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BYD(比亜迪)とCATL(寧徳時代)は、中国の新エネルギー業界におけるツートップであり、新エネ事業を手がける中国企業として時価総額が1兆元(約20兆7000億円)を超えたことのあるたった2社の成功者だ。特にCATLは長らく時価総額1兆元超を維持しており、中国語の社名が「寧徳時代」であることから「寧王」とも呼ばれている。
多くの人はBYDといえば自動車メーカー、CATLといえば電池メーカーだと考えているだろう。しかし実際、両社はより大きな新エネルギー産業のくくりで自社の領地を拡大することに大々的に力を注いでいる。つまり、両社の間の競争は単純に電池メーカーとして、あるいは自動車メーカーとしての競い合いではなく、駆動用バッテリー、新エネルギー車、蓄電、その他諸々を含めた産業全体をめぐる勢力争いなのだ。
新エネ車:自社生産を優位性に勝負VS投資によるオールラウンダー
BYDとCATLの競争は車載電池分野だけでなく、新エネルギー車分野にまで及んでいる。
BYDは新エネルギー車メーカーとしては最大手で、中国では9年連続で販売台数1位を記録している。21年の販売台数は前年比230%増の60万台に迫り、市場シェアは17.1%だった。
今年7月の販売台数は前年同月比183.1%増の16.25万台。月間販売台数で再び最多記録を更新した。さらに、今年上半期の新エネルギー車の販売台数はテスラを抜いて世界首位となっている。
新エネ車でトップの座を維持しながら車載電池事業も拡大を続けるBYDと同様、CATLも自分の電池覇者の地位を固めながら新エネ車事業の拡大に勤しんでいる。
新興EVブランド「AVATR(阿維塔)」が8月8日、初製品となるSUVクーペ「Avatr 11」をリリースして市場の注目を集めた。同製品はCATLの電池を搭載しているが、CATLは発売元の「阿維塔科技(Avatr Technology)」の主要株主でもある。
阿維塔科技は今年3月末に戦略投資を受け、資本金を2億8800万元(約59億円)から11億7200万元(約242億円)に増資。CATLは持ち株比率23.99%で第2位株主となった。また直近に実施したシリーズAでも25億元(約515億円)を調達し、CATLの持株比率は17.1%に下がったが、第2位株主であることは変わらない。
さらに、CATLは昨年8月にも他の出資者とともに新興EVブランド「ZEEKR(極氪)」と株式譲渡契約を結んでいる。ZEEKRは株式総額の5.6%に相当する5億ドル分(約716億円)、約1億2600万株の優先株式の発行・割り当てを実施した。これら以外にも「哪吒汽車(NETA)」「愛馳汽車(AIWAYS)」「北汽藍谷(BAIC BLUEPARK)」「VALMET」などの新エネ車メーカーに立て続けに投資している。
こうした一連の投資活動により、CATLの新エネルギー車事業はローエンドからハイエンドまで幅広いブランドを網羅し、オールラウンドで戦う意向が見て取れる。短期スパンで見るとこれらの新興メーカーがCATLの業績にどれほど貢献するかは未知数だが、同社の電池覇者としての地位はさらに固まることが考えられ、今後の新エネ車事業にさらなる可能性ももたらすだろう。
蓄電製品:世界シェア1位VS全面海外志向
新エネルギー産業関連で、あまり目立たない存在なのが蓄電事業だ。
実際には新エネ車に次いで大きな市場に拡大しそうな分野で、遥かに大きく成長できる潜在力を秘めており、BYDやCATLは同分野でも正面対決を避けられないようだ。
CATLは創業当初から蓄電事業を手がけてきた。ただし14年から19年の6年間は蓄電池事業の売上高が全体の5.5%を超えることはなく、業績には波があった。
しかし、21年に入ると同事業は爆発的に成長。世界の蓄電池市場で初めてシェア1位となり、売上高は前年比601.01%増の136億2400万元(約2810億円)にまで成長して同社の売上高全体の10.45%を占めた。
一方、BYDも蓄電事業で手を抜かない。売上高については明らかにしてはいないが、21年の年次報告書を見れば、BYDの二次電池・太陽光発電事業の売上高は164億7100万元(約3400億円)で、売上高全体の8%を占めていることがわかる。
そのBYDは8月3日、国有電力会社「大唐華銀電力(Datang Huaying Electric Power)」耒陽支社による「設備容量200MW/400MWhの新蓄電所建設プロジェクト」を約7億元(約144億円)で落札したと発表した。
事実、BYDは蓄電分野で世界最先端のソリューションプロバイダーの1社だ。その蓄電関連製品は米国、ドイツ、日本、スイス、カナダ、豪州、南アフリカなどに輸出され、中国「国家電網(State Grid)」や「中国広核集団(CGN)」、米「シェブロン」、独「Fenecon」、太陽光発電製品などを手がける日本の「A-スタイル」などを主要顧客としている。
21年の年次報告書によると、BYDはブレードバッテリーや蓄電製品などの研究開発費に100億元(約2000億円)近くを投入した。ここからも蓄電事業を重視していることがうかがえる。
より広い「領土獲得」へ
駆動用バッテリー、新エネルギー車、蓄電製品の3事業以外に、CATLもBYDも新エネルギー産業でより手広く事業を展開しようと考えている。
CATLは投資事業を通じて鉱物・リチウムなどの川上産業から充電・電池交換などの川下産業までを網羅し、BYDは同じく投資事業を通じて車載チップやパワートレイン(動力伝達系統)、駆動モーターなどEVの各部品を抑えて自社の領土を拡大している。
脱炭素を目指す「ダブルカーボン(双碳)」政策が進められる中国で、BYDもCATLも無限の可能性を有している。中国の新エネ産業で最終的に誰が頂点に立つかは時が教えてくれるだろう。
原文:WeChat公式アカウント「零碳風雲(ID:case-study)」
(翻訳・山下にか)
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