「中科搏鋭」が非侵襲脳酸素モニター開発 脳疾患診療・予防の未開拓市場に挑む

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中国ではここ数年、高齢化、食生活の変化、仕事のストレスなどにより脳卒中の患者数が増加の一途をたどっている。「中国脳卒中予防報告2018年」によると、40歳以上で脳卒中を発症している、または発症したことがある人の数は1242万人で、程度にばらつきはあるものの、治療後の生存者の70%に後遺症が残っている。このため、脳卒中をどう防ぐかに注目が集まりつつある。

脳卒中の予防・抑制の第一歩はモニタリングと迅速な医療介入だ。脳内酸素飽和度は脳組織の酸素需給バランスを示し、臨床診療において大きな意味を持つ。脳酸素化状態のモニタリングと迅速な医療介入により、心臓外科手術後の脳卒中発生率は2%低下するというデータもある。

長年、脳内酸素飽和度は頸動脈・頸静脈にカテーテルを留置し、脳内の血液を採取して血中酸素濃度計で測定する方法がとられてきた。医療機器の開発・製造・販売を手がける「中科搏鋭(CASIBRAIN TECHNOLOGY)」董事長兼総経理の張鑫博士によると、こうした測定方法は難度が高く、大量出血のリスクもあるうえ、採血は侵襲性を有し、リアルタイムでモニタリングをするのは非常に難しいという。このため、同社は近赤外分光法(NIRS)の原理に基づき、中国科学院自動化研究所脳ネットワーク研究センターによる脳構造分野と光学特性分野で積み重ねた技術を組み合わせ、非侵襲的かつマルチチャンネル型、リアルタイムでモニタリングできるポータブル脳酸素モニターと装着式脳酸素モニターを開発した。

中科搏鋭の製品

従来の測定方法に対して、非侵襲脳酸素モニターは脳の血中酸素飽和度、組織酸素飽和度、動脈血酸素飽和度をリアルタイムかつ連続的にモニタリングすることができる。幅広い診療科の臨床に応用できるほか、高所や低酸素環境、血液循環状態の急変など特殊な状況下での脳酸素モニタリングも可能だ。

同社は現時点で特許権4件、ソフトウェア著作権2件、実用新案権1件を有している。また、同社の非侵襲脳酸素モニター製品は2017年8月に北京市食品薬品監督管理局から「革新的医療機器製品」として認められており、医療機器登録証取得プロセスで優遇されるという。

張氏は今後の市場戦略について、モニタリング後も医療介入が必要と考えられることから、当初は医療機関内での利用に焦点を当て、臨床試験を行う病院を徐々に増やしていく考えを示した。市場規模に関しては、脳酸素モニターはすでに循環器科、神経科など多数の診療領域で活用されており、関連設備と消耗品で数十億元(約340億円以上)の市場になると指摘。さらに、中国には脳卒中ハイリスク群が5000万人いるとされており、装着式機器のポテンシャルも非常に大きいとして、市場規模は全体で100億元(約1700億元)を超えると見込む。

脳疾患の診療・予防には政策面の後押しもある。脳科学と脳研究は国務院が2016年に発表した「科学技術のイノベーション2030-重大プロジェクト」に含まれていたほか、第13次5カ年計画(2016~2020年)の国家重大科学技術プロジェクトのひとつにも挙げられている。

現在の市場を見渡す限り、中科搏鋭に匹敵するような成果はまだ少ない。張氏によると、学会や業界は長年にわたって心臓や呼吸器に高い関心を寄せ、脳の研究が成熟するのは比較的遅かった。臨床段階にまで進む研究はさらに少なく、医療機器まで落とし込まれるのはごくわずかだという。非侵襲脳酸素モニターという限られた分野についていえば、市場はまだ初期段階にあり、アイルランドの医療機器大手メドトロニック、米CASメディカルシステムズなどの製品も中国に入ってきたのはここ2年のことだ。

中科搏鋭はこれまでに、エンジェルラウンドでハードウェアスタートアップに特化した投資会社「中科創星(CASSTAR)」から、シリーズPre-Aで「明勢資本(FutureCap)」から資金を調達している。張氏は、脳酸素モニターの医療機器登録、生産拠点の建設、製品の広告宣伝、製品の研究開発などのためとして、今年5月に新たな資金調達を行う計画を明らかにしている。
(翻訳・池田晃子)

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