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対話型AIを開発した米OpenAIが3月14日(米国時間)、大規模言語モデルの最新バージョン「GPT-4」を発表して話題をさらった。その翌日、中国検索エンジン最大手の百度(バイドゥ)がついに最新の大規模言語モデルに基づいた生成AI「文心一言(ERNIE Bot)」を発表した。
発表会当日は、バイドゥ創業者の李彦宏(ロビン・リー)CEOが5年ぶりに発表会会場に姿を現したほか、文心一言プロジェクトで総指揮を執った王海峰CTOも登壇した。
中国語はその言語特性によりAIで処理することが難しく、他の言語に比べて語義理解の難易度がはるかに高いため、バイドゥはより高度で複雑な大規模事前学習モデルを開発する必要があった。文心一言の大規模モデルに使用された学習データには兆単位のウェブデータ、数十億の検索データや画像データ、数百億の音声認識データ、5500億のナレッジグラフなどが含まれている。
李CEOは発表会で、文章創作、商業コピー作成、数学的計算、中国語の理解、マルチモーダル生成という5つの基本的な用途で、文心一言の性能をテストするデモンストレーションを行った。
デモンストレーションの結果から、文心一言が基本的な問題処理の能力を備えており、回答の正確性や論理性、受け答えの自然さなども一定レベルに達していることが明らかになった。さらにGPT-4がまだ対応していないマルチモーダル出力も可能になっている。ただ一部シーンにおける正確性や理解度の低さについては、ほとんどの言語の大規模モデルに共通する問題であり、文心一言もまだ完全に克服できていないことを李CEOは認めている。
李CEOは、大規模言語モデルが産業にもたらす大きなチャンスを3つ挙げ、文心一言もその好機を逃さないと語った。
1つ目は新しいタイプのクラウドコンピューティングサービスの提供。文心一言は、バイドゥのクラウドサービス「百度智能雲(Baidu AI Cloud)」を通じて、企業が独自のモデルやアプリケーションを構築できるようサポートすることになる。2つ目は業界モデルの緻密な調整を行う中間層サービスの提供。バイドゥの大規模事前学習モデルでは、すでに電力、金融、メディアなど10以上の業界別にモデルが発表されている。3つ目はアプリケーション向け基盤モデルサービスの提供。多くの起業家や企業にとって、基盤となる大規模モデルをゼロから作るのは現実的ではない。汎用的な大規模言語モデルをベースに、重要なアプリケーションを他に先駆けて開発することこそ、本当の意味でのビジネスチャンスになり得る。
AIで新たなテコ入れ
昨年12月末、李CEOは全社員に向けた話の中でバイドゥが置かれている厳しい現実について言及している。「この数年、苦しい時期を過ごしてきた。業績や事業の成長性もパッとしない。一部の技術では市場からかけ離れた取り組みを行っており、開発者が内輪で盛り上がっているだけで、1~2年たつと誰も利用していないことに気付く」。
バイドゥは2010年に「自然言語処理部門」を設立したのを皮切りに、10年以上AIに取り組んできた。しかし同社では昨年まで広告収入が年間売上高の60.4%を占めており、期待のAIは第二の成長曲線を支えるという目標に向けて励んでいる状態だった。そこにChatGPTの爆発的ブームが巻き起こり、3カ月で1億人以上のユーザーを獲得する。その注目度の高さから中国のテック企業もこの分野に殺到した。検索事業とAIを看板に掲げるバイドゥは当然、このチャンスを逃すはずがない。2月初め、李CEOのOKR(目標と主要な成果)が公開された。「次世代の検索体験に向けた変革をリードする」というものだ。
大量のデータ、技術的な蓄積、事業シナリオを有するバイドゥは、既存のIT企業の中でも大規模モデルを実現する可能性が最も大きいと言える。自社開発のAIチップ「昆侖(Kunlun)」、深層学習フレームワーク「飛漿(Paddle Paddle)」、大規模事前学習モデル「文心(ERNIE)」を抱え、検索、AIクラウド、自動運転など幅広い場面で活用が進んでいるからだ。
文心一言のベースである汎用型大規模事前学習モデル「文心」は、2019年のリリースからすでに数千億のパラメーターを持つ「ERNIE 3.0 Zeus」にバージョンアップしており、自然言語理解や生成タスクが実行できる。李CEOは、文心一言をバイドゥのさまざまな事業と統合させることで、データやモデルのアップデートを速められると期待する。「現在、ERNIE 3.0は毎日数十億の検索リクエストをユーザーから受け取っている。これにより文心一言は、大規模で効率的なデータプールを活用して、急速に学習し改良を進めることができる」。
文心一言は3月16日以降に、公式サイトで一部のユーザーに限定した内部テストを開始し、その後より多くのユーザーに開放されるという。クラウド事業の百度智能雲では、文心一言を外部サービスと連携するためのAPIを法人顧客向けに提供する予定だ。
文心一言の発表を受けて、香港市場のバイドゥ株は一時10%下落した。しかし多くの人が内部テストに参加したことで、市場は文心一言に対する見方を改めたようだ。3月17日の終値は142.2香港ドル(約2400円)で、13.67%の値上がりとなった。
(翻訳・畠中裕子)
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