目の前に仮想巨大スクリーン。映画鑑賞用ARグラス、ファーウェイなどが商品化

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「ARグラスを使って映画鑑賞」。昨年から今年にかけ、ARグラスの新たなセールスポイントとして「映画鑑賞」にスポットが当たりはじめた。

中国の通信機器大手ファーウェイが昨年12月26日、スマートグラス「Huawei Vision Glass」を発売した。定価は2999元(約5万7000円)からとなっている。製品最大のセールスポイントは映画鑑賞ができることだ。両眼にMicroOLEDディスプレイを採用したことで、目の前に最大120インチの仮想スクリーンを出現させられるという。

ファーウェイのVision Glassに先駆けて「雷鳥創新(Thunderbird Innovation)」や「Nreal」もそれぞれARグラスを発表している。中でも「雷鳥 Air 1S」は光学エンジンのBirdbathとMicroOLEDを組み合わせた技術ソリューションを採用し、130インチの高精細巨大仮想スクリーンを実現したとアピール。映画鑑賞、ゲーム、ドローン、スマートコックピットなどさまざまなシーンで利用できるという。

Nrealの製品「Nreal Air」

Nrealの「Nreal Air」も「ARグラスが実現 巨大スクリーンのあるスタイリッシュな生活」と打ち出し、宣伝活動でもARを活用した映画鑑賞体験を強調している。さらに、新興EVメーカー「NIO(蔚来汽車)」と共同で車載用ARグラス「NIO Air AR Glasses」も開発しており、車内シアターをメインコンセプトに掲げている。最近発表されたNIOのフラッグシップSUV「ES8」第2世代にはインフォテインメントコンソール(出入力装置)「N-BOX」が標準装備となっているため同時に4つのARグラスに接続でき、それぞれに最大201インチの仮想スクリーンがあてがわれるという。

映画鑑賞のためだけのARグラスは、数年前なら役不足だと捉えられていただろう。ARグラスには無限の将来性が眠っているように見える。一方で、過去数年にわたり、ARグラスは実用化に向けた技術・製品・シナリオの統合などに関する多くの問題に直面してきた。

「AR映画鑑賞」の主役は大型仮想スクリーンだ。映画鑑賞に焦点を絞ることで、ARグラスに求められてきた性能や複雑な設計に対するハードルは大きく下がった。ケーブル接続を主体とできるため、「光学ディスプレイ」に一層力を注げるほか、技術的難易度も軽減され、製品重量も軽くできる。装着感は普通のメガネに近づき、ARグラスの近視野ディスプレイはその他の表示デバイスに比べ、より没入感のある視聴体験を提供できる。コンテンツとしては、2D映画は既存リソースとしてすでに十分に豊富だ。

上記に挙げたような最新のARグラスは大胆な引き算の発想をもって表示性能と映画鑑賞用途に的を絞り、製品設計も普通のメガネに近づけ、ARグラスが消費者向けマーケットで普及する可能性を大きく広げた。

ウェアラブルデバイスとしての側面で見ると、最近リリースされた各社のARグラスの外観はサングラスに近づいている。

Rokidの製品「Rokid Air」

映画鑑賞に使うなら軽さも求められる。映画1本の長さが90〜120分だとして、ARグラスが重すぎれば視聴体験に悪影響を及ぼす。

各社の公式データによると、Nreal Airは79g(ケーブルとノーズパッドを除く)、雷鳥Air 1Sは本体重量(ケーブルとフロントカバーレンズを除く)は 82g、Huawei Vision Glassの本体重量は112g(ケーブルを含む)で、一般的な近視用メガネやサングラスよりはまだ重いが、これまでのARグラスと比べればこの軽さは大きな強みとなる。米Magic Leapの「Magic Leap 2」は本体重量が 260g、米マイクロソフトの「HoloLens 2」などは566gだ。

低精細巨大スクリーンVS高精細ミニスクリーン

メーカーは常々、現在のARグラスを「ポケットサイズの巨大スクリーン」と形容し、持ち歩きやすさとスクリーンの大きさの2点をセールスポイントとして強調する。しかし、これは1種のミスリードだ。

Nrealの例を見てみると、130インチの仮想スクリーンに実際に映像を投影するには4メートルの距離が必要だ。また、解像度は1080pクラスといっても、大画面では映像の鮮明さに限界がある。近視野ディスプレイの特徴を活かしたARグラスは確かにテレビやスマートフォンとは異なる視聴体験をもたらしてはくれる。しかし、ARグラスと同じくモバイルデバイスであるスマートフォンは、フラッグシップクラスの主要機種ならばHDR、Dolby Vision、サラウンド音声などより高品質の視聴体験を提供できる。ユーザーの利用習慣から見ても利便性から見ても、ARグラスよりもスマートフォンを使った視聴がはるかに優れている。

また、Nreal Air、雷鳥Air 1S、Huawei Vision Glassなど現行の映画鑑賞用ARデバイスはいずれも 、映像を出力するためにスマートフォンやパソコンにケーブル接続する必要があり、互換性のあるデバイスが限られているため、ターゲットユーザーは大幅に絞られてしまう。

ケーブル接続が必要なNrealの「Nreal Air」

ケーブル接続はユーザーフレンドリーではない。使うたびにケーブルを繋ぎ、スマートフォンやパソコンで何らかの操作をしなければならず、使い終わればケーブルを外さなければならないからだ。

現段階ではこれらのARグラスは1種の新体験という捉え方が強い。 面倒な操作や限られた用途のせいでユーザーからお払い箱にされてしまう可能性も大いにある。

原文:WeChat公式アカウント「雷科技(ID:leitech)」

(翻訳・山下にか)

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