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アリババ集団と騰訊(テンセント)がオフラインで膨大な投資を続けている。現在、両社は小売大手のドイツ系企業「メトロ(Metro)」と香港系ドラッグストアチェーン「ワトソンズ(Watson’s)」に注目している。
ブルームバーグは3月20日、シンガポールの政府系投資機関テマセク(Temasek)がワトソンズの株式10%分を30億ドル(約3300億円)で売却することを検討しており、テンセントとアリババが興味を示していると報じた。またブルームバーグは同日、メトロ(Metro)の中国事業売却に関して、テンセントをはじめ「永輝超市(Yonhui Superstores)」、「物美(Wu Mart)」、「蘇寧控股(Suning Holdings)と「中信産業投資基金(CITIC Industrial Investment Fund)」が関心を寄せており、4月にも最初の入札を求めるとも報じた。実はかつて、メトロの潜在的な買い手のリストにはアリババも含まれていた。
ビジネスモデルが全く異なるアリババとテンセントが、同時に同じ2社を買収のターゲットとしたことになるが、その裏にある動機は考察に値する。
この2年、両社はオフラインでの「買収戦争」を繰り広げ、ショッピングモールからスーパーマーケット、量販店まで、オフラインの小売大手企業のほとんどがどちらかの傘下に入った。中国市場でのメトロ中国とワトソンズの業績はここ数年振るわないが、買収されていない中では少数のオフライン優良企業とも言える。
アリババの方向性は、自らのニューリテール(新小売業)帝国を築くという明確なものだ。成熟したオフライン小売業者に大規模な資本参入や買収などを行ってそれらの既存店舗を改造し、完全なニューリテールシステムを構築しようとする。「阿里雲(アリババクラウド)」、「支付宝(アリペイ)」、「淘宝(タオバオ)」、「天猫(Tmall)」などのソリューションを小売業者に提供するだけでなく、サプライチェーン上の支援も提供可能だ。
しかし、小売業者はアリババのコントロールが強すぎることを懸念している。アリババは過去に2回メトロ中国の買収に動いたが、いずれも失敗に終わっている。その大きな原因は経営支配権の争いだった。
さらに深刻な問題は展開開始から2年近くなるニューリテール構想が今まで、既存の小売業者に大きな利益をもたらすことができていないことだ。ニューリテールプロジェクトに参加した「大潤發(RT-MART)」は業績を伸ばしてはいるものの、親会社の「高鑫零售(Sun Art Retail Group)」の不振を救うまでには至っていない。またアリババが最も早く買収した「三江購物(Sanjiang Shopping Club)」も業績は下降している。
テンセントは「京東商城(JD.com)」に投資したことで間接的に小売業に参入した。現在多くのオフライン企業に投資しているのは単純な財務投資ではなく、戦略的考慮があってのことだ。
アリババがオフライン企業を買収してあらゆるカードを揃えてしまう前にテンセントが何もしなければ、ペイメントゲートウェイ、データゲートウェイ、トラフィックゲートウェイなどが全てアリババのニューリテール事業の影響を受けることになる。それは、広告・決済・クラウドというテンセントの三大成長エンジンにとって大きなマイナスだ。昨年、テンセント系である中国ウォルマートがアリペイの扱いを停止した件は、データとリソースにおける両社の争いを象徴している。
企業の経営戦略から見ると、BtoB中心のアリババに対し、テンセントはこれまでBtoCを主軸としていたが、最近BtoBへ動き始めた。2018年テンセントは組織を再編し、テンセントクラウド、インターネットプラス、インテリジェントリテール、教育、医療、セキュリティ、位置情報サービス(LBS)を含むクラウド・ スマート事業グループ(CSIG)を設立した。
このうちインテリジェントリテールでは、テンセントクラウドをベースにした企業版WeChat(微信)、ミニプログラムなと7つのツールをリリースし、小売業者に一連のパッケージツール・ソリューションを提供できるようになった。テンセントの資本参入例から見ると、ソリューションの提供はするものの実際の経営に介入することは少ない。
しかし、大手企業におけるクラウドサービスの利用や、クラウド移行は、かなりコストのかかるものだ。時間も長くかかり、少なくとも1000万元(約1億6000万円)レベルの投資が必要だ。大規模小売企業の株を少量保有して、トラフィック関連の支援しか提供しないテンセントの戦略に対し、株を保有される企業側がそのような費用のかかることを決断するかどうかはまだ疑問が残るところだ。
ブルームバーグ、ロイターの報道によると、ワトソンズとメトロの買収主はまだ決定していない。両社はアリババとテンセントのどちらを選ぶか迷っているのかもしれない。この二大企業がもたらす利点全ては両社が望むものだが、一つを選ぶということはもう一つを捨てるということになるのである。
(翻訳:小林香奈子)
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