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「シャオミは大型家電を今後10年続く発展計画の重要なピースのひとつとする」。中国スマートフォン大手、シャオミ(小米科技)の雷軍(レイ・ジュン)CEOは4月23日、高らかに宣言した。
雷氏はスマホ業界での成功を大型家電市場で再現することを目論んでいる。同氏は「9年前に我々がスマホ業界にもたらした変化と同じように、より多くの家電を相互接続できるスマート製品に変えていきたい」と語った。
だが、シャオミのスマホでの成功を白物家電業界で再現するのは容易なことではない。スマホ市場の縮小を受けて、同社は次の成長分野を探し出し、売上を維持して株価を下支えする必要に迫られているという方が解釈として合理的だろう。
大型家電市場にシャオミを受け入れる余地はあるか
中国の家電大手3社の2017年決算によると、珠海格力電器(グリー)と美的集団(Midea Group)のエアコンの粗利益率はそれぞれ37%と29%、ハイアールの冷蔵庫・エアコン・洗濯機の粗利益率はいずれも30%以上だった。ハードウェア事業の粗利益率がわずか8.7%のシャオミにとって、粗利益率が高い家電市場に飛び込むことは道理にかなっているとも言える。だが、昨今は大型家電市場進出をめぐる条件が厳しくなっている。
中国の家電大手は数十年にわたって市場を開拓してきており、ブランド力は各社の強固な砦となっている。ともすれば10年ほど使う大型家電の場合、消費者が数百元(約数万円)高くても一流ブランドの製品を購入するのは自然であり、合理的な選択だ。シャオミが市場を活性化する存在になりたいと願っても、主流に食い込むことすら非常に難しいおそれがある。IoTに便乗してブランドを急成長させることはさらに厳しいだろう。
また、消費のアップグレードは進んでいるものの、大型家電市場は、全体としては縮小している。スマートホーム分野のビッグデータソリューションを手がける「奥維雲網(AVC)」がまとめたデータによると、2018年のエアコン市場は明らかに減速し、下半期には4ヶ月連続で前年同月を下回った。洗濯機の販売台数も前年比わずか0.4%増にとどまっている。こうしたパイを奪い合う局面では、シャオミの売上は多少増える可能性があるとしても、利益はますます薄くなるだろう。
シャオミが手がけるインターネット接続可能なテレビが家電大手の「四川長虹電器(CHANGHONG)」やハイセンス(海信)の牙城を崩したようにみえるのは確かだ。年間販売台数は840万台に達し、業界での逆襲の一例となった。だが、テレビ自体はコンテンツとハードウェアの結合体であり、消費者がお金を出したのはコンテンツの方だったということに注意すべきだ。現状をみる限り、「スマートホーム」、「IoT」などの概念は消費者のニーズに応えられていない。こうした厳しい状況の中でシャオミが自身のブランドを打ち立てるのは非常に難しいだろう。
IoT、夜明け前の暗闇
IoTに話を戻そう。シャオミや「楽視グループ(LeEco)」がテレビ製造を手がける理由は典型的なインターネット目線のロジックだ。ハードウェアを集客ツールとして課金につなげるというもので、テレビにはこの手法が通用する。
シャオミが大型家電に乗り出すのもスマートホームへの足がかりを作るためだ。米グーグルのアンドロイドのようなプラットフォーム、またはクローズドループ型システムを構築したのち、ソフトウェアやサービスに課金しようとしている。
だが、シャオミがこうしたエコシステムを形成する上で、エアコンや洗濯機が役に立つだろうか。大型家電に広く普及するようなスマート化の場面を生み出すことは難しい。アプリで温度を調節するためにスマート冷蔵庫を購入する人は少ないだろうし、遠隔操作できる洗濯機のニーズはもっと少ないだろう。雷氏が言うところの「5G+AI+IoT」というスーパーインターネットはまだ見通しが立っておらず、IoT分野のキラーアプリケーションはまだ影も形も見えない。
短期的には、シャオミが大型家電でIoTの恩恵に与れるかどうかは定かでなく、エアコンや洗濯機は大手他社製品と本質的に変わらないものになると考えられる。インターネットはインターネット、洗濯機は洗濯機へと原点に戻るべきだ。資本市場はシャオミにどれくらいの猶予期間を与えられるだろうか。
(翻訳・池田晃子)
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