたからだという。インテリア雑貨は多品目にわたり、買い替え頻度は家具や家電製品よりも高く、粗利率は40%前後と言われる。オフラインチャネルが主流となっている建材や家具に比べ、インテリア雑貨はEコマース経由の購入が43%に達しており、オンライン販売に適したカテゴリだと言える。

将来的には、家庭向けスマートデバイスも大幅に増加するだろう。インテリアを入り口とした製品やデジタルコンテンツの開発など関連業界にもビジネスチャンスが広がる。

2009年設立の壹糖網絡は現在、登録ユーザー2000万人を擁する。現在の売り上げは主にB2Bサービスによるものだ。これまでエンジェルラウンドで微光創投(Welight Capital)と騰訊大粤網(GD.QQ.com)、またシリーズAで東方富海(ORIENTAL FORTUNE CAPITAL)より合計数千万元の資金調達を受けている。
(翻訳・神江乃緒)

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