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中国発のグローバルファストファッションブランドSHEINがこのほど、英国のファッション小売業界向けメディア「Drapers」の取材を受けた。SHEINがマスコミ取材に応じるのは極めてまれだ。創業者の許仰天(Chris Xu)氏は組織を静かに育むことに集中し、同業者同士の交流であれマスコミ取材であれ、あらゆる外部の視線にさらされることを拒んできた。
しかし、すでに評価額が1000億ドル(約13兆6700億円)に達し、世界で最も価値のあるユニコーン企業にまで成長してきたSHEINは、集まる注目をもはや回避できなくなった。外部に対してより多くの情報を公開し、さまざまな疑問の声にも応えていかなければならない。透明性をもって初めて持続的な信頼を得ることができるからだ。
今回のDrapersのインタビューでSHEINをめぐる批判を始め、同社の基本情報、商品の配達や価格、技術イノベーション、サプライチェーンの透明性、将来の展望などについて明かされた。以下、インタビュー内容に筆者による独自の見解を交えてまとめている。
上篇:SHEINの神秘性・基本情報・製品の配達スピードと価格競争について
技術によるイノベーション
SHEINが有するサプライチェーンの柔軟性は、サプライチェーンのデジタル化を実現した点に特に現れている。これこそがSHEINによる技術イノベーションだ。Lin氏の説明では、SHEINは自社で開発したITツールの使用権限をサプライヤーに付与し、正確な計画生産を実施したりスケジューリング効率を上げたりするのに役立ててもらっている。例えばサプライヤーの工場では在庫数、受注件数、サイズ比率などの受注情報をオンラインでリアルタイムで照会でき、工場の稼働率を算出したり、現在の生産量を算出することで受注量を最適化したり納期を確約したりできるようになる。
SHEINはサプライヤー工場の改装資金も自ら提供している。SHEINの公式情報によると、今年7月、300社以上のサプライヤーに工場改装用の資金として合計約1500万ドル(約20億円)を提供した。11月初め時点で20社のサプライヤーが合計6万平方メートル分の工場棟を増築したという。
筆者がSHEINのサプライヤーに取材したところ、いずれもSHEINに対する満足度は高いとの回答だった。SHEINからの発注ボリュームも十分で、支払いサイトも短く、支払い遅延もほとんどないという。一部のトップサプライヤーはSHEINの支援でIT化が大きく進み、マネジメント効率も大幅に上がったという。本来であれば独力で進めるべきだったところがSHEINの資金や開発力に支えられ、大きく生産性を上げる結果につながった。
サプライチェーンの透明性
サプライチェーンの透明性は、SHEINがこれまでずっと批判を受けてきた部分だ。自社のエコシステムに属するサプライヤーの数やその所在地、サプライヤーのランク付けやランクごとのサプライヤーの状況については一貫して明かしてこなかった。
Lin氏が今回の取材でこの問題に正面から回答することはなかったが、サプライヤー管理に関しての自社の取り決めについては以下のようなものを明かした。
(1)SHEINは2010年に米カリフォルニア州で制定されたサプライチェーン透明法のような現地の法律法規を遵守するよう継続して努める。
(2)SHEINは21年7月に「責任ある調達」に関する評価システム(SHEIN Responsible Sourcing evaluation system、SRS評価システム)を開発し、サプライヤーの行動規範・健全性・安全・環境・ワーカー・社会福祉などに関するコンプライアンス基準を同システムに盛り込んでいる。
(3)SHEINはTUV、ITS、SGS 、Openviewなどの独立した第三者機関と提携し、サプライヤーに対して月ごとに抜き取り検査を行い、コンプライアンスを確保している。違反のあったサプライヤーについても、改善のための一定の猶予機関を設けている。違反を重ねるサプライヤーについてはペナルティを課すか、取引を終了する場合もある。21年10月から22年9月にかけ、SHEINは第三者機関に委託する形で2600回以上のサプライヤー審査を行っている。
サプライヤー管理以外に、今年はサステナブル商品の新コレクション「evoluSHEIN」の発表やCO2排出削減目標の設定など、持続可能な成長に向けたアクションも起こしているとLin氏は強調した。
「デザイン盗用」から脱却
SHEINは21年1月に「SHEIN X」プロジェクトを始動し、世界中の若手デザイナーにオリジナルブランドの立ち上げ支援を実施している。
同プロジェクトではデザイナーが商品デザインを、SHEINが生産と販売を担う。デザイナーはSHEINと長期契約を結んで、自身の担当商品の売り上げから10%のコミッションを得られる仕組みだ。
例えば英国では80人以上のデザイナーがSHEINと提携している。中でもノーリッチ芸術大学出身のBecki Ball氏が設立したインディー系ブランド「BECCI」は最も有名な成功例だ。
SHEIN XプロジェクトがSHEINにとって極めて重要なマーケティング活動であることは明らかだ。世界中の新鋭デザイナーを支援できるだけでなく、SHEINにまとわりつく「デザイン盗用」のイメージも脱却できる。
将来の展望
今後の展開については、市場の需要に応じて新しい商品カテゴリーを増やすとLin氏は明言した。
オフライン展開については、ポップアップストアの出店は続けるものの、常設店を出す計画はないと断言。オフライン店舗はあくまで消費者に商品に触れてもらうためのものだとした。
SHEINは11月13日に東京に世界初の常設店をオープンさせた。店内には商品が陳列されるが、実際に購入したい場合はQRコードからオンラインに移行して買うことになる。つまり同店は常設店舗ではあるものの「無期限のポップアップストア」といった性質のもので、ZARAやh&mの店舗とは完全に異なる。こうした意味でSHEINが実店舗を設ける計画はないというのは確かだろう。
原文:WeChat公式アカウント「博一大叔」(ID:kjds360)
(翻訳・山下にか)
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