TikTok上にあふれるオンライン教育の広告、顧客獲得に総力を挙げる業界の焦り

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TikTok上にあふれるオンライン教育の広告、顧客獲得に総力を挙げる業界の焦り

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このところ、TikTokでオンライン教育機関の広告が目立つ。実際に2018年末から2019年上半期にかけて、大手数十社を含むオンライン教育機関1500社あまりが、TikTok上でインフィード広告を開始した。

顧客を獲得するために、各社は糸目をつけずに大金を投じている。その額は1カ月に数十万元(数百万円)から数億元(数十億円)まで、実にさまざまだ。この背後にはオンライン教育業界全体の焦りがある。業界の上位に食い込むことができなければ、投資機関から注目されず、生き残るための資金を得ることができないからだ。

この3年で、オンライン教育業界はブルーオーシャンからレッドオーシャンへと急速に様変わりしてきた。業界全体が再編期を迎えており、トップ企業だけが資金を調達して生き延びることができる。投資家に注目してもらおうと、各社はこぞって事業の大規模化を進め、必死に顧客をかき集めているのだ。

なぜTikTokなのか

モバイルインターネットは後半戦に突入し、トラフィックの構図にも大きな変化が訪れている。

データ:QuestMobile

かつての覇者バイドゥは大きく減速、テンセントもユーザー体験を重視するため露骨な商業化を進められず、我慢の日々を強いられている。どちらも、トラフィックを無限に欲するオンライン教育機関のニーズをもはや満たすことはできない。そこで白羽の矢が立ったのが、商業化を急速に進めるバイトダンス系列のTikTokだった。

バイトダンス系アプリのデイリーアクティブユーザー(DAU)は4億人以上、月間アクティブユーザー(MAU)は8億人以上に上る。TikTokは、そのうちの国内DAU2億人以上、MAU4億5000万人以上を占めている。

ユーザーの使用時間が長いことも重要なポイントになる。それだけ広告の露出が増えるからだ。調査会社「QuestMobile」の調べでは、2019年3月、ユーザーのアプリ使用時間全体のうち、バイトダンス系アプリの使用時間が占める割合は、前年同期比3.1%増の11.3%だった。それに対し、テンセント系アプリの使用時間が占める割合は3.7%減少した。

これ以外にもTikTokには費用対効果が高い運用型広告と、同社が開拓を進めるローエンド市場の膨大な新規ユーザーという強力な武器がある。

あるオンライン教育ユニコーン企業の市場責任者は「今年の夏期講習では、受講者全体の60%がTikTokの広告によるものだ」と語る。

恒久的な解決になるのか

新規顧客の獲得はオンライン教育業界全体の大きな課題となってきた。巨額の売上高を誇るユニコーン企業であっても、新規顧客獲得のコストが客単価の半分、もしくはそれ以上を占めることも珍しくない。

そのため社会現象を引き起こすような新しいプロダクトは、教育機関にとってトラフィックの密集地であり、最大のアクセス効果を獲得すべく先を争って攻略に乗り出すのだ。

次々に出現する第2、第3の「TikTok」に望みを託す教育機関だが、業界全体が集団戦に参入し、トラフィック争奪戦が激化すれば、また次のラウンドの戦いが幕を開けるだけだ。

顧客獲得のプレッシャーを抱えるオンライン教育機関の中には、「教育」という本質を見失い、サービスや教育商品のブラッシュアップに投資するのではなく、新たなトラフィック獲得のために大金をつぎ込む事態に陥ったところもある。

TikTokやそれに類似するプロダクト頼みの戦略も、その場しのぎに過ぎない。オンライン教育機関が資金の多くを教育研究や教師の育成体制、学習体験の構築に充ててこそ、業界の健全な成長が促される。
(翻訳・畠中裕子)

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