「匯智星源」がAIロボットで法律相談、弁護士不足解消に挑む

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「匯智星源」がAIロボットで法律相談、弁護士不足解消に挑む

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中国の司法当局が今年3月に発表した最新データによると、2018年末時点で中国国内には開業している弁護士が42万3000人おり、弁護士事務所が3万カ所以上あるという。全国の弁護士が処理している各種の案件は1068万件を超えている。弁護士の仕事量は非常に多く、その人手不足が業界でも問題になっている。

庶民や中小企業は法律トラブルにあった際に、どこでどのようにふさわしい弁護士を見つければよいのかわからない。そのため、「找法網(Findlaw)」、「華律網(hualv.com)」、「律灯網(lvdeng66.com)」などオンライン法律相談サービスを提供するサイトが登場した。しかしこれらのサイトでも最終的には弁護士が聞き取りを行うため、弁護士不足の問題を解決することは困難だ。

AI(人工智能)によるスマート化製品が人間の一部の仕事を肩代わりをすることは、これまでも効率アップや人手不足解消のための重要な方法の一つとみなされてきた。「天津匯智星源信息技術有限公司(Tianjin Huizhixingyuan Information Technology)」(以下、匯智星源)は「AI+法律」で法律相談サービス分野に参入。主力製品の公共法的サービスロボット、オンライン公法サービスバーチャルロボットなどはすでに天津市、重慶市、江西省、遼寧省などの検察院で利用されている。

公共法的サービスロボット

匯智星源は2017年11月に設立。法律に関係する分野の公共サービスを提供するAI企業だ。自然言語理解(NLU)や、ナレッジグラフ、転移学習などの中核技術を持ち、これら複数の技術を合わせてAIとクラウドセキュリティのプラットフォームを開発。このプラットフォームは人間が音声入力した法律に関する質問を自動で識別、回答することが可能だ。

小智問答アプリ画面

匯智星源が採用しているのは転移学習に基づく公共法的サービスの自然言語理解(NLU)アルゴリズムだ。このアルゴリズムの強みは汎用データを使ってAIエンジンを訓練しさえすれば、AIエンジンを専門分野で利用することができ、自然言語処理のためのディープラーニングモデル、「教師なし学習(Unsupervised Learning)」,プレーンテキストコーパスを利用した事前学習も可能で、専門分野の業務でも人の手によるデータのラベル付けをほとんど必要としないという。

同社創業者の余梓飛氏によると、現在国内における自然言語処理は主に深層学習を元にしており、大量のデータのラベル付けを必要とする。開発コストが非常に高いため、大規模な普及は難しいという。なお、同社はすでに公共法的サービスのナレッジグラフを構築しており、例えば、ある法律問題の問い合わせに対して解答できるだけでなく、対応する法律条文や文書テンプレート、手続きプロセスや該当分野の弁護士を紹介することも可能だという。

現在、同社の顧客は公安局、検察院、法院(裁判所)など公的機関に集中しているが、次は企業向け市場を開拓予定だ。

匯智星源の調査によると、中小企業の毎年弁護士にかかる費用は一級都市で5万元(約78万円)前後、二、三級都市でも2万元(約31万円)前後だといい、法律相談のコストは高い。同社の開発したアプリ「小智問答」は基本的にこれらの企業の法律相談ニーズを満たすことができ、価格も安い。弁護士事務所も、今までは毎日大量の基本的な法律相談に多くの労力をかける必要があったが、AI法律ロボットは弁護士事務所がこれらの業務に対応する際の補助と、事前に案件の分類を行うことが可能だという。

創業メンバーの大部分はかつて、AIやビッグデータを利用して防犯ソリューションを提供する「天地偉業(Tiandy)」に勤めていた。創業者である余氏は天地偉業で研究開発総経理、マーケティング総経理を務めたことがあり、最高人民検察院の専門家メンバーでもある。チームは以前、法廷や公安局の取り調べで使用されるハイテク製品と録音録画製品などを開発しており、どれも市場で高いシェアを占めていた。2000カ所以上の公安局や法院、検察院にサービスを提供した実績がある。(翻訳・山口幸子)

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