NBA放映権争い、勝者はテンセントかアリババ・蘇寧スポーツ連盟か

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米プロバスケットボールNBAのファイナル(決勝)が先月幕を下ろした。トロントを本拠地とするラプターズが新チャンピオンとなったが、スポーツのネット中継を手がける各社の戦いは始まったばかりだ。

翌シーズンの放映権争いが幕を開けた。中国IT大手テンセント(騰訊)が2015年に獲得した中国のデジタルメディアにおけるNBAの独占放映権が2020年1月に期限を迎えようとしており、残された時間はわずか半年。翌シーズンの放映権をめぐって同社と争うと見られているのは、動画共有サイト「優酷(YOUKU)」を傘下に持つアリババと、スポーツ中継アプリ「PP体育」を傘下に持つ家電量販大手「蘇寧易購集団(SUNING)」だ。優酷とPP体育はスポーツコンテンツを共同運営するなど、提携関係にある。

アリババと蘇寧の両社は、各自が傘下にもつスポーツ事業を統合し、合弁会社を設立するという情報も最近になって聞かれている。両社から公式のコメントは発表されていないが、スポーツコンテンツの放映権をすでに共有しているこの2社が今後もタッグを組み続ければ、動画プラットフォームにおけるスポーツという分野の競争はより激しさを増すかもしれない。

アリババがスポーツを通して集客を試みるのは目新しいことではない。2018年、アリババ傘下の優酷が16億元(約250億円)でサッカーワールドカップのメディア放映権を購入したことからも明らかだ(この16億元(約250億円)という数字に関して優酷は公式に認めてはいない)。ワールドカップ以外にも、「アリババ・蘇寧スポーツ連盟」はサッカーの重要な試合の放映権をほぼ網羅している。

対して、テンセントの重点はバスケットボールにあるようだ。NBA以外にも同社は、中国で今年開催されるバスケットボールW杯の独占デジタルメディア放映権を保有している。

「アリババ・蘇寧スポーツ連盟」はNBAの放映権をめぐって、テンセントと全力で争うのか。これは業界における重要な転換点になってくる。

価格上昇が業界の悩みの種に

大企業が大挙してスポーツのネット中継分野に参入することで、放映権の価格が上昇している。

サッカーの英プレミアリーグを例にとってみよう。2012年10月、「新英体育(supersports)」は10億元(約157億円)で2013年から2019年の独占放映権を獲得。平均すると1年あたり1億7000万元(約26億円)だ。そしてそれからわずか4年後、「蘇寧体育(Suning Sports)」が50億元(約785億円)で2019年から2022年までの全メディア独占放映権を獲得したのだ。平均すると1年あたり16億7000万元(約262億円)。つまりこの4年間でプレミアリーグの放映権は年平均で10倍も値上がりしたことになる。

放映権価格の高騰はスポーツ中継の参入企業にとって大きなプレッシャーとなっている。

収益化への道を探る

高額な放映権料を背景に、企業がどのように利益を上げるかが大きな課題となっている。主要な企業は、より多様な収益化の道を探っているところだ。これ以外にも既存のユーザー規模を充分に利用する方策も課題だといえよう。

■高額な会費

アリババ系の優酷、テンセント系の「騰訊視頻(テンセントビデオ)」はいずれも普通会員に比べ、スポーツ会員の費用を割高に設定。最も基本的なプランでも普通会員より20%~70%も高い。この価格差は高額なスポーツコンテンツから利益を生み出す難しさを反映しているのと同時に、特定分野のユーザーグループからの収益化という大きな可能性が存在することも証明している。

■より多くの会員モデル

普通会員に比べてスポーツ会員の制度はより複雑だ。優酷、PP体育とテンセントビデオはそれぞれスポーツ会員をランク分けしており、ランクごとに異なるサービスを提供し、それに応じた会費を取っている。

例えばテンセントビデオの場合、普通会員はNBAの試合を1つしか見ることができないが、プレミアム会員ならば全てのNBAの試合を見ることができる。優酷の場合、普通会員はひと月当たり6試合しか見ることができないが、プレミアム会員ならば全ての試合を生中継で見ることができる。さらに、サッカーに関しては国内試合とプレミアリーグでも会員カテゴリが分かれており、それぞれ観戦可能な試合が異なるのだ。

より多様な会員制度を通して、スポーツ中継のプラットフォームは既存ユーザーの規模を存分に利用できるとともに、アクティブユーザーから有料会員への転換を最大限実現することで、売り上げを増やし、黒字化への可能性を生み出している。

テンセントVSアリババ、勝敗の行方は

■テンセントがスポーツ分野でもつ強み

調査会社「QuestMobile」のデータによれば、テンセントのスポーツ関連事業「騰訊体育(テンセントスポーツ)」は過去1年間で比較的安定した成長を実現しており、今年の5月までに月間アクティブユーザー(MAU)は4771万と他社を大きく引き離している。

しかし、ネット中継に関しては、優酷の存在を無視することはできない。昨年の戦略的投資によって、多くのコンテンツを有する蘇寧と多くのユーザーを有する優酷が強力なタッグを組んだからだ。これにより勝敗の行方はわからなくなった。

競争の激化で放映権の価格が急上昇している現状は全ての関係企業にとってダメージである。高価格で独占放映権を手に入れれば、どの企業であっても大赤字になる可能性が大いにあり、債務超過に陥った「楽視体育(Le Sports)」の二の舞になりかねないからだ。

NBAはあくまで一つの例にすぎない。NBAの放映権が決まっても、オリンピックなど注目される競技大会は今後も目白押しだ。インターネットの発展にともない、スポーツ観戦の形態がテレビから、オンラインに移り変わることは必須であり、競争の時代はすでに始まっているのだ。

そして、この放映権争いも簡単には終わらないだろう。その背後にあるのは単にスポーツだけではない。そこにはインターネット集客の入り口、特定分野のユーザーの発掘、膨大なユーザーの行動データおよび、大手企業のインターネットエコシステム全体に対する布陣など、多くの要素が絡んでいるのだ。
(翻訳・山口幸子)

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