シャオミ、スマートグラスを発表:「カメラ機能」が売り、リアルタイム翻訳も

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

シャオミ、スマートグラスを発表:「カメラ機能」が売り、リアルタイム翻訳も

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国大手スマートフォン・IoT家電メーカーのシャオミ(Xiaomi)が3日、同社の出資する企業が開発した初のスマートグラス製品をIoT家電ブランド「MIJIA(米家)」から発表し、クラウドファンディングを開始した。写真や動画を撮影する機能を持つスマートグラスで、開発した企業はシャオミのエコシステムに属する「蜂巣科技(SUPERHEXA)」だ。

製品開発を舞台裏で取り仕切ったのは、過去にシャオミのMi Ecosystem(小米生態鏈)事業部門で副総裁を務め、同スマートフォン事業部でも総経理を務めた夏勇峰氏だ。同氏は2013年にシャオミに入社し、スマートバンドやMIJIAのロボット掃除機など多くのヒット商品を手がけ、20年にスマートフォン「Mi 10 Ultra」を担当したのを最後に退社して起業。ほとんど誰も手がけたことのないカメラ機能を有するスマートグラスの開発に着手した。

Facebookが社名をMetaに変えた昨年以来、中国でもAR(拡張現実)やメタバース関連の起業熱が再燃している。

人類が手にするスマートデバイスがパソコンからスマートフォンへと移り変わるなかで、これまでは手や指が外部との情報交換を行う主要な役割を果たしてきた。しかし、人が情報を収集したり交換したりする本当の基点は頭にある。ARデバイスに代表されるような頭部に装着するデバイスこそが、ウェアラブル型の次世代デバイスとしては合理的な形態だと夏氏は考えた。

ARグラスが採用する3つの表示方式

ARグラスが一般消費者向けに製品化するにあたって最大の制約になっているのが、現在のニアアイディスプレイ技術が視野角(FOV)や薄さ、コスト、輝度などのパラメーターで最適解が得られていないことだ。

現在のARグラス業界が採用するニアアイディスプレイのソリューションは主にプリズム方式、バードバス方式、ウェーブガイド方式の3つで、それぞれに長所・短所がある。

プリズム方式は技術的に比較的成熟しており、3つのソリューションの中で輝度は最高だが、視野角に限りがあり、ユーザーがグラスを通して見る視野がやや狭い。

バードバス方式やウェーブガイド方式はより広い視野角が得られるが、バードバス方式では分厚い光学モジュールが必要となるためグラス自体が大きく重くなる。グラスを薄型化できるウェーブガイド方式は良品率が低く、量産が難しい上にコストもかかる。ウェーブガイド方式のARグラスが高価で入手困難なのはこれが理由だ。

また、バードバス方式やウェーブガイド方式はともに輝度が足りないため、明るい屋外では使えず、屋内での使用に限られてしまう。メーカーによっては輝度を維持するために緑色単色のディスプレイを採用している。

今回発表されたMIJIAブランドのスマートグラスは、量産、コスト、輝度のいずれの条件も満たすため自由曲面プリズム方式を採用している。輝度を最大限補うため、ディスプレイにはソニー製の最新のマイクロOLEDを採用し、自由曲面プリズムを通したピーク輝度を1800nitsにまで高めた。そのため明るい屋外でも使用できる。

光学面の難題以外に、ARグラスはチップや測位技術でも越えるべき障壁がある。搭載するチップの価格を抑える必要があるほか、外界認識能力も備えなければならないのだ。6DoF(3次元動作の自由度)やSLAM(自己位置推定と周辺地図生成)などの技術はすでに成熟しているが、消費電力をより低く、精度をより高くしてARデバイスでパフォーマンスを発揮させるには困難が多い。

コンシューマー向けARのもう一つの形

あらゆる技術的障壁を取り払ったとしても、ARグラスが一般化するまではさらなる課題を乗り越えないとならない。それは「なぜARグラスを使う必要があるのか?」という疑問に答えることだ。

現在市場に流通するARグラスの活用方法には限りがある。一般的なのはリアルタイムナビゲーションやリアルタイム翻訳、プッシュ通知、動画視聴などだ。これらの機能がもたらす体験は決して際立って優れたものではなく、スマートフォンでも簡単に代替できる。

どんなARグラスならユーザーに頻繁に使ってもらえるだろうか?夏勇峰氏が出した答えは、撮影機能だ。

中国以外でも同様の試みを実行した企業がある。SNSのSnapchatを運営する「Snap」は2016年、カメラ機能を売りにしたARグラス「Spectacles」をリリース。21年にはFacebookから改称したMetaがデュアルカメラを搭載したスマートグラス「Ray-Ban Stories」をリリースしている。

MIJIAのスマートグラスはそこから一歩進んで撮影機能の他に、撮影した画像をリアルタイムで見られる機能が備わっている。製品の左側に5000万画素の広角カメラ、光学式手ブレ補正機能を備えた800万画素のペリスコープカメラを搭載し、5倍光学ズームから15倍ハイブリッドズームを利用できるようになった。また、製品右側に搭載された超小型プリズムを通じて100メートル以上先の物体も見ることができる。

カメラの操作は簡単だ。フレームの右側にある超小型タッチパネルを前後にスワイプすればズーム調整、ワンタップで撮影、下にスワイプすると静止画・動画の切り替えができる。

このスマートグラスをさらにカメラに近づけているのが「時光回溯(タイムリバース)」という撮影機能だ。ユーザーがシャッターを切るのが遅すぎてベストタイミングを逃した時のために、その10秒前まで遡った映像を記録しておくことができる。

写真は1種の社交ツールだ。すぐに共有でき、SNSで拡散できる。SnapやMetaがリリースした撮影機能付きのスマートグラスにも裏のセールスポイントがある——撮影した画像はこれらを使って撮影したものだとすぐにわかるような若干の「ゆがみ」があり、撮影してすぐにSnapchatやFacebookに投稿できる。

MIJIAのスマートグラスではより優れたストリーミングメディア体験を提供するために、専用のアプリで撮影素材を確認でき、ワンタップでSNSに投稿できるようになっている。

MIJIAのスマートグラスは撮影機能の他に翻訳アシスタント「小愛翻訳」を内蔵し、中国語と英語を双方向にリアルタイム翻訳できる。インターナショナル版では6言語に対応する予定だ。さらに今年9月にはOTAアップデートが行われ、動物園や植物園の展示物を解説する「植物園・動物園」機能やミラーリング機能などが搭載される予定だ。

リアルタイム翻訳

(翻訳・山下にか)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録