中国新興自動車メーカーのダークホース「合衆新能源汽車」

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中国新興自動車メーカーのダークホース「合衆新能源汽車」

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並みいる中国の新興自動車メーカーにおいて、これまでほとんど注目を浴びてこなかった存在として、2014年に浙江省で設立された「合衆新能源汽車(HOZON AUTO)」がある。あまり表舞台に出てこないが、政府系ファンドなどの後押しを受け、技術力で勝負をかけている。

同社は、中国の新興自動車メーカーとしては、国家発展改革委員会と工業情報化部の双方から「新エネルギー自動車生産に関する企業および製品の参入認可」を受けた希少な企業だ。2018年5月に浙江省に初のスマート工場を設立し、先月末には江西省で2カ所目のスマート工場が着工した。新工場は50億元(約800億円)を投じて50万平方メートルの敷地に建設され、プレス・塗装・溶接・組み立てまでの全工程を手がける生産設備のほか、樹脂加工やバッテリーパックを手がける生産設備も備える。新工場は2020年末からの稼働を目標としており、稼働すれば年間10万台を製造できるようになる。同社全体の製造台数は2工場合わせて年15万台となる予定だ。

2014年10月に資本金6億2600万元(約100億円)で設立された同社は今年4月、政府系産業投資ファンドが主導するシリーズBで30億元(約470億円)を調達した。これまでに累計70億元(約1100億円)以上を調達したが、さらにシリーズB+で20~30億元(約310~470億円)の調達を目指している。

総裁の張勇氏によると、シリーズBで調達した資金は自動車製品と技術の研究開発に充てるほか、インテリジェントキャビンやインテリジェント運転支援システムの推進を行っていく。大株主が政府系ファンドや産業投資ファンドであるため、主体的な経営が行えるほか、製品運営やマーケティングに関しても現場の発言権が十分に発揮できる環境だという。

合衆新能源汽車の製品計画(公式サイトより)

同社のターゲットユーザーは年齢層が25~40歳で、一~二級都市在住の中間層や地方出身者、あるいは三~四級都市の若者だ。価格設定もこうしたターゲットに対応している。今年末に発売予定の「Hezhong U(合衆U)」は、新エネルギー車購入補助金分を差し引いて15万~21万元(約240万~330万円)だ。昨年末に発売されたコンパクトSUV「Neta NO1(哪吒N01)」は、同じく購入補助金分を差し引いて6万6800~7万6800元(約105万~120万円)。主要な新興自動車メーカーと比べ、やや低い設定となっている。

また、多くの新興自動車メーカーでは社長本人が積極的に露出し、広告塔として活躍しているが、合衆新能源汽車ではこうしたイメージ戦略を行っていない。先月に上海で開催されたエレクトロニクス製品の見本市「CES Asia 2019」でも、同社のブースに現れたのは3人の技術責任者だった。3人は車載インフォテイメントシステム、ミリ波レーダーを用いた車載フロントカメラ、新エネルギー車の動力システムなどのエキスパートだ。

純電動SUV「Hezhong U」(画像提供:合衆新能源汽車)

自動運転分野に関しては、同社は米自動車技術者協会(SAEインターナショナル)が定める自動運転レベルを採用せず、三段階に分かれた独自のレベルを設定している。今年末発売予定のHezhong Uを「伴走ドライバー」レベルとし、2021年には「代行ドライバー」レベル、2023年には「専属ドライバー」レベルを発表する予定だ。「伴走ドライバー」レベルは、危険回避機能(自動ブレーキなど)、渋滞時の運転補助機能などを備える。「代行ドライバー」レベルは、自動パーキング機能、中低速運転時あるいは渋滞時の自動運転機能などを備える。

Hezhong Uは自社開発のバッテリーシステムを搭載し、新世代バッテリーセル「NCM811(UL2580規格、質量エネルギー密度180wh/kg)」を採用している。SAEの自動運転レベル2以上に相当する自動運転機能を備え、パーキングアシスト、ACC(車間距離調節)などを行う。

インテリジェントキャビンに関しては、Hezhong Uは「透明化するAピラー」のほか、顔認証、ドライバー疲労検知システム、幼児車内置き去り検知システムなどを備える。

「透明化するAピラー」とは、右左折時に視界の妨げとなるAピラーに超薄型OLEDディスプレイを設置し、車外にとりつけたカメラが撮影した画像を転送して、Aピラーを完全に取り外した視界を再現するというもの。自社開発の独自アルゴリズムによって、ドライバーの頭部のポジションや眼球の運動の正確な追跡を実現する技術だ。

「透明化するAピラー」(画像提供:合衆新能源汽車)

インストルメントパネルにはAIロボットが設置され、ドライバーの顔の表情から感情を認識する。助手席や後部座席にまで目を配り、同乗者のイライラや乳幼児の睡眠状態などを把握し、状況に応じて空調や照明、音楽を調節する。インテリジェントキャビンの技術責任者・張祺氏はこれを「感情テクノロジー」と定義している。

このような高スペックの実現と生産コストのバランスについて、張氏は「現在はまだ企業の黎明期であり、現段階の製品は収益を目指すものではない。最初の1~2車種によって製品力の進化をアピールし、ユーザーからの高評価を得ることを目標としている。商業的な利益を度外視してでも、長期的な需要を喚起していきたい」と述べている。

同社で自動車工学部門の責任者を務める鄧曉光氏、運転支援システムの技術責任者を務める呉俊傑氏の両氏は、自社開発技術の重要性を強調する。各サプライヤーとの提携は、生産コストを圧縮するなどのメリットがある一方、完成車全体をマクロで俯瞰する視点が欠けてしまったり、他社製品との同質化が進んだりするなどのデメリットも感じているという。
(翻訳・愛玉)

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